◇◇ NPOへの就職希望者に贈る ◇◇
「もうひとつの就職」ガイド
〜職場としてのNPO像〜
これは特集のダイジェスト版です。全文はぜひ『月刊ボランティア』本誌をお求めの上、ご覧ください。
昨年12月1日から、特定非営利活動促進法人(通称、NPO法人)の申請受付が全国で始まった。この法律によってNPOが容易に法人格を取得できるようになったが、今年2月5日現在、全国で289団体の申請があるという。法人格取得はNPOを文字どおり「組織」として整備していくためのひとつの条件だが、NPO法人の増加はNPOが組織整備を進めている現れと言えるだろう。
今号の特集は、「職場」としてのNPOである。NPOが今後、より組織力を向上していくためには、専従、有給職員の雇用、労働環境の整備が重要な課題にあげられる。一方、NPOへの就職希望者もここ数年で随分と増加している。
しかし、「職場としてのNPO」の姿はどれだけ見えているだろうか。今、マスコミでは毎日のようにNPOが紹介されるが、「組織」としての側面、マネジメントの側面はまだまだ少ないようだ。そこで、編集部が独自で行った「職場としてのNPO現状調査」の報告等を交えて、「働く場」としてのNPO像を探ってみよう。
○ 押し寄せる求職者の波国際交流・協力団体の情報センターである関西国際交流団体協議会では、一九九四年から、国際交流・協力分野のNPOで働きたい人に対して「就職ガイダンス」を実施している。一般にNPOへの就職情報が手に入りにくいことから、実際にNPOで働く人々の生の声を伝えること等が目的だが、毎回、参加者の状況は盛況で、昨年十二月五日の説明会には二百人の定員を超える二百七十人の参加があったという。
参加者層は学生と社会人が半々で、二十代前半を中心に高校生から定年退職者まで多彩である。当日、協議会が取った参加者アンケートの「参加動機」を見ると、「国際交流、国際協力の仕事がしたい!」という熱い気持ちがひしひしと伝わってくるものが大半だ。
この事例からも、NPOへの就職希望者の盛況ぶりが感じられるが、このことは個々の団体の職員公募への申込みについても現れている。たとえば大阪ボランティア協会が九七年度の新規職員採用試験には、一名採用に対して五十名の応募があった。東京の日本NPOセンターが一九九八年採用については十六倍(一名採用)、そして横浜女性フォーラムは、若干名の募集に対してなんと二千人! の応募があったというから、NPOへの求職者の盛況ぶりは決して特定の分野、団体の特例というわけではなさそうだ。
○ NPOの有給職員の状況大阪ボランティア協会の九七年度新規採用が五十倍であったということは、四十九人は不採用になったということだ。冒頭の「就職ガイダンス」については、二百人の就職希望者のために、事前に全国の国際交流・協力分野のNPOに職員募集状況を調査していたが、結果はたったの五人であったという。
NPO就職の全体的な状況を見た時、就職希望者が第一に認識すべき事実として、希望数に対して、受け皿(採用人数)が絶対的に少ないことだ。
分野を超えてNPO全体の状況を把握することは現状では非常に困難だが、分野別のいくつかの団体要覧を見てみると、『1998インターピープルダイレクトリー』(関西国際交流団体協議会/関西の国際NGO七四八団体を収録)では、そもそも専従職員を置いていない団体が六五%、四八四団体。専従職員を置いているNGO二六四団体中でも、職員一人だけが七六団体と約三〇%を占めている。専従二人の四六団体をあわせればほぼ過半数を占める。
また、『NGOダイレクトリー98』(NGO活動推進センター/全国の国際NGO三六八団体を収録)では、収録団体中、九五年十月以前に設立した開発協力型NGOで年間支出実績が三百万円以上に該当するなどの団体二一七団体の有給職員数は一団体平均五・七人(ちなみに団体に関わるボランティア数は一団体平均十五・五人)。
最後に、『グループ名鑑「兵庫・市民人」'97』(市民活動地域支援システム研究会・神戸調査委員会/主に兵庫県のNPO四五三団体を収録)では常勤の有給職員を置いている団体が一七%しかないという実状である。
また、編集部では「職場としてのNPO現状調査」(地域、分野を問わない一五〇団体に送付し、有効回答は五三団体。以降、「編集部調査」とする)を実施したが、職員公募の状況(図1)を見てもNPOへの就職の難しさが分かる。定期的に職員を募集する大企業並みの団体は四%の二団体のみで、八二%(四三団体)は欠員が生じた時のみの募集である。
このことはまた求職者が職員募集情報を把握しにくい状況をつくっていると言える。
職員採用の募集方法(図2)は、五三%が公募しているが、その公募している団体の中でも学校、職安を通じてはそれぞれ二〇%、三九%程度で、NPOに関わっていないとなかなか募集情報さえもつかめない状況である。NPO全体の有給職員の状況は分からないが、以上の断片的な情報からみても、いくらNPOに就職を希望したからと言ってもおいそれとなれるわけではなさそうだ。
○果たしてNPOは桃源郷か?とはいえ、NPO法が成立するなどの社会的なインフラも進み、NPOの組織基盤が強化されるにつれ、有給職員の雇用数も増加していくことが予測される。十年後か、二十年後には社会を構成するもう一つのセクターとして行政、企業に並び、労働市場の大きな比率を占める時代が日本にも到来することだろう。そこで、「編集部調査」報告等を基に「職場」としてのNPOの現状を見てみよう。
調査の回答を得た団体は、正職員(嘱託を含まない)雇用者数一人が一〇団体、二〜四人が二三団体、五〜九人が一三団体、十〜十九人が七団体。職員の属性(図3)は、男性が四六%、女性が五四%と全体ではやや女性が上回る結果で、面白いことに雇用する職員の数が多い団体ほど男性の比率が高くなるという結果になっている(男性が、一人職場では二四%なのに、職員が十〜十九人の団体では五二%と女性を上回っている!)。職員の年齢構成は、十・二十代が二九%、三十代が三四%と合わせて大きく過半数を超えており、企業に比べてNPO職員は全体的に若いことが分かる。
特に職員が少人数のNPOが多い中で、たとえ二十代であっても事務局として日常的な責任者であったり、あるいは担当部署の責任を担うケースは少なくない。また、職員のその団体での勤続年数は、一〜二年が一三〇人、三〜五年が一一四人で、この二つで全体の七〇%を占めている(図4)。
次に職員の労働環境について見ていくと、職員待遇の整備状況(図5)は、五十三団体中、ほぼ整備されているのが「通勤交通費」で、「社会保険」、「有給休暇」、「賞与」までが、なんとか過半数を超えている状況。ただし「有給休暇」の制度があってもどれだけ取得されているかはかなりあやしい。「有給休暇どころか、代休さえも消化できない」という現状も決して少なくはないからだ。また女性の職員比率が高いNPOにあって、「産休」制度を整備している団体は四二%しかなく、女性の労働環境の側面、組織としてのマネジメント(職員の継続性、キャリア・専門性の蓄積等)からも大きな課題となっている。
職員の「年収」については、九七年十一月に行われた「働く場としてのNPO〜民間非営利組織の活動と労働行政に関する調査研究報告」(労働省/全国の分野を問わない四三三件が有効回答)で、「二百〜三百万円」が二八八%でトップであり、「百〜二百万円」二六.二%、「百万未満」一八.五%と続いている。
また週当りの平均労働時間は男性が四一・九時間、女性が三七・九時間という結果になっている。しかし、五十時間を超える職員も全体の十七・八%いる。
(WEBでは残念ながらここまで。ぜひ以降の内容は本誌にて!)○ 労働環境は決して良くない
○ どんな人材を求めているか!
○職場としてのNPO、可能性
編集委員 川口謙造
社会福祉法人大阪ボランティア協会