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市民活動情報誌『Volo(ウォロ)』2003年7・8月合併号(通巻387号) 目次に戻る
等身大の女の子の姿を青年誌に描いてきました。
そしてほそぼそとでも一貫して描いてきたのは反戦です。


漫画家 石坂啓さん
No.195

●石坂啓・プロフィール●

1956年名古屋市生まれ。漫画家:手塚治虫氏に師事。主な作品として、「キスより簡単」「正しい戦争」「安穏族」など青年誌に発表。「アイ’ムホーム」では文化庁漫画部門で大賞を受賞(1999年)。エッセー集「赤ちゃんが来た」(朝日新聞社)はベストセラーに。その他の著書に、「コドモ界に人」「お金の思い出」。近作に「学校に行かなければ 死なずにすんだ子ども」(幻冬舎)がある。現在、テレビ朝日「スーパーモーニング」火曜日のコメンテーター。ピースボートで北朝鮮を2度訪れた経験をもち、3月27日には「イラク戦争反対と表現の自由」を掲げて、東京都文京区の光源寺境内に設営した「ピース・テント」で白装束をまとってハンストをした。

デビュー当時から、青年誌に等身大の恋愛や反戦をテーマに描いてこられましたが

 子どもの頃から漫画家になりたくて、心酔していた手塚治虫さんのアシスタントを経て独立。それからすぐに青年誌で描き始めたんです。なぜ青年誌かと言うと、そこに出てくる「女の子像」に大いに不満をもっていたからでした。当時、たくさん発行されていましたが、どれも「都合の良い女の子」ばかりが描かれている。おっぱいがでかくて、可愛くて、頭も良いんだけど、そんなに良すぎることはない。自分が二十代だったこともあって、「ちょっと待った!」と言いたかったのです。全部の女の子がこうじゃない。エッチを要求されたら「イヤ」という女の子もいるし、逆に男の子よりもエッチな女の子がいてもいいだろう…。とにかく、いろんな女の子がいることや、女の子の可能性を男の子達に読んでほしいと思って描き始めました。
 そして、デビュー以来、ほそぼそとでも一貫して描いてきたのは反戦です。そこには故手塚治虫さんの気持ちを継ぎたいという思いもありました。
 特に「オモシロければいい」バブリーな時代にも、マイナーなテーマにつきあってくれた読者には感謝していますし、続けてきて良かったと思っています。でも今は声を大にして反戦を言いたい状況ですね。

現在は「スーパーモーニング」(テレビ朝日)のコメンテーターとしてもご活躍ですね。今回のイラク戦争報道についてどのように思われましたか。

 マスコミは開戦前から過熱していました。軍事評論家や政治家が毎日のように出演して意見を述べる。でも、イラクへの攻撃がまだ始まっていない段階から、「戦後復興をどうするのか」を問題にする状況は、私にとっては、言語が違うのかと思うくらい異次元の話に聞こえていました。私の感覚のほうがずれているのかと思うほど。これでは人が生きているのに、お葬式の話をしているようなものです。
 アメリカと日本の関係は漫画に例えるとわかりやすい。アメリカは、ドラえもんに出てくるジャイアンのような存在です。そう悪いヤツではないけども、単細胞で暴力的でケンカっ早いキャラクター。そして日本はスネオです。自分はケンカが弱いから、ジャイアンのまわりをチョロチョロしていて、小金持ち。でも、ジャイアンはスネオを可愛がってはいるけども、誰もスネオを尊敬しない。日本の子どもが、みんなスネオになってしまったら可愛くなくて困ります。

ご自身の出産や育児のエピソードをまとめられた「赤ちゃんが来た」は五十万部を越すベストセラーになり、現在も多くのファンを集めています。

 たまたまうちには子どもがいて、こんな生活をしましたと紹介させてもらいました。医師の育児書はたくさんあるけれど、私はそんな模範的なお母さんにはなれない。周りを見ても、当時は等身大の力の抜けきった本がなかったので、書かせて頂きました。
 子どもがいない時は子どもがいない生活を百%楽しんで、子どもができたらせっかくだから、子どもがいる生活を百%楽しもう。
 でも、そう思っていても赤ちゃんが生まれたことで、これまで通りの生活ができなくなったことは大変でした。
 「頼むから早く寝てくれ」と寝かしつけても、寝てくれない。「こいつが寝たら、その間に原稿を直して、ファックスを送って」と考えをめぐらしている時に限って、子どもは意地でも起きてるんです(笑)。
 子どもを持って、世の中はものすごく忙しい回転数で動いていると実感しました。とにかく速く、生産性や成績を出さなくてはならない。東京駅の混雑も何やら殺気立って見える。人込みの中を歩ける体力や気力のない人には大変です。
 子どもがいて何もできなくなったことで、私は逆に開き直れたけど、本来はもっとゆっくり、違う速度で生きていくこともできるはず。せっかくだから発想を変えるのもいいなあと思いました。健康な大人の生活サイクルで日々を送れる人ばかりではないことを思いやり、世の中を考える必要がありますよね。

最近は、子どもとの関係や家族の楽しみ方をテーマにお話をされることも多いようですね。

 今は、少子化で子ども服メーカーが親の服も売りますよね。ブランド物のよだれかけが「スタイ」という名で販売されているのを見つけた時は、びっくりしました(笑)。早期教育も盛んです。いずれも「子どものために」よりは、子どもをお客さんにせざるを得ない背景が社会にあることを知っておいたほうが良い。そして子どもは、大人が自分達にどう向き合っているのかをよく見ています。
 子どもの犯罪が起こると、大人は何をやっていたのかと無力感に襲われます。事件が起こる度に、「学校は大丈夫か」と不安になる。しかし一方では、子どもたちに「動揺するな」という空気を大人は持っています。でも大きな事件が起こっているのに、普通に登校して、勉強して、試験をするというのは、おかしいですよね。
 私は親も先生も、もっと動揺してもいいと思うんです。格好悪くてもいいから、それをどうやって克服していくかを子ども達に見せるほうがいい。そのほうがずっと魅力的だし、楽しく幸せになれます。そして、子どもがああいう大人になるのも悪くはないと思える大人が、たくさんいた方が良いと思います。 

たくさんの恋愛や家族を描く大前提には、平和が不可欠ですよね。

 戦争を描くために資料を読んでいると、調べるほどに、戦争中の暮らしはつらいなぁと思います。
 「治安維持法」なんて本当に怖い。でも当時の国会議員に話を伺うと、「国会を通過した時は、こんなに怖い法律だと思わなかった」と言います。私の感想ですが、「日米防衛協力のための指針(新ガイドライン)」以降、「国旗国歌法」、「住民基本台帳法」、「有事法制」「メディア規制三法」、これらを全部足すと、昔の「治安維持法」にかなり近いくらい市民生活を脅かすものになるのではと思います。
 憲法改正が議論されていますが、もし今、憲法を改正したら、私の息子世代はその影響をまともに受けることになります。
 私は「日の丸」や「君が代」が苦手なので、ワールドカップやオリンピックでも気持ち良く見られる国旗があればいいなあと思います。「日の丸」の代わりになる、日本的、平和的なマークはないか? とスタッフで話していたら、「温泉マークはどうか」という話になりました。日本的情緒があっていいですよね。そんな旗だと、心も体も温まる。そうなると国歌は必然的に「いい湯だな」になります。ノリもよくなると思うんです(笑)。
 大人として、今、何を言わなければならないのか。それこそ反戦も楽しくなければ続かないから、まじめに本気で考えることは楽しいことと伝えていきたい。漫画家の私にできる、おもしろくて効果的な方法を考え続けています。

インタビュアー
          編集委員 ちょんせいこ

 

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Volo(ウォロ)は大阪ボランティア協会が発行する 市民活動総合情報誌であり、オピニオン誌です。
『月刊ボランティア』創刊1966年。『Volo(ウォロ)』と誌名を変更して2003年新創刊。一貫して「市民が主体的に関わることの大切さ」を伝えてきました。分野・セクターを越えた社会的課題に市民がいかに関わるかを独自のアプローチでタイムリーに発信しています。