Vマーク青 月刊ボランティア〜Internet Edition〜
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No.344 / 99年5月号

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No.345この人に写真 この人に ...No.153 ● 尾車 浩一さん(尾車親方・元 大関琴風) ● 

彼ら(弟子)は泣きます。わめきます。

でも、勝ったら人一倍、一緒に喜びますよ。

 昔に比べて世の中がどんどん便利になって子どもたちの生活環境が大きく変わってきたと僕は思うんですよ。最低限の生活が保証されて不自由のない生活を過ごせるようになった今の社会で”ただなんとなく生きてる“って子が増えてきているんじゃないかと思うんです。

 それは相撲の世界も同じところがあって、昔のように「飯食えるから相撲取りになろう」「相撲の世界で出世して一旗揚げて親孝行した」なんて言う子はほとんどいなくなりましたね。

 でも、悲しいかな、ぼくらはプロの世界で生きているわけで、”勝つか負けるか、やるかやらないか“しかないんですよ。時代がどんなに変わってもこの世界では”努力しない奴はだめ“です。苦しくて「もうやめたい」と思っても結局はプロの世界。結果を求めて勝負しないと、勝っても負けてもどっちでもいいなんて言ってたら最後は必ず負けるわけで、“勝ちたい”“勝たなければならない”という目標を持って闘っていかないと生きていけないんですよ。

 だから入門してきた子どもたちを育てていくにも「負けて悔しければ何で負けたのか、悔しくないようにするにはどうすればいいのか、お前ら自分で考えろ。飯は食わしてやるよ、土俵はかしてやるよ」といつも言ってるんです。

 確かに昔のほうが”目的がはっきりしていて頑張りやすかった“というのはありますが、大事なのはいかに今の子たちに目的意識を持たせるかということだと思います。

 それは、ひびが入るからといってこれ以上ひびが入らないように心配そうに見守っているってことじゃない。ガラスなら一度ひびが入ればそのままですが、人間は内から自分で直す力があるのだから、その力を与えてやることだと思うんですよ。そして、達成した時に一緒に喜び褒めてやることではないかな。

 僕は弟子を厳しく指導しますよ。可哀想だけど手も出します。彼らは、泣きますよ、わめきますよ。でも相撲に勝った時に「どうだできるじゃないか」、「ほらみろ、あの時の頑張りが今生きているんだ」と、そういう風に返してやることで、彼らはヤラレタ怨みより出来上った時の喜びを感じていくんですよ。僕は相撲を通して二十四時間彼らと生活していろんな場面で彼らに関わっていく。「今の若者は…」って言うけれど、今も昔も若者は同じであって、“大人が子どもから逃げないこと”がやっぱり大事なんだと僕は思うんですよ。

(萬吉)

●尾車 浩一さんプロフィール●

三重県津市出身。19歳8ヵ月で新入幕。昭和53年1月場所史上4番目の早さで関脇昇進。しかし、11月場所で重傷を負い休場。その後、不屈の闘志でカムバック。昭和56年に初優勝して大関に昇進。昭和60年現役引退。現・尾車部屋親方。


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