市民活動を支援・推進することを、行政の施策として 取り組む自治体が増えている。
「市民と行政の協働」が盛んに言われている今日、市民はどのように 行政と長所を生かしあってこの施策を対等に検討し、実施していけるのか。
工夫をこらして取り組んだいくつかの例から、 これからの協働のあり方のヒントを見出したい。
市民活動推進施策の取り組みが増えている
自治体が「市民活動課」のようなセクションを設置して、分野を超えた市民活動推進施策に取り組みはじめたのは、おそらく一九九五年一月の阪神・淡路大震災の被災地でのボランティアの活躍が、最初のきっかけではなかっただろうか。それ以前にも、地域の自治活動の支援や、福祉・国際交流といった各分野ごとでの活動推進・支援はもちろんあったのだが、最近のような総合的な推進策は、近年の新たな動きのように思われる。
その後、「NPO」や「市民活動」という言葉はさらに市民権を得、一九九八年には特定非営利活動促進法が成立。さらに多くの自治体が、「市民活動を支援・推進する」ことを検討し始めている。
例えば、大阪府内の四十四市町村のうち、既に市民活動推進についての条例や指針を持っているのは七か所で、全体の一五・九%(総合計画での記載は除く。二〇〇三年二月編集部調べ)。また、市民活動推進施策を検討するための懇話会等を、設置済み・準備中・設置予定は、合わせて十八か所、全体の四〇・九%である。
二〇〇一年七・八月に行なわれた調査によると、「NPOとの協働に関する指針を策定」あるいは「NPO支援もしくは協働に関する条例(または要綱等)を策定」している自治体が四か所、「NPOとの協働に関する提言をまとめるための懇話会等を設置」しているのが十二か所となっている[(財)大阪府市町村振興協会おおさか市町村職員研修研究センター「住民と行政のパートナーシップ研究会」調べ]。したがって、ここ一年半の間にも、ずいぶん取り組みが増えていることがわかる。
「取り組む予定がない」と答えた自治体でも、「するべきという意見は出ている」「法人数が少ないので様子をみている」など、何らかの関心を持っていることも多い。公的な推進策が広がりつつあるのは、間違いないところだろう。
形だけの市民参加を超えるもの
それでは、こうした推進策は、どのように検討されているのだろうか。
そもそも、従来新たな施策に行政が取り組む際は、ある程度行政内部で原案が調整、検討されて、決定までのあらすじが作られ、それが公開検討会や公聴会などで説明されることで「市民参加」とされるアリバイ的なものが少なくなかった。
しかし、そのやり方が、本当に市民に必要な施策を実現してきたかどうかには疑問が残る。市民活動推進施策の場合は特に、自発的な活動と直結するだけに、どんな問題があってどうやって解決していくかを活動の担い手自身が中心になって考える方が、より現場に即した有効な施策になるだろう。ただしそれは、あくまでも行政の本質的な役割=「全体の奉仕者」として可能な範囲で考えられるべきものだ。もし市民側が行政の限界を無視してでも主張すべきと考えることなら、財源獲得も含めて、全て自前で計画すればいいからである。だからこそ、市民活動推進施策の検討の場では、市民と行政がお互いの状況を理解しつつ、協働でより有効な施策を作り上げていくための工夫が必要となるのだ。
施策検討の流れ大阪府豊中市の場合
ところで、施策づくりを市民が考えるべきと言っても、どうやって施策がつくられるかということ自体、それほど知られているわけではない。そこで、施策づくりの過程にできるだけ市民の意見が反映されるようなユニークな工夫が見られる大阪府豊中市の例で、施策検討の流れをみてみよう。
同市では、市民公益活動推進指針を策定するために、まず総合計画策定のために行ったq市民意識調査を機に、地域コミュニティ組織の調査、市民公益活動団体基礎調査(府内調査)を実施。二〇〇一年度にまとめられた総合計画では、「協働とパートナーシップに基づくまちづくりの推進」を基本姿勢の一つにうたっており、これに基づいて、「市民公益活動推進委員会」を設置。約一年半をかけて十三回の委員会を開き、活動環境基盤づくりや協働事業の推進、評価の仕組みづくりなどの具体的方策や、推進の仕組みづくりとして推進体制整備や行財政改革と「協働型」職員の育成、市民がつくる「市民活動センター(仮称)」の検討と条例制定を提言としてまとめた。
一方、庁内でも二〇〇〇年七月から「市民公益活動支援・協働検討会議」を開催。二〇〇二年末までに二十二回、市民団体と接点のある庁内部門と、国際交流協会・社会福祉協議会・男女共同参画推進財団を交えて、横断的な検討の場を持った。また、市民に対しては合計九回の研究会やワークショップを開き、検討機関である市民公益活動推進委員会の議論を庁内と市民のそれぞれでも検討し、それをさらに委員会へ返すという流れで、多層的な検討を重ねた。
「委員会という検討の軸があり、他方で庁内の調整・合意の場と、市民・市民団体に広く伝えて検討していく研究会・ワークショップの場という三つの場が同時に連携して動いたので、協働の現場に根をおろした提言をまとめられたのではないか。全部の事務局を担う担当課はそれなりに大変だが、市民と行政の協働のスタートにはこのくらいの手間はかかるものと思う」と、豊中市市民生活部市民活動課課長・田中逸郎さんは語る。
委員会の提言を受けて、市ではこの二月に「市民公益活動推進指針案」を作成。ホームページと市報でパブリックコメントを求め、意見交換会を経て策定に至る予定である。
「まず調査」とは限らない
もちろん、この流れは一例に過ぎない。例えば調査の扱いも、必ずしも検討に先立つものとは限らない。
一九九六年という早い時期に神奈川県鎌倉市で設置された「鎌倉市市民活動支援検討委員会」では、「市民活動団体実態調査」の実施そのものを委員会で検討。「調査をしない」という選択肢を含めて検討した結果、やはり全体を把握しようという結論となり、アンケート内容や調査対象についても委員会で議論し、発送作業も委員有志が集まって行った。ただし、調査票設計や分析についてはシンクタンクである社会調査研究所が受託し、結果の見方については専門員であった山岡義典氏のレクチャーを受けるなど、専門家の支援も得ている。
また、大阪府箕面市では、委員会や市民活動支援センター設立の検討を経た後、「みのお市民活動センター」設置を目前にした頃に、センターの運営主体となるNPOが調査を受託。その時期に市内五十団体を訪ねてヒアリング調査をしたことで、実態把握だけでなく、市民団体間のネットワークづくりにつながったという。
検討メンバーはどうやって選ばれるか
施策の検討は、「委員会」や「懇話会」といった名称の会が設けられて進められることが多い。先に述べたようなアリバイ的市民参加であれば、委員会の役割は、行政側で予定された案に対し、承認かせいぜい修正するだけに留まりかねない。本当に委員会で施策を検討するためには、どんなメンバーが委員になるかは極めて重要だ。
最近は、市民を対象とした委員公募が盛んだ。公募委員の人数枠が設定されている場合、応募時に作文やレポートを求めておいて、すでに行政より委嘱されている他の委員がそれを読んで採点するなどし、総合得点で選考する方法が取られることが多い。
さらに、公募委員だけのケースもある。大阪府高槻市は「市民活動促進懇話会」の委員を公募のみで募集したところ、NPO法人の代表、地域ボランティアなど三十七人が応募。全員が委員になったが、より議論を深めるため約一か月後に自薦他薦による十人の世話人会を構成。全体会とほぼ同じ頻度で世話人会を開催し、全体会と世話人会の両輪で報告書づくりを進めた。
「鎌倉市市民活動支援検討委員会」も応募者全員就任だが、募集対象は個人ではなく非営利の市民活動団体の代表者である。応募数の三十五人は、「人数的にもちょうどいいくらい。分野などのバランスもとれていた」(鎌倉市市民活動部市民活動課・熊澤隆士氏)が、「もし百人集まっても、分科会などの工夫をして全員でやればいい」つもりでいたという。「団体の代表者」に限ったのは、個人ではなく団体の立場で支援策を考えて意見してもらうためと、代表者であれば団体の規模にかかわらず一団体一人になるので、規模の格差が議論に影響しないと考えたからである。
公募委員の選考については、応募者全員で他の応募者のレポートを評価しあって互選する、という方法もある。ただし、この選考方法が事前にわかると組織票が可能となる等の問題があり、実現は難しいかもしれない。
検討メンバーの巻き込みと議論の公開
「行政による市民活動推進」というテーマで、初めて行政と市民が同じテーブルにつくと、市民活動の担い手から現状への不公平感や不満が噴出したり、個別の「陳情」がなされたり、議論のテーマを行政側が用意して、そのこと自体が行政主導だという批判が出ることがある。また、初めて顔を合わせる公募委員が緊張してしまって、うまく議論に参加できないということも考えられる。
だが、いずれにしても会議を丸くおさめて予定通りに進行することを行政側が仕組んでしまっては、アリバイ的な市民参加と変わりない。ここでは、検討メンバーが最初に顔を合わせる時点で、それぞれの問題意識や論点を共有できる工夫をした例をみよう。
一九九九年十月に設置された「箕面市非営利公益市民活動促進委員会」では、第一回目の委員会の時に自己紹介の後、議論の方向性が確認された。そして、事務局から行政側の事情として補助金や事業委託に関する問題が説明され、行政としての取り組みの優先度などが示された。そのうえで、白紙のA5サイズの紙を数枚ずつ各委員に配り、「促進委員会で話し合いたいテーマを書いてきてください」という依頼がなされた。
また、本当に議論を尽くすためには、限られた回数の委員会だけでは足りないということもありがちだ。箕面市の例では、委員会とは別に「ワーキングチーム」を設けた。公募委員の一人が提案し、「手弁当になるが、入ろうと思う方は手を上げてください」という呼びかけに、公募委員とその他委員の一部が手を挙げたそうだ。その一人、櫻井あかねさんは、「本音で語り合って、とてもおもしろかった。行政職員の方も毎回参加して、互いに市民活動推進に対する思いや夢を語り合いました。みんな熱かったですね(笑)。実際、ワーキングの中からいろいろなことが生まれ、考えられたと思います」という。
検討メンバー以外の市民の参加はどう考えるか。市民活動推進施策を検討する委員会や懇話会は、当初から傍聴可とされる場合が多い。傍聴しやすくするために、わざわざ夜間に開催する例もある。傍聴者に対しては、最後に感想を尋ねたり、委員長の裁量で発言を認めることすらあるようだ。さらに、委員会の概要や議事録をホームページで公開し、検討過程をオープンにしている例もある。埼玉県上尾市では、公開のためのホームページ自体を、委員会のもとで構成された、市民と行政職員が参加する作業部会で運営している。「委員が市民の代表とはいえない」点からいっても、検討過程を広く市民に公開することは重要だろう。
行政サービスの市民運営 ―協働から自治へ
こうして市民が主体的に検討した施策が、行政サービスとして具体化され実施に至ると、そのサービス自体を市民運営で…という流れになりやすい。例えば、市民活動推進施策として、しばしば市民活動サポートセンター設立構想が浮上する。そしてその運営については、やはり市民活動の長所が発揮できるよう、「市民運営」でありたいというのが、大方の活動する市民の願いである。
もっとも、市民運営をどうやって実現するかについてはさまざまだ。例えば、検討を重ねてきたメンバーの一部が自ら運営の担い手として立ち上がることもある。次項のインタビューに示す「さが市民活動サポートセンター」の事例はこのスタイルだ。また、検討メンバーは運営スタッフに必要な資質を見極め、そういう資質を持つ人材を探すということまでを役割とすることもある。担い手となるNPOを公募する、という手もあるだろう。
どの方法がいいかは、関わっている人の状況や地域の状況など、さまざまな条件による。大事なことは、どんな選択をするかを市民自身が考え、話し合って決めるという過程そのものである。ただ、その際に、行政サービスとして拘束される枠組みや、行政の事情はきちんと理解し、本質的な限界の中で考えなければならない。
行政の重要な役割は、こうした「事情」を、検討する市民に正確に伝えていくことで、それは情報公開に他ならない。一方、市民の側には、そうした事情を理解する力や、その他多くの情報を得て施策を形成していく力が必要だ。協働とは、木原勝彬氏によれば、「公共活動の共通目標を達成するために、パートナーを尊重した対等の関係で共同活動を行い、活動の成果を相乗効果的に創出させる戦略的、実践的行為」(『NPOと行政の協働の手引き』二十二ページ、本誌裏表紙参照)である。ある性格を持つ行為そのものであって、決して「委員会に公募委員が参加している」とか、「NPOに事業委託をする」といった外面的な形態をさす言葉ではない。
さまざまな例を取り上げてきたが、それらが協働の「モデル」になるわけではなく、「こうすれば市民はいつ頃までにこう動く」といった協働の方程式があるわけでもない。行政サービスとしての限界の中で、自分たちに必要な施策を、自分たちで真剣に考えること。それを可能にする状況をつくること。施策検討における協働の本質は、そこにある。これこそがスローガンや単なる組織形態に留まらない、真の自治への取り組みと言えるのではないだろうか。
| わたしたち、こうして市民活動の拠点を手にしました。 |
| 特定非営利法人 さが市民活動サポートセンター |
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二〇〇〇年に、佐賀市の総合計画策定のために、公募市民で「百人委員会」をつくろう、という呼び掛けがあり、現事務局長の松尾さんが応募、参加しました。検討議題のひとつに、JR佐賀駅の移転跡地の活用問題があり、市民活動センター構想はその中で出てきたものです。運営はやはり市民運営がいいね、という意見も出ていたような気がします。
この委員会とは別に、同じ頃、佐賀市が市内で把握できるボランティア団体、市民活動団体全てに呼びかけて、聞き取り調査や交流会を始めました。最初の交流会はもういろいろな団体が有象無象に集まっていて、自己紹介だけで終わった感じ。
まあそんな交流会や学習会を二、三回続けて、他の団体の人とも顔見知りになった頃、佐賀市から公設民営の市民活動センター構想について、話がありました。二〇〇一年の一月頃ことです。
活動の拠点としてセンターはあったほうがいいし、運営も「市民運営」にする方が良いというイメージはあったけど、何しろ佐賀県では初めての試みだったし、民間の中間支援組織もないし、話し合っている私たちはそれぞれ自分の団体を抱えていて忙しい。一体誰がやるの?という疑問はあっても、先に進まなかったんです。
完成に向けて建物の工事は着々と進められているし、今運営に乗り出す市民が現れなかったら、公設公営でスタートしてしまう。そんな危機感が真剣に迫ってきたのが二〇〇一年三月の会議。それで、会議の終わり頃に、本当に自分たちでやる気ました。話し合って決めようと会議を持ち、その後、もう一度全員に呼びかけて、覚悟を確認しあったんです。そして、二〇〇一年五月に十数人が集まって「さが市民活動サポートセンター準備会」を設立しました。
いつも行政が主導していたけど、これからは自分らの場所づくりをする−そんな思いで、事務局も現専務理事の川副さんの作業所に設置。作業所の活動の傍ら、組織づくりのための仕事に取り組みました。会た小・中学校で使用するボランティア・ハンドブック作成や連続講座の事業委託を受けるなど、中間支援組織としての仕事も始まりました。
そして、活動の拠点であるセンターとしての「市民活動プラザ」運営のコンペに応募。他にも同時期に設立された中間支援組織があったんですが、結局応募はうちだけでした。でもきちんと審査員の前でのプレゼンテーションも行い、その結果採用され活動歴は長いけど、中間支援組織のスタッフとしては新米です。始めてみると、佐賀市の市民活動の実態もよく知らなかったことを実感。中間支援の仕事をしていくには、まだまだ勉強が必要ですが、いい意味で行政とパートナーシップを組んで、ここからたくさんの活動が生まれるようにしたいですね。
(専務理事 川副知子さん、事務局長 松 尾由紀子さん、事務局 野口淳子さん・談)
| 官製NPO |
| (阿部 圭宏) |
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NPO=民間非営利組織をわざわざ「民間」と断っているのは、行政ではなく、もちろん行政の統制下にもなく、行政と一線を画しているということを外に向かって示している言い方です。そうした民間の自主自立的な組織であるはずのNPOの中で、最近気になるのが「官製NPO」です。
「官製NPO」とは、設立時に行政が深く関わるか主体的な役割を果たしたもので、運営面でも行政の庇護・管理のもとにあるようなNPOという意味合いです。言葉だけから判断すれば、「官製NPO」というのはあり得ないはずですが、現実は大手を振ってNPOを名乗る「官製NPO」が闊歩しています。例えば、公共施設の運営に関心ある人を行政が募集してNPO法人を作り、そこへ管理業務委託をする。あるいは、行政活動を補完するようなボランティアを募集して組織化(NPO化)する。市民参加で行った行政の計画づくりのための委員会を衣替えしてNPO化する…などです。
行政は市民に対峙するとき、何らかの団体を作って、そこへの補助、委託、職員派遣等を行ってきたということも過去にはありました。中には、行政が呼びかけた団体の事務局をそのまま行政が持っているというケースもあります。NPOが社会的な評価を得つつある中で、行政が従来型の対応でNPOをつくったり、NPO設立に深く関わることはいかがなものでしょうか。
もちろん、行政が設けた場が本当に単なるきっかけとなって市民の発意で組織化に至る例もありますが、自分の意のままになるNPOづくりを行政が仕掛けることは、NPOによる社会監視や新たな社会ニーズの発掘、社会サービスの提供といったNPO本来の機能を失わせることになります。しかも、行政とNPOとの協働自体も歪められます。行政はコントロールできるNPOをつくろうと考えたりしないこと、市民側もそういう「官製NPO」をつくることに荷担しないことが求められていると思います。
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Volo(ウォロ)は大阪ボランティア協会が発行する 市民活動総合情報誌であり、オピニオン誌です。
『月刊ボランティア』創刊1966年。『Volo(ウォロ)』と誌名を変更して2003年新創刊。一貫して「市民が主体的に関わることの大切さ」を伝えてきました。分野・セクターを越えた社会的課題に市民がいかに関わるかを独自のアプローチでタイムリーに発信しています。
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