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市民活動情報誌『Volo(ウォロ)』2004年3月号(通巻393号) 目次に戻る
地方議会と市民、NPOとの新たな関係づくり

編集委員 阿部圭宏

2000年4月の「地方分権一括法」の施行で、地方自治が新たな一歩を踏み出したが、その中で改めてクローズアップされているのが「議会」だ。地方自治の一翼を担うはずの地方議会は、その「機能不全」を指摘されたり、議会不要論も叫ばれたりしている。地方議会を活性化するにはどうすればいいのか。市民やNPOと議会や議員との新たな関係づくりから、これからの地方議会のあり方を探る。

そもそも地方議会とは?

 日本国憲法では地方議会は議事機関として位置づけられ、主な機能として、代表機能、意見集約機能、監視と抑制の機能が挙げられる。

 しかし一般的には、地方議会は「チェックアンドバランス」と言われるように、首長が提案する政策をチェックすること、すなわち「監視と抑制」がその大きな機能だと考えられてきた。したがって、公開が原則である本会議で、議員間の議論や討論がなされることはほとんどなく、議員からの質問に首長が答えるという形式で進められることが圧倒的に多い。

 選挙を経て選ばれるという点で「住民の代表」としての機能は、一定程度の評価ができるかもしれないが、地域ニーズの多様化や高度化、NPOなどの活動が活発化する中で、旧来型の運営を続けてきた地方議会は住民から支持されなくなっている。本会議や委員会の傍聴者も少ないのが現状だ。

 議会内で議員が一体何をしているのか、日頃の議会活動とはどんなものなのか、実は住民にはあまり見えていない。それに加え、議員を選ぶときの選挙公報に出ている議員候補者の政策も住民にほとんど認知されていない。こうした点がさらなる不信を生み出し、投票率の低下や議会活動全般への無関心を生み出す一要因にもなっていると言える。

 「地方分権一括法」の施行によって機関委任事務制度が全面廃止され、これまでのように通達などで国に拘束されることはなくなった。また「特定非営利活動促進法」施行(一九九八年)を契機に市民やNPOとの「協働」への関心は飛躍的に高まっている。これらを背景に、地方自治体が独自の条例を制定したり、政策の柱にNPOとの「協働」を掲げたりする動きが出ている。

 行政部の首長と立法部の議員とを有権者が直接選挙によって選出する二元代表制の原則をふまえると、こうした地方自治体の事業に対して議会がどう政治責任を補完するのかという議論はもちろん必要だ。しかし、議会においても市民参加や協働の視点からそのあり方を改善し、地方議会をより活性化させようとすることは、自らの代表性を高めることにつながるはずだ(図1)。このように議会のあり方を改善し、地方議会をより活性化しようとする動きが出てきた。活性化に向け議員が内側から改革に取り組み始めたケースや、NPOが議員の政務調査費の経理、調査研究、さらに政策提言も受託するという注目すべき事例も生まれている。以下の具体例に、議会と市民参加の新たな可能性が示されているのではないだろうか。

議会と市民との接点を広げる(箕面市議会)

 箕面市議会(大阪府)では、議会と市民との接点を広げるため、市民に分かりやすい「市議会だより」を作成している。八人の委員からなる議会だより編集委員会が、年四回の発行の責任を負っている。  九八年十月から、定例会での質疑内容を掲載するときに、従来は載せていなかった質問者を明記するようになった。また、事務局任せになっていた質問のタイトルや内容の要約文は議員自らが書くようになり、編集作業がスムーズに行われるようになった。

 あわせて政党などがつくる議会内の会派それぞれに、議案に対する賛否を表形式で載せた。その結果、市民が会派の意思決定の状況をチェックできるようになり、議案そのものに対する市民の関心を高める効果をもたらしている。議案によっては同一会派内で意見が分かれることもあるが、いずれにしても採決結果だけで審議過程や議論の内容を知ることはできない。○(賛成)と×(反対)が併記されることで、市民にとっては「なぜ賛成(反対)なのか」、説明を求める材料ができたと言える。

 議会だよりから始まった改革の流れは加速し、二〇〇〇年十月には、議員有志による「議会の活性化を考える会」が発足。〇二年九月には(1)市民にとって親しみやすくわかりやすい議会にするため、(2)活発な議会活動を行うため、(3)議会の政策立案能力を高めるため――という三点を骨子とする「議会改革についての提言」をまとめた。

 提言は、その素案ができた段階で、市民から意見を聴く場を設けた。他方、「議会ウォッチングの会」という市民団体からも議会運営の改善要求が出された。こうした声に呼応するように、昨年五月に事務局から改善項目の一覧が各会派に示され、幹事長会議等を通じて、可能なものから改善が実施されている。

 環境や平和の学習活動などの市民活動経験をもつ牧野直子議員(無所属クラブ)は、「議会の歴史は長いので、一朝一夕に改革が進むということにはならないが、一歩ずつ進めていきたい。市民活動をしながら議員として活動していくことで、市民活動のエンパワメントに役立っている面もある」と自身の立場を主張している。牧野さんのように市民活動の世界から議員になるケースも増えており、市民活動での経験が議会改革の動きを加速させている面もある。 

議会をウォッチする市民の動き(大津市)

 一方、市民、NPOが議会を監視したり、議員と連携していくような取り組みも始まっている。〇〇年に行われた大津市長選挙では、市民不在の候補者選びの過程に疑問を持った市民の有志が「アクション21」(中川学代表)という会を設立した。主な活動は、市政に関して候補者に意見を聴き、インターネットを活用してウェブ上で公開するというもの。〇二年には、市議会議員の酒気帯び運転及び当て逃げ事件をきっかけに、政治倫理条例に関する議員アンケートを実施した。

 昨年の統一地方選挙では、市議会議員立候補予定者に、議会のあり方、議員の基本姿勢などをただす公開質問をすることになった。質問内容は広く市民から公募し、それを十問に絞った上で、立候補予定者に送付し、回答をインターネットで公開した。

 四十五人の予定者(うち二人は不出馬)のうち回答を寄せたのは二十八人で、回答は過半数に達した。中川さんは、「とにかく初めての試みだったので、市民が投票する上で何らかの判断材料になればと思った」と、その時の様子を語る。

 議員選挙に関しては、一般に選挙公報が選挙管理委員会から出されるが(出されていない市町村もある)、候補者数が多いので、首長選挙での選挙公報のように政策を比較するのが難しい面がある。また、公報の配布が投票ぎりぎりになったり、書いてある内容が候補者によってまちまちで、投票行動にあまり役立っていないのではという疑問もある。

 今回の公開質問は、単に投票行動を決める参考にするというだけでなく、選挙後の各議員の活動に対するチェックにもなりうる。中川さんも、「選挙公報とは違って、市民の視線による課題に対して、議員がどのように考えているかが分かることは、市民が市政に関わるという意味で非常に重要だ。実際の議会活動の中で議員がどのように行動するかをチェックしていく上でもこの情報は役に立つのではないか」と語っている。

 一方、市民が議会を監視することの限界もある。平日昼間に開催される本会議や委員会を傍聴するのは難しい。また、議会活動そのものが不透明な部分も多い。こうした監視の活動とともに、議員や議会事務局の努力で改善できることを求めることも忘れてはならない。

NPOが政務調査費を管理(長野県大町市)

 長野県大町市にある「NPO地域づくり工房」(傘木宏夫代表)は、無所属の県会議員二人から政務調査費(月額二十九万円ずつ)の経理事務や、調査費を使った調査研究活動、政策提言を請け負っている。

 昨年四月の統一地方選挙で当選した二人は、会派への加入の誘いを断り、どこまで無所属でできるかを挑戦したいと考えていた。二人とも「保守系」〔大町市区(一人区)選出〕、「市民派」〔南安曇郡区(三人区)選出〕と立つ基盤は違うが連携をしながら政策づくりができないかと、かねて知り合いの傘木さんに相談を持ちかけた。傘木さんも「議会が市民と連携する場面があまりに少ない」ことに問題意識を持っていたため、政務調査費をNPOへ委託することを提案。領収書を整理したり、議員の行動記録を残したりと、こまごました作業は、工房のメンバー四人で担うことにした。

 知事と議会との緊張関係が続く長野県では、政務調査費の透明性も議員にとっては大きな課題だった。議会の各会派では、人を雇って経理事務をまかせているが、無所属議員が個別に人を雇うことは難しく、二人にとっても透明性を高めるために市民と連携するのは願ってもないことであった。

 実際の調査活動でもNPOらしいきめ細かなやり方をしている。例えば、入札制度の改革の影響に関して、大町市内の建設業者に議員と一緒にヒアリングして、その結果を分析し、提言案を作成する。その提言案を公開ワークショップで議論し、提言としてまとめて、それをもとに議会での質問を行う。

 議員個人はそれぞれ問題意識を持っているが、個人でできることは限られている。議員が関心のあるテーマを引き出しながら、それを市民参加で政策形成につなげるコーディネート役をNPOが担っているとも言える。

 とりあえずは、一年間の限定的な取り組みとして始まったものだが、議員からは喜ばれているし、市民からも今まで見えなかった議員活動が見えるようになったという声が聞かれるそうだ。地域づくり工房にとっても、「毎月安定的にお金が入っているので、運営は楽になった」(傘木さん)とメリットは大きい。

議員教育について(神奈川県)

 神奈川県にあるローカル・パーティー(地域政党)「神奈川ネットワーク運動」(略称「NET」)は、生活者・市民・女性の視点から自分たちのまちを自分たちの手でつくろうと一九八四年に発足した。現在、県や市町村議会の女性議員四十一人がいる。この「NET」が、「生活クラブ生協」、「ワーカーズ・コレクティブ連合会」、「福祉クラブ生協」と一緒になってつくったNPO法人が「参加型システム研究所」(横山桂次理事長)である。

 もともと「NET」は自分たちの政務調査費を提供して運営する「政治スクール」を実施していたが、自分たちで構成する組織に政務調査費を使うことの是非を問う意見もあったことから、政策事項に関しては研究所に委託することにした。

 二〇〇一年から始まった研究所は、調査研究受託、研究会・プロジェクト・フォーラムの開催、「かながわNPO大学」の開催を主な事業として活動している。調査研究受託は、「NET」の議員団からのものが多く、事前に協議してテーマを掘り下げ、企画提案することもある。その中で、委託する議員団が具体的に研究会やプロジェクトを立ち上げ、研究所と協働で進める仕組みになっている。特に、「地域調査システム研究推進プロジェクト」では、地域調査手法を学ぶ場として位置づけられ、情報のとり方、仮説の立て方、分析、結果のまとめ、報告、政策提案の方法をその中で考える。情報公開制度の活用、アンケート調査の実施など、地域の情報を拾いながら自分たちが学びとる仕組みになっている。

 研究所の事業の中で、もう一つの柱が「かながわNPO大学」である。議員養成のために各地で行われているバックアップスクールが選挙のノウハウなどを教えるのに対し、「かながわNPO大学」は議員のトレーニングの場、議員が社会との接点を広げる場、議論の方法を学ぶ場という設定で、多岐にわたるメニューを用意している。昨年は、春期七コース、秋期五コースが置かれた。「NET」の議員向け講座と自主企画を組み合わせて実施しているが、「NET」の議員以外にも、無所属議員や自治体職員、一般からの受講もある。県外からの参加やテープ受講もある。

 学んだことがすぐに役立つもの、実践的な課題解決の手法としてワークショップを取り入れるものなど、講座の持ち方にはさまざまな工夫がなされている。研究所の主任研究員で「かながわNPO大学」学長の奥津茂樹さんは、大学のこれからのあり方として「情報を調べ、考え、話し合い、政策をつくり、提案し、実現させ、評価するという地域政策のPlan(プラン、計画)・Do(ドゥ、実行)・See(シー、評価)のサイクルを意図的に増やしていきたい。地域政策をつくる意味を広く知らせていくことが大切だ」と考えている。

政治活動をサポートするNPO

 ここで紹介した議会や事務局の改革や市民、NPO、議会や議員との関係は、各地域で一般化しているというわけではない。

 市民活動をする人は「政治」に関わることにまだ相当アレルギーがあるように思われるが、政治と無縁に目標を実現することは困難だ。法律や制度など現実の執行は政治に負う部分が大きく、NPOは政策提言などを通して関与していかざるを得ない。NPOが無色透明でいることは無理なのである。

 今の政治を批判するだけではなく、どうすれば政治を変えられるか、議会を変えられるかを市民が考えていく必要があるのではないだろうか。NPOが政策提案をしたり、行政との協働型の政策形成をしていくには、そうした動きに対する行政や議会の理解と関心が求められる。

 今、全国で市町村合併が進められている。財政面ばかり強調される合併論議には反発、批判も多いが、一方では、自治や議会のあり方を考えるチャンスかもしれない。市町村合併の将来を見つめることは、新たな自治の可能性を生み出すとともに、これからの議会と市民のあり方を問うことになるだろう。

 NPOとの関係で言えば、「NPO地域づくり工房」や「参加型システム研究所」の動きに見られるように、議会や議員の政策立案機能をNPOがサポートしていく可能性に注目したい。地方分権の進展により自治体の条例制定権は拡充されたが、議会が条例を提案し実現するという権利を、草津市議会の事例(下欄)のように行使する地方議会はまだ少ない。

 地方議員は国会議員のように政策秘書を抱え、政策立案のための政務調査を十分に行える状況にないこと、あるいは議会事務局が政務調査、政策法務を担えるような仕組みになっていないことなど、制度的な欠陥もある。しかし多くの自治体では、条例に基づき政務調査費が議員に支給されている。これまで支給されてこなかった自治体でも、市町村合併を機に制度化するところも増えていくだろう。この政務調査費を有効利用し、市民やNPOと一緒に政策づくりを行えば、議員提案条例もたくさんでき、議会も活発になるのではないだろうか。

 議員は住民の代表だが、代表制によってすべてが解決するのではない。代表制の欠点を補うためにもNPOとの協働を考えていく必要があるだろうし、市民、NPOは政治、議会を変えなければ新しい自治の仕組みはできないということを認識し、積極的に政治、議会に働きかけていく必要があるだろう。

編集委員 阿部圭宏

議会事務局機能の強化(草津市議会)

 草津市議会(滋賀県)では、二〇〇二年四月からの政務調査費の引き上げや情報公開条例の制定をきっかけに議会改革の気運が高まり、議会内のプロジェクトチームとして、各会派から選出された議員で構成する政策研究会を立ち上げ、手始めに議員立法にチャレンジしようということになった。そこで、各議員が研究テーマをそれぞれ持ち寄り、それを緊急性・地域性(草津らしさ)・実効性・取り組みやすさ・予算・関連条例などとの整合性――という六項目の視点から一つに絞り込み、「飼い犬のふん等の放置防止等に関する条例」制定に取り組んだ。

 条例制定といっても、議員は法制執務に関して慣れていないし、情報も少ないので、議会事務局が積極的な情報提供と、条例の文案づくりでバックアップをした。原案ができると、市民に知ってもらう必要があるという声が議員から出てきたので、「くさつ市議会だより」に条例原案を掲載して、パブリックコメント制度のように市民から広く意見を募集した。その結果、賛同の意見が多く、条例は同年十二月に議員提案され、可決された。

 田鹿俊弘・議会事務局次長は、「市長部局との調整、法制執務、情報を集めたり、パブリックコメントを募集したり、成果をお知らせするなど、一般的に議会事務局でしか経験できないことができた。条例ができた後、議員が住民からの声を市長部局に伝えるばかりでなく、自分たちの政策立案で対応するのもよいとの感想を持っているのを聞くと、政策条例の立案の過程を肌で感じとることができる」と、議員と事務局との新しい関係づくりの手応えをつかんでいる。

 また、政策条例づくりと同時に議会改革の中で取り組まれたのが、本会議での一般質問の対面式による一問一答制への変更である。

 通常、議場は国会と同じように、雛壇が組まれて、質問者(議員)も答弁者(行政部)も壇上で答えるようになっている。議会の形式主義の典型的な例である。議員からは持ち時間いっぱいの質問が出され、その分をまとめて答弁する。議会を傍聴している側からすると、分かりにくく形式的なやりとりだけがなされている感じがして、聴いていてもおもしろくない。

 そこで、昨年四月の議会改革検討委員会で新しい議論の持ち方について事務局案を示し、改選後の十月実施の方向で議論がまとまった。十月の臨時市議会で議会会議規則の改正案が可決され、同月定例市議会から実施された。一人四十分(答弁時間を含む)を持ち時間とし、議員と執行部が向かい合って互いにやりとりする。これまでの原稿を棒読みする形から、真剣な議論に変わり、議場に緊迫感が出てきた。また、質問者の数も増え、十月議会では議員数二十二人(正副議長を除く)のうち十八人、十二月議会では十七人が質問に立った。

 今、草津市では、市民からの条例提案の動きもあり、事務局としては、市民と議会との橋渡し役を担っていくのが次の段階だと考えている。


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Volo(ウォロ)は大阪ボランティア協会が発行する 市民活動総合情報誌であり、オピニオン誌です。
『月刊ボランティア』創刊1966年。『Volo(ウォロ)』と誌名を変更して2003年新創刊。一貫して「市民が主体的に関わることの大切さ」を伝えてきました。分野・セクターを越えた社会的課題に市民がいかに関わるかを独自のアプローチでタイムリーに発信しています。