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| No.364 / 2001年4月号 | [前のページに戻る] |
連日のように、医療ミス、事故が報道されている。一方で、がん、高血圧など生活習慣病の治療や、臓器移植、遺伝子治療といった先端医療にも関心が集まる。期待と不信が交錯する中、患者・市民が主体的に医療に参加する動きが広がり、医療現場にも影響を与えるようになってきた。 |
二月十五日朝、広島市西区の福島生協病院に「病院探検隊」が到着した。探検と言っても未踏の地に分け入るのではなく、病院を患者の目で見て気付いた点を報告し、環境整備に役立ててもらおうというもの。「ささえあい医療人権センターCOML(コムル)」(大阪)が一九九五年から始めたユニークな活動で、この病院が十六か所目。最近では病院からの要請が多くなっている。
探検隊の目玉は「飛び込み患者」。一患者として実際に受診し、感じたことを病院側にフィードバック(振り返り)する。外来の医師や看護婦、事務職員らには事前に知らされていないので、ふだんの様子を知ることができる。
この日は、COMLのスタッフやボランティアら計四人が胸痛、耳鳴り、股関節痛など実際に抱えている症状を訴えて、受付から診察・検査、会計など一連の流れを体験。午後の病院職員との話し合いの場で感想を述べた。
「ナースのあいさつで気持ちがほぐれた。ドクターも、こちらの希望を根気強く聞いてくださり、安心感を覚えた」(耳鼻科で)
「ドクターの説明はわかりやすく誠実さを感じた」(内科で)
「中待合と診察室の仕切りはカーテンだけで、中の話が筒抜け。自分の話も他人に聞かれるのかと心配になった」(整形外科で)
「診察前に、何の説明もなく検査ばかり受けさせられた。ドクターは温かい人柄だったが、尋ねても検査結果についての説明は十分されなかった」(内科で)
そのほかの探検隊メンバー九人は、院内をくまなく見学。病棟や医局、管理部門も見て回り、気になった点を報告した。
「小児科外来の入り口がわかりにくく、表示も不十分」「病棟廊下にいろいろな物が置かれ、通行の妨げになっている」「病棟でのカルテ開示は歓迎したい」……。
指摘の多くは、病院側にとって耳の痛い内容。それでも、現場の職員や管理職は熱心にメモを取った。「建物が古く施設面での限界を、ソフト面で補いたいと思って努力してきたつもりだが、今日の指摘は有益だった。改善できることはすぐにでも実行したい」。そう事務長は答え、礼を述べた。
医療を消費者の目でとらえ、患者・市民が主体的に医療に参加することを目指して九〇年に発足したCOML。活動には病院探険隊のほか、相談者自身の問題解決に向けてボランティアらが助言する医療相談、ミニセミナー「患者塾」などがある。「賢い患者になりましょう」を合言葉に、患者自らの意識改革で安心、納得できる医療にしていくことを目標にしている。医療者と敵対するのではなく、よりよい患者・医療者関係を築こうという姿勢も持ち続ける。
十年で電話相談は一万八千件を超えた。受話器の向こうからは悩みや不安を抱えながらも、持って行き場のない患者や家族の本音が伝わってくる。「七種類も薬を出されているが」「説明を求めたら、怒鳴られた」「簡単と言われた手術で母は死んだ」……。
「相談内容をみると、相談者の抱える問題の大半は、医療者とのコミュニケーションギャップが根っこにある」と代表の辻本好子さんはみる。だから、COMLでは医療現場でのコミュニケーションを重視した活動も続けている。患者側からインフォームド・コンセントを普及しようと、ボランティアらと共に「医者にかかる10箇条」(別掲)を考案。小冊子にしたところ、これまでに全国から十六万部もの申し込みがあった。
インフォームド・コンセント。「説明と同意」とよく訳されるこの言葉は、単なる手続きのことを指すのではなく、幅広い意味を含んでいる。患者の権利を守り、患者と医療者とのよりよい人間関係を築くためのキーワードだ。
日本で広まったのは九〇年以降。当初、医師らは「患者に説明して同意を取ることは昔からやってきた」と批判した。だが、一方的に説明して、患者から同意書を取るというやり方は、医療者主導の「説明と同意」でしかない。
医師らは、診断と治療のねらいや内容(治療によって起きうるマイナス面も含む)を十分に説明し、患者がそれを理解し、選択し、納得して治療を受ける――。これが本来のインフォームド・コンセントのあり方であり、主体はあくまでも患者だ。
医療の世界では「パターナリズム(父権的温情主義)」に基づく医療者・患者関係が続いてきた。医師は「私に任せておけば、間違いない」、患者は「専門家にお任せすれば大丈夫」という意識が当たり前だったのだ。
だが、医療の高度化や慢性疾患の増加など環境が大きく変わって「お任せ医療」ではすまなくなってきた。病気とうまく向き合うためには、患者と医療者は横並びの協力者、パートナーの関係になるのが理想。そのために、インフォームド・コンセントという綿密な打ち合わせが必要となるのだ。
(残念ながらインターネットではここまでです。あとは本誌でみてください!)
社会福祉法人大阪ボランティア協会