わたしたち(市民)で議員を育てよう「1999年の統一地方選挙にジェンダーの視点を持った女性議員を一人でも多く増やしたい」。 そんな願いから「女性と政治情報センター・関西」は二年前から「女性を議会へ バックアップスクール」を開講している。今年度も六月から講座がスタートした。
一市民にとって選挙は縁遠いものである。ポスターの作り方、街頭演説の仕方、選挙事務所づくり、どれ一つとっても馴染みのないものばかり。実際の選挙に勝てる力を身につけることは必要だ。「スクール」では「応援議員ネットワーク」の協力を得て、選挙のノウハウを現職議員から直接学ぶことができる。現職議員の話を直接聞くことで、受講者は議員を身近に感じることができ、自分なりの選挙スタイル、議員活動スタイルをイメージできるようだ。
しかし、議員となれば議会で予算や条例などについて判断を下さなければならない。政策づくりの力を養うことも同じぐらい大切だ。「スクール」では政策づくりの講義にも重点を置いている。講義には「ジェンダーの視点とは何か」、「ジェンダー・フリーの社会を作るためにはどうすればよいのか」という事務局スタッフの思いが込められている。
他にモデルのない中から、事務局スタッフと受講生が共に作り上げていった「スクール」である。これまでに約一四〇名の受講者から、四人の議員が誕生した。今回の受講者からも来年の選挙で実際に立候補する者が出てくるだろう。
「支援する市民」を育てる
だが、「候補者一人だけでは選挙運動を戦うことができない」と事務局の森屋裕子さんは述べる。「選挙は、候補者、候補者を押し出す人、それを応援する市民、この三者が揃って初めて成立する。中でも候補者を押し出す人はとても重要なポイントにいる。支援グループを組織し、選挙運動を実際に切り回し、それを取り巻く市民に応援を働きかける」。
「スクール」も受講対象を、議員になりたい人、議員を出したい人、政治に関心のある人と幅広く設定している。実際の受講者もこの三つのタイプに分けることができる。市議会選に立候補を予定していた人が、その支援グループの事務局長とともに受講したケースもあった。つまり、「市民派議員」を育てるには「候補者」だけでなく、「市民派議員を支援する市民」をも育てる必要があるのだ。森屋さんは「政治を変えるのは議員だけではない。市民も変わらなければならない」と述べる。
「支援」と一口に言ってもいろいろある。「選挙運動は当選というはっきりとした目標があり、期間が定められ、結果もはっきりしている。また、選挙運動は苦労も多いかわり、お祭りのような楽しさがある」。難しいのは、候補者が当選し議員になった後。支援者自身が急速に政治に関心を失うこともあるし、また、どう支援すればよいのかわからなくなることもある。
さらに、当選するまでは「候補者」も「支援者」も同じ「市民」という立場だが、当選した途端に「議員」と「市民」と立場が異なる。この立場の違いが微妙に両者間に距離を作ることがある。しかし、「候補者が議員になった後にこそ市民ができることがある」と森屋さんは強調する。「市民は議員を励ますことができる。議員も励まされ上手になる必要がある」。
議員を励ます
スクール一期生で、一昨年八月の箕面市議選で初当選した牧野直子さんも、「励まされ上手な議員」の一人だろう。牧野さんは、食料品の共同購入など地域活動の中心メンバーで、周囲から押されて立候補した。当選後、「議員」と「市民」の立場の違いから孤独感にさいなまれたこともあった。
「議員はたくさんの議案に判断を求められ、保留できないしんどさがある。また、財政や地域の特性など総合的に判断しなければならない。そのような議員の立場が市民にはわかりにくい」。だからこそ、牧野さんは議員が自らの活動内容を市民に知らせる必要があると考える。 牧野さんは議会ニュースを発行し、議会傍聴を呼びかける。議会が始まると支援者は「議会ウォッチングにご一緒しませんか」という看板を掲げて、傍聴に来てくれる。「市民にとって議会はなかなか入りにくい場所かも知れない。でも、議員が質問するとき、市民が傍聴に来てくれると、とても励まされる。市民が支えてくれると力がわく」。
牧野さんが議会の懸案事項で判断に迷ったとき、支援者が集まりあたかも一人一人が議員であるかのように意見を述べてくれたことがあった。皆の意見を聞きながら、牧野さんは自分なりの方向を出すことができたと語ってくれた。「市民が自立して地域の問題を自分の問題として考え、独自に活動を展開することが議員活動の支えになる。議員を励ますことになる」。 「投票したい候補者」がいないとき、それは候補者の問題だと今まで思ってきた。しかし、それは「市民派議員」を育てることができない「市民」の側の問題でもあるようだ。
皆さんも手始めに地元の議会を傍聴してみませんか?編集委員 森定 玲子
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- @スクールを開催するきっかけ
- 一九九五年の統一地方選挙の折、吉本弘子さんと正井礼子さんはそれぞれ地元の市議選に立候補した。二人は、当選・落選と明暗を分けたが、共に女性議員の誕生を支援する必要を痛切に感じた。女性政策のコンサルタントでもある森屋裕子さんも、もっと女性議員が増えてほしいと思っていた。その3人が、「女性を議会へバックアップスクール」を企画した。
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- A講座の内容
- 講座は学習型と体験型の二部制。学習型では政治の仕組み、女性政策の基本的考え方など基礎的な知識を身につける。体験型では議員の話を聞いたり、ディスカッションなどを通して実際の力を養う。実際に街に出て、街頭演説にチャレンジするプログラムもある。
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- B応援議員ネットワークについて
- 受講者が実際に選挙運動を始める時や議員になった時、現職の議員に直接選挙のノウハウや議員活動のイロハなどを相談できるように「応援議員ネットワーク」を組織している。初年度は十四名。第二期以降は、受講者で実際に市会議員になった者も含めて十八名に増える。
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- C受講者について
- 初年度は他に例のない講座であったため、全国から二百件近い問い合わせがあり、沖縄県や神奈川県など各地から七十四人が受講した。年齢層は四十〜五十歳台。職業は主婦、パート、フルタイムなど多様である。大半が環境問題や街づくり、福祉などで地域活動してきた。二期は六十三名、三期は五十一名と少なくなってきているが、継続受講者も十数名いる。
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- D各地に広がるバックアップスクール
- 第二期のバックアップスクールが刺激となり、九七年以降、滋賀県、岡山県、香川県、兵庫県、広島県など各地に女性議員の誕生を支援するセミナーが広がっていった。第一期の受講者の中から、地元でセミナーの開催に携わる者も出ている。
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- E立候補について
- 一期の受講者の中から五名が市議会選に立候補、茨木市、箕面市、大阪狭山市の各市で計四名当選。二期は一名が市議会選に立候補したが、落選。
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- F今回の講座の特徴
- 統一地方選挙を来年に控え、実際に立候補を予定してる人の実践的ニーズに応えるため、「政策づくり講座」(Aコース)と「選挙に勝とう実践講座」(Bコース)の2コースに分けている。Bコースは一期、二期、三期Aコースを受講した人に限定している。