No.369 / 2001年10月号 [前のページに戻る]

《特集》  地域の財産です!〜作業所の進む道〜 

 中学校の時、同級生に知的障害をもつ三人の友人がいた。最初は「なるべく関わらんとこう」と思っていたが、ユニークな彼らの魅力にどんどんと引き込まれてしまい、結局、高校での三年間の交流も、ご一緒した。しかし高校卒業後、私は大学進学を選択したが、彼らの前には「在宅」という道だけ。「せっかくここまで一緒に来たんやから、これからも地域で一緒に生きていきたい」…その思いに突き動かされて、彼らと家族、友人、先生が地域の人たちを巻き込んで立ち上げたのが一軒の共同作業所だった。一九八四年のことだ。
 バザーをし、カンパを集め、誰の顔を見ても「お願いします」を連発していた日々。やっと建てたプレハブの作業所は、最初は御殿に見えたけれど、年々、手狭になっていった。朝一番に行くと、足の裏にひんやりとなめくじがくっつく。日頃、めったにお目にかかれない蛇が、天井から落ちてきたこともあった。
 それでも親と友人が毎日、日替わりでローテーションを組み、障害をもつメンバーと一日を楽しく過ごした。行政からは土地を借りただけ。補助金が一円もない中でのスタートだったが、そのことすらもバネにできるパワーがあった。
 しかし作業所の毎日は単調だ。軽作業や廃品回収、畑作業で一日を過ごしても、日替わりのローテーションの運営では、毎日に継続性をもたせることができない。ボランティアには週一回でも、障害をもつ人にとっては、毎日の生活。それに用事や風邪でひとりローテーションが抜けると、とたんにその日の運営すら困難になってしまう。そうなると人間関係もギスギスしてくる。 
 このままではいけない…。
 そう感じ始めた二年目。大阪府では七人以上の障害者が通う作業所を対象に助成金がおりることを知り、いさんで申請をした。これは本当にありがたかった。お金の使い道は、迷うことなく「専従」スタッフ確保に注がれた。決して充分な報酬は支払えないけれど、「毎日いてくれる人」を確保すれば、全ての問題が解決できるような錯覚すらあった。
 この頃、前後して各都道府県でも独自の作業所補助要綱が策定されており、学齢期を終えた障害者を中心に、作業所は年々増加、拡大されてきた。現在は、全国に四千とも五千とも言われ、脆弱な運営基盤ながらも、草の根の障害者福祉を支える「一大セクター」として成長した。
 そして二〇〇〇年(平成十二年)十二月。厚生省(当時)は、「社会福祉の増進のための社会福祉事業法等の一部を改正する等の法律」を交付、施行。従来、ハードルの高かった社会福祉法人への認可要件を、「十人以上の利用者と一千万円の自己資金」に緩和した。今、作業所は大きな岐路を迎えている。
 今回は小規模社会福祉法人認可をめざす大阪府松原市の作業所のケースから、作業所の担ってきた地域福祉の役割を考え、今後の作業所運営を考えてみたい。

<まつばら作業所の場合>
 まつばら作業所は一九八七年にスタートした精神障害者を対象とした作業所だ。設立以来利用者は増え続け、現在はやまびこの家、ショップやまびこの合計三ヵ所の作業所を開設。利用者(メンバー)は六十名を越える。
 スタッフ(職員)の植前温夫さん(五一)は、小規模法人通達に最初は、「疑問」を感じた。
 「作業所が小規模法人に移行することはかまわないし、資産要件が一千万円に緩和されたことは評価できる。いつまでも作業所のままでいるよりは、法人化することで最大限、メリットを生かしていきたい」と考えている。しかし「一千万円という金額を集めるのは、どの作業所にとっても決してラクではないはず。大阪府では、二〇〇四年度までをメドにと言われますが、短期間に準備を進めるとなると、それに費やすエネルギーは大きいです」。 
 法人認可の準備は、日常の作業所運営のついでにやればいいというタイプのものではない。慣れない書類作成、理事、評議員の候補選定、一千万円の資金集めにかかるコストのしわよせは、直接、作業所運営に襲いかかる。
 それでも植前さん達は、スタッフ間で、法人化についてプラス思考で話しあってきた。「例えば、小規模社会福祉法人に移行すれば、人格ある法人として認められ、生活支援センターなどの事業契約の主体となれるし、社会的な信用も得ることができます。たとえ共同作業所のままでも組織の整備や透明性の確保は必要だし、逆に小規模社会福祉法人への移行が、その後押しになるのではと考えました」。
 まつばら作業所はこれまでにも、地域の精神障害者福祉の核として、大きな役割を担ってきた。
 近隣の病院(精神科)を退院した人達は、家に帰っても行き場がなく、閉じこもりがちになるケースが多い。そのことが更に病状を悪化させ、入退院を繰り返していくケースは、決してめずらしいことではない。地域に受け皿がないことで社会的入院を余儀なくされる人や入退院を繰り返す人、家族にとっても、作業所は精神障害をもつ人が、自分らしく地域生活を送るために必要不可欠な社会資源のひとつになっている。
 医療主導から地域福祉主導への道筋を作り、おしきせではないこれまでの作業所運営で培った専門性やノウハウを最大限活かすこと、また作業所が「癒しの場」として広く市民に活用されるためにも、まつばら作業所にとって小規模法人への移行は必要だと決意するに至った。
 「他の作業所では、もし一千万円を集められなかったら作業所がなくなるのではないか? とメンバー間に不安が広がったところもあったようですが、プラス指向で前向きに話をしたので、そのことでメンバーが不安定になるということはありませんでした」。メンバーと一緒に作業所の方向性も確認し、二〇〇二年四月から、小規模社会福祉法人としてスタートすることを目標に掲げた。

 (編集委員 ちょんせいこ)


(残念ながらインターネットではここまでです。あとは本誌でみてください!)


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社会福祉法人大阪ボランティア協会