| ワークショップ:“深い民主主義”を可能にする方法論 |
| 多くの人が集い、何かを決定し作りだそうという場面で、最近ワークショップという手法が大変注目されている。はじめは慣れないとためらう人もいるが、楽しく取り組みながら目標が達成された時には、大きな満足感も得られる。いったいこの方法は、どんな考え方によって生み出されているのだろうか。『ワークショップー新しい学びと創造の場ー』の著者である中野民夫さんに、ワークショップの神髄についてうかがってみた。 |
(編集部)今、ボランティアやNPO・NGOの現場では、「ワークショップ」の民主的手法や背景にある理念に高い関心が寄せられています。「ワークショップ」というスタイルが、市民活動のどういう場面で役に立ち、どのような力になるとお考えですか。
ワークショップは、まちづくりから教育や学習、社会改革や精神世界をテーマとしたものまで多種多様ですから、いろんな場面で役に立つと思います。
また、ワークショップでは、具体的なアクションの根っこにある「自己」が、実はあらゆるものとの関係性の中で存在していることが実感としてわかることがあります。一人ひとりの人間と世界はつながっていますが、このことを実感すると、人々は気持ちを落ち着かせ、心を癒すことができます。なぜなら、自分のよりどころであるアイデンティティに広がりと深みを感じることができるからです。
また、何かについて自分はどう感じているのかを語り合い、自分の感情を他者と丁寧に分かち合っていくと、同じような志や悩みをもっているのは自分一人ではないことを知ることができます。すると、新たな一歩を踏み出す勇気が湧いてきたりします。誰がどのようなアクションを起こすかはその人の個性や現場によって違いますが、世界と繋がっているという実感こそが厳しい状況から逃避せずに問題に対処できる力の根源になります。
(編集部)先日、日本トランスパーソナル学会の緊急企画として「テロリズムと戦争を超えるために」というワールドワークを実施されたと伺いましたが…。
米国のテロ事件を受けて十月十六日に緊急開催しました。先着六十名の定員で呼びかけたところ、わずか二週間足らずでいっぱいになりました。たった二時間のワークでしたので消化不良だったことは否めませんが、それでもかなりはげしいやり取りが行われました。
まず輪になって座って少し落ち着いてから、今回の事件についてどう感じているのかを一時間くらい思い思いに話してもらいます。ワールドワークは、ファシリテーターが争点(ホットスポット)や対立軸を強調させて場の力を活用するという手法をとります。それは、葛藤や紛争に目を背けることなく、個々人の思いに耳を傾けるという姿勢を徹底しているからです。後半は、ロールプレイング方式で、ブッシュ大統領やテロリストなどその場に現れるいくつかの立場になりきり、互いに主張をぶつけ合いました。結局、報復し合っていたのでは、お互いに「死」に至るしかないということをあらためて深く実感しました。その後、二、三人で感じたことを少し分かち合ってもらってそのワークは終了しました。二時間という短い時間なので、盛り上がってきたところで終了しなければなりませんでしたが、日本では休みと参加費の問題で長期間に及ぶワークショップの実現は難しいですね。
私がインドで参加したA・ミンデルのワールドワークは、三十カ国から約三百人が参加し、十日間にわたって人種差別や男女差別などについて真剣なぶつかり合いをしました。混とんの日々でしたが一週間を過ぎた頃から、一つの発言をさえぎったりせずに最後まで深く聞き届けようという雰囲気がグループ全体に自然に生まれてきました。弁の立つ人が小さな声をかき消そうとすると、"Deep Democracy!!"というヤジが飛ぶのです。「黙って!」「最後まで話させろ!」というニュアンスでこの言葉が使われはじめたことは、大変印象的でした。
"Deep Democracy"(深層民主主義)とは…、「声なき声を聴く」ということでしょうか。ともかく、全てのものはいろんな形で何かを表現しようとしているのであって、その事実をとても大切にしようとします。だから、グループプロセスを経て表れる、怒り、対立、沈黙などにも全て意味があって、それぞれの表現を尊重するという姿勢を貫きます。
つまり、はっきりものが言える人の議論によって成り立つだけの民主主義ではなく、意識から排除してしまったり、あまり耳を傾けなかったりする人々の声にも耳を傾けようということです。このことは、一人ひとりが社会をつくっているという自覚を持って社会参加していく勇気を養うことにもつながります。
中野民夫さんプロフィール
1957年東京生まれ。82年博報堂入社。91年カリフォルニア統合学研究所「組織開発・組織変革」学科修士課程修了。復職後、会社の仕事の傍ら、さまざまな市民活動や各種ワークショップを企画・実施。『ワークショップ―新しい学びと創造の場』(岩波新書)、『宗教でない宗教』(『岩波講座現代社会学』第7巻所収、岩波書店)他。
(『月刊ボランティア』編集委員 吐山 継彦、岡村 こず恵)
(残念ながらインターネットではここまでです。あとは本誌でみてください!)
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