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市民活動情報誌『Volo(ウォロ)』2004年6月号(通巻396号) 目次に戻る
介護する側、される側ともに“自分らしい=対等な”人間関係を築くか、が大きなテーマです。

映画監督 槙坪夛鶴子さん
No.203

●槙坪 夛鶴子さん・プロフィール●

1940年広島県生まれ。早稲田大学演劇科卒業後、スクリプター(記録係)として教育映画やテレビなどに携わり、86年に性教育をテーマにした「子どもたちへ〜いのちと愛のメッセージ」で初監督。以来、エイズや援助交際などの問題を取り上げた作品を発表している。

—前作「老親」に続き、新作「母のいる場所」でも介護をテーマに描き、話題になっていますね。

 二〇〇〇年に完成した「老親」では、義父と嫁、夫との関係を、老後の世話、熟年離婚と絡めて描きました。やはりギョッとなった男性も多かったようですが、新作では「老いることが怖くなくなった」といった感想が目立ちます。

 この間、介護保険の導入もあり、団塊の世代にとって介護はまさに”自分“の問題になってきました。みんな自分の最期がどうなるか不安なんですね。

 前作の上映を通じて多くの介護施設を訪れましたが、預ける側にとっても、預けられる側にとっても、本当に安心できる施設はどれだけあるのか疑問に感じました。また、男性の多くが自宅介護を希望する一方で、女性は「家族に迷惑をかけたくない」と、自宅より施設を希望する人の方が多い。今回の映画では、そうした問題にも触れながら、介護する側と介護される側がともに”自分らしい=対等な“人間関係をいかに築くか、が大きなテーマになっています。

—槙坪さんご自身も関節リウマチで車イスの生活ながら、痴呆症のお母さんの介護も続けていらっしゃいますね。

 母は私の姿が見えないと、とても不安がるため、施設には預けず、私の車イスを押してもらいながら一緒に行動しています。娘の車イスを押すという役割が、「母のいる場所」になっているようです。

 自分自身、映画の主人公と重なる部分もあり、試写後、原作者の久田恵さんには「これは監督の映画だね」と言われました。

 私の父は職業軍人で戦争中はもちろん、戦争が終わっても戻って来なくて、母は父の実家に身を寄せ、慣れない百姓仕事に懸命でした。私はいつも一人ほったらかされていました。母は私を「手のかからない子」と言っていましたが、私にしてみれば、甘えたり、わがままを言いたくても、一切できない。気づいてみれば、進学などの際も、相談するというより、すべて事後承諾の関係になっていました。ただ黙っていても金銭的に支援してくれたりと、今から思えば、母は自分が苦労しただけに、私には好きなように生きなさい、ということだったのかなと思います。

 主人公にとって、母の愛を乞う思いが、仕事や介護へと向かわせています。でも実際には、そうした「過去」がある分、介護が難しくなることも多い。トラウマのように重くのしかかってくるんですね。主人公が「子育てと親の介護はどこか似ている」とつぶやくシーンがありますが、過去がある分、子育てより大変なのかもしれません。

—今回の撮影は、実際に久田さんも利用された有料老人ホーム「シルバーヴィラ向山」で撮影されたそうですね。

 ここの施設長の岩城祐子さんが「お客様は私の家族でございます」とよくいわれるのですが、ここの施設はその言葉通り、世話をしているという感覚ではなく、まさに一緒に生きているという感じ。入居者の方も、スタッフの方もみんな生き生きされています。

 今回の撮影にあたっても、社会の風が入ることは大切なことと、非常に協力していただきました。批判も歓迎とおっしゃり、この姿勢はすごいな、と感心しました。

 やはり介護は在宅にしろ、施設にしろ、いろんな人のサポートが必要です。身体介護など任すべきところはプロに任せて、過去の思い出話に対する共感など、精神的な支えは家族がするというのがベストという気がします。

 でも、家族だけでも、プロだけでも十分とはいえない。そこで大事になるのが、ボランティアの力だと思います。家族だから、プロだから言いにくいケースもよくあるので、そこをボランティアがうまく支えていく。

 今回の撮影終了直後に、母が右足を骨折したことから、個人的にもボランティアたちの力を借り、映画を完成させることができました。母は自分が骨折したことさえ痴呆で覚えていられないので、翌日から動き出そうとし、片時も目が離せない状態でした。母の介護保険だけでなく、私自身の介護保険も初めて使うようにしましたが、それでも足りないので、スタッフやボランティアの人に手伝ってもらったのです。

 いい施設が近くにないといった悩みもききますが、自分たちの地域の中でも家族や施設、ボランティアの方が工夫して助け合えばすばらしいものができるかもしれない。介護家族や施設を孤立させず、社会とのかかわりをもちながら生きていくことが重要なのではないでしょうか。

編集委員 大道寺峰子


映画情報

「母のいる場所」は、作家の久田恵さんが、13年にわたる母親の介護経験をつづった同名本が原作。フリーライターでシングルマザーの主人公、泉は重要な海外取材のため、一人息子を両親に預けることを決意する。しかし直後に母親が倒れ、断念。その後、母親を自宅に引き取り、父親と介護するが、次第に限界を感じ、有料老人ホームに預ける。ホームで心が通い合う介護に接するうち、当初、ぎくしゃくしていた親子、夫婦の関係が少しずつ変化していく。

 6月5日午後1時半から、大阪市中央区のドーンセンター(06・6910・8615)で槙坪さんや久田さんらによるトークと、上映会がある。前売り1,300円、当日1,600円。

 また、6月19日〜7月2日まで、大阪市北区の梅田ガーデンシネマ(06・6440・5977)でも上映される。一般前売り1,300円。19日は槙坪監督の舞台あいさつもある。

自主上映の問い合わせは、企画制作パオ(03・3327・3150)へ。

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Volo(ウォロ)は大阪ボランティア協会が発行する 市民活動総合情報誌であり、オピニオン誌です。
『月刊ボランティア』創刊1966年。『Volo(ウォロ)』と誌名を変更して2003年新創刊。一貫して「市民が主体的に関わることの大切さ」を伝えてきました。分野・セクターを越えた社会的課題に市民がいかに関わるかを独自のアプローチでタイムリーに発信しています。