目次に戻る   バックナンバー一覧
TOP
大阪ボランティア協会の案内
市民活動総合情報誌『Volo』
定期購読
バックナンバー
TOP > 大阪ボランティア協会の案内 > 市民活動総合情報誌『Volo』 > バックナンバー> この人に

市民活動情報誌『Volo(ウォロ)』2003年11月号(通巻390号) 目次に戻る
スポーツやエンターテインメントなんかの、
夢を与える産業でまちを元気にしたい
プロレスラー
スペル・デルフィンさん
No.197
●スペル・デルフィン選手・プロフィール●

1967年、大阪府生まれ。172cm、82kg。89年オランダ・アムステルダムでプロレスラーデビュー。以後FMW、ユニバーサルプロレスなどの団体を経て、99年4月に『大阪プロレス』を旗揚げ。01年3月、日本初のプロレス常設会場「デルフィン・アリーナ」を開設。UWF世界ウェルター級王座、大阪プロレス選手権など、プロレスタイトル歴多数。吉本興業とも提携し、来年公開の日本・香港合作映画「大阪プロレス飯店」にも出演するなど、リング外でも多方面で活躍。リングネームの由来はスペイン語で「最高のイルカ」。
大阪プロレスホームページ
http://www.osaka-prowres.com/

 十八年ぶりの阪神タイガース優勝に沸きかえる大阪の町に、もうひとつホットに盛り上がっているスポットがある。
 商売繁盛で有名な「えべっさん」、道頓堀名物食い倒れ人形そっくりの「くいしんぼう仮面」、「六甲おろし」のテーマ曲にのって縦じまのユニフォームで入場する「タイガースマスク」。そんな大阪らしいユニークなレスラーが勢ぞろいし日本初の地域常設リングを持っているのが、地元密着型プロレス団体「大阪プロレス」である。
 その舞台となる、日本初の地域常設リング「デルフィン・アリーナ」は、有数の赤字第三セクターに挙げられる大阪市浪速区の総合レジャー施設「フェスティバルゲート」の中にある。カップルや子ども連れの家族など、今までのプロレスファンのイメージとは違った客が集い、全国二番目の失業率にあえぐ大阪の街の閉そく感を吹き飛ばすかのようなにぎわいを見せている。
 その大阪プロレスのトップレスラーであり「闘う社長」が、スペル・デルフィン選手だ。

デルフィン選手は、一九八九年、二十一歳の時に、プロレスラーとしてオランダのアムステルダムでデビューを飾り、以降さまざまなプロレス団体で活躍されてきました。
なぜこの大阪プロレスを旗揚げしようと思ったんですか。

  まず自分の出身地である大阪にこだわりたかったんですわ。大阪の人の眼はシビアやけど、おもしろいことをやれば必ずついてきてくれます。「自分しかできんやろ」っていうようなやり方で大阪の人を巻き込んで、このまちを元気にしたいと思ったんです。
 その一つは、全国各地を巡業する今までのプロレス団体のスタイルやなくて、地域に密着して地元の人たちに愛され一緒に作っていくプロレス団体の形です。僕が修行したメキシコでは、プロレスは「ルチャ・リブレ」と呼びます。常設の会場があり、週末には定期的に興行が行われるなど、子どもからお年寄りまで楽しめる国民的娯楽となっています。地域や人々の生活の中にしっかり溶け込んでいるんですよ。
 もう一つは、「暴力的で怖い」という旧来のプロレスに対するイメージを変えたかった。「小さな子ども連れの家族が安心して楽しめる」という新しい形の楽しいプロレスのスタイルを作りたいって思ったんです。だから、うちでは流血や陰惨な凶器攻撃なんかはご法度です。
 そして子どもが楽しめるものなら、お父さん、お母さんも一緒に来てくれます。週末は大阪プロレスを見て、家族みんなで夕食を囲んでその話で盛り上がる。こんなシーンええですねえ。プロレスで家族のきずなを深められたら最高ですね。

よく「プロレスはスポーツじゃない。あんなのはショーだ」というような声も聞かれますが。

 僕の考えは、プロレスはスポーツじゃなくて、エンターテインメントやと思うんです。
 だって、根本的にルールがおかしいでしょ。五カウント内なら反則してもいいって、反則を堂々と認めているスポーツなんて変でしょ? それにもっと変なのは、覆面かぶってキラキラのコスチュームを着てやるなんてスポーツは他にはないですよね。そんなおかしいことだらけのプロレスをつかまえて、スポーツかどうかって言うこと自体がナンセンスです。
 そういったいろんな要素を全部包み込んだ上で、プロレスとは偉大な「肉体エンターテインメント」であると思うんですよ。その意味では、大阪プロレスは「体張ってやってる吉本新喜劇」だと思ってます。
 当然、体張ってるわけですから、いつ大ケガするかもしれんし、下手して打ち所が悪ければ死んでもおかしくない。そんな危険と常に隣合わせで歯を食いしばってやってるのは事実です。
 そんな体全体で語るスタイルがどれだけの説得力を持てて、いかにお客さんを納得させられるかでしょうね。目指すはカップルがデートに使えるぐらいに気軽に見れて、ストーリーがあって笑って感動して楽しめる、「映画感覚で楽しめるプロレス」なんです。
親のいない子の施設で育って、子どもたちのヒーローになったタイガーマスクやないですけどね

ボランティアや地域活動にも力を入れられてますね。

 うちの選手は福祉施設に行って子どもたちと遊んだり、プロレス興行に招待したり、また学校へ行ってプロレスの体験話をしたりしています。やはり地域に密着していくには、地域の中へ入って活動してゆくことが大事だと思っています。
 覆面レスラーなんかは、子どもたちにすごい人気ですよ。ぬいぐるみショーの感覚で、子どもはうれしそうにけったりちょっかい出してきます。やっぱり一番人気は「くいしんぼう仮面」ですね。この選手は、入場の時にファンのお客さんからたくさんお菓子をもらうんですが、それを施設で配ったりしています。
 またペロっていう犬の格好をした人気選手がいるんですが、その彼女役のペッキーを今度デビューさせます。彼らは風船を使ったバルーンアートができるんで、それを生かして「ペロ&ペッキー」でどんどんボランティアにも行きたいなあなんて思ってます。
 まだまだ小さな団体で、選手のギャラも十分でなく苦しい面もあるので、「ボランティアなんかしてもギャラも出えへん、講演に行っても足代にもならん時もあるのになんでや」という他からの声もあります。
 僕自身小学校の時は、大の巨人ファンで将来は野球選手になりたかった。その後、中学で当時人気絶頂のタイガーマスクにあこがれ、高校ではレスリング部のある学校を選びました。
 でも、百七十二センチという身長は、レスラーにしては小柄で、最初はどの団体に入門を応募しても、ことごとくダメでした。でも、そんな僕でもくじけずにプロのレスラーになるという夢をかなえることができた。だから、ぜひ今の子どもたちにも、もっと夢を持ってほしいと思うんです。そのためのお手伝いができるなら、どこへでも喜んでとんで行きます。
 個人的に一番行きたいのは、親御さんのいない子どもたちのところ。親のいない子の施設で育って、子どもたちに夢を与えるヒーローになったテレビのタイガーマスクやないですけどね。

――ボランティアについて思うことはありますか。

 以前に僕の出身地で興行するときに、市役所に行って福祉施設の方を招待したいので教えてほしいとお願いしたんです。そしたら「どうやって会場に連れてくるんや。バスでも用意できるんか。余計な仕事を増やすな」みたいな言い方をされましてね。無茶苦茶むかつきましたわ、ホンマに。
 うちらもそうですけど、今の若いヤツだって、そりゃアホなヤツもいっぱいおるけど、ホンマはボランティアしたい人は、もっともっといっぱいいると思うんです。でも、どうしていいかわからない、どこで聞いたらいいのかわからへん。そんな情報をちゃんと提供してゆく仕組みを作ることが必要ですね。
 またボランティアの時は、選手自ら車いすの人を運んだりもしてますが、やはり障害のある人への接し方とかは分からないことが多い。高齢者施設でおじいちゃんにプロレス技かけて、一緒に遊ぶわけにもいかんですからね(笑)。そんなのを気軽に学べる機会があればいいですね。

――大阪の町についてはいかがですか。

 僕らのプロレス会場の入居しているフェスティバルゲートだって、大赤字でかんこ鳥が鳴いてる。テナントも半分が空いてんのに、運営が行政の第三セクターなので、誰も工夫しようとせえへんし、責任もとらへん。「なんでやねん」と思うことがホンマに多いです。
 これからは役所をあてにせんと、僕ら市民が主役になって、なんか人と違うおもろいことをどんどんやっていかなあきませんよ。もう箱モノをバンバン作ったり、公共事業に頼る時代やないと思うんですよ。
 やっぱりこれからはスポーツやエンターテインメントなんかの、夢を与える産業でまちを盛り上げていかんとアカン。特に大阪ならではのエンターテインメント気質はすごいもんがあると思います。
 僕はこの大阪プロレスを、阪神タイガースや吉本と並んで大阪の人から愛され親しまれる、第三の大阪の名物にするのが目標です。

 

インタビュアー・執筆 編集委員 大門秀幸

目次に戻る


Volo(ウォロ)は大阪ボランティア協会が発行する 市民活動総合情報誌であり、オピニオン誌です。
『月刊ボランティア』創刊1966年。『Volo(ウォロ)』と誌名を変更して2003年新創刊。一貫して「市民が主体的に関わることの大切さ」を伝えてきました。分野・セクターを越えた社会的課題に市民がいかに関わるかを独自のアプローチでタイムリーに発信しています。