Vマーク青 月刊ボランティア〜Internet Edition〜
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No.330 / 97年11月号

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「介護保険」はオイシイか?

 今臨時国会の最重要法案の一つは「介護保険法案」。一九六一年に国民皆保険体制が実現して以来の新たな社会保険制度の創設とあって、大きな関心を集めている。
死亡前の時期別に見た床についていた者の割合

 ところで、これまで家族の問題とされがちだった「介護」が、重要な社会的課題となってきた最大の理由は「社会の高齢化」だ。現在、身体に障害をもつ人たちの実に六割は六十歳以上の高齢者。これは、いわば当然のことで、人は誰でも年をとると身体が言うことを聞かなくなってくる。つまり高齢者が増えてくれば障害をもつ人も当然増える。しかも医療の進歩もあって、たとえば【図1】のように死亡前に寝たきり状態-重度の身体障害とも言える-となって生きる期間は今や大変長い。自分自身が障害者になることや家族に障害者を抱えることが、とてもポピュラーな状況となってきたのだ。

 この状況を「弱者の大衆化」と呼ぶ人もいるが、ともあれ「介護問題」は誰しもが直面する課題となってきたのである。介護問題で悩む人は、かつての福祉対象者のイメージにあった「恵まれない人」ではなく、所得の多寡などに関係のない、あらゆる人の問題となってきたのだ。

 そこで「介護問題を個人の努力にゆだねるのではなく、社会的に解決しよう」ということになったわけだが、今回、その方法として「社会保険方式」が提案されている。それが「公的介護保険」だ。
住民参加型在宅福祉団体数の推移

 実は、この社会保険方式が選択されたことは、特に「高齢者介護に関わる草の根NPO」(市民参加で在宅福祉サービスを低額有償で提供している団体。【図2】にとって、きわめて重要な影響をもたらすものと言えそうだ。というのも、この方式の採用により、これまで行政と社会福祉法人が中心的な位置を占めていた福祉サービスの世界に、草の根のNPOが参画する機会が大きく広がりそうだからだ。

 というのも、今回の介護保険法案では、二つの方法で草の根のNPOが介護保険制度のシステムに参画できることになっているからだ。

 一つは、草の根NPOにも「指定居宅サービス事業者」としての指定を受けられる可能性が高いこと。もう一つはこの「事業者」の指定を受けずとも、それぞれの市町村の判断で「特例サービス費」の支給を受けられる道が開かれていることだ。

 介護保険法案では、保険で保障する介護サービスの担い手を社会福祉法人だけでなく、一定以上の質でサービスが提供できる担い手すべてに広く公開している。つまり、生協でも、医療法人でも、企業でも、そして草の根NPOであっても、ともかく質の良いサービスを提供できるなら、介護保険の給付対象になれるのだ。これまで、行政から措置費や補助金を得られない草の根NPOなどは、経費の全額を受け手に請求せざるを得なかったが、介護保険制度が創設され「指定居宅サービス事業者」の指定を受けられれば、経費の?割は保険でまかなう仕組みに変わる。

 このような仕組みは、見方を変えれば「サービス提供の量に応じて公的に補助金を出す仕組み」とも言える。介護保険では保険加入者がサービス提供者を選べるから、介護サービスを求める人たちの支持が得られる団体ほど、保険金の支給が多くなる。これが「社会保険方式」が介護サービスの世界に「市場原理」「競争原理」をもたらすといわれるゆえんだ。
終末、早朝などにも対応するNPO

 これまで、介護に関わる草の根NPOは、ボランタリーな意欲を核にきめの細かいサービスを追求してきた。【図3】にあるように、早朝や夜間、週末にもニーズに応じるNPOは極めて多い。もちろん民間ならではの効率的なコストでのサービス提供がなされてきた。

 にもかかわらず、こうしたNPOの取り組みは、法律に基づかない自発的な(勝手な)活動として、これまでは公的な制度の外側で「独自の戦い」を余儀なくされてきた。しかし「公的介護保険」の創設によって、ようやく制度的にその活動が「認知される」とも言えるわけだ。

 ところで先に介護保険の対象となるとは、 「指定居宅サービス事業者」の指定を受けるか、 「特例サービス費」の支給対象となるか、ということだと説明したが、これはどういうことなのか。これをもう少し詳しく説明しよう。

 まず、「指定居宅サービス事業者」の指定を受けるとは、まさに介護保険でカバーする介護サービスの正式の担い手になることだ。これは健康保険制度における「保険指定医療機関」に対応するものと言える。

 この指定を受けるための条件の一つは「法人格の取得」。どんなに良いサービスを提供できても、法人格を持っていないと介護保険の正式のサービス提供機関とは認められない。こうなると、従来の公益法人制度の下では、草の根NPOの参画はきわめて厳しいことになってしまう。

 しかし、現在、臨時国会で継続審議となっている「市民活動促進法案」(通称、NPO法案)が成立すれば、草の根のNPOが法人格を取得することはかなり容易になる。つまりNPO法案の成立の可否は、介護領域における草の根NPOの立場を大きく左右するものでもある。

 ただし、法人格をもっていない任意団体のNPOであっても、介護保険の給付を受ける道が開かれている。それが「特例サービス費」の支給だ。これは、現実にNPOなどが介護サービスを提供した後、市町村の審査で適切なサービス提供がなされたと認められれば、特例的に介護保険を支給しようというもの。介護サービス提供の現実をふまえた仕組みで、これにより任意団体のNPOも結果的に「指定居宅サービス事業者」と同様の扱いを受けるとも言える。

 しかし、後払い(償還払い)だから、一端は保険の給付が受けられず、サービスの受け手は費用の全額をNPOに支払ってもらわなければならない。この点で、かなり面倒だし、正規の「指定事業者」に比べ不利な立場になる。やはり、法人格を得て、正規の「指定事業者」になれることが必要だ。

 本稿を執筆している十月二十日現在、「泉井発言」などの混乱でNPO法案の国会審議は一向に進んでおらず、最悪の場合、廃案の懸念もとりざたされている。参議院議員の皆さんには、今後、爆発的な増加が予想される介護ニーズにきめ細やかで効率的な対応をするためにもNPO法案の成立が求められているということを理解していただき、早急に審議を始めてほしいものである。
公的介護保険への対応

 ともあれ、このように「公的介護保険」の創設は、高齢者介護問題に取り組むNPOにとって極めて重要な問題だ。実際、【図4】で分かるように、制度の詳細が見えないことなどから方針を決めていないNPOが六割あるとはいえ、介護保険制度の外側で独自に活動しようと決めているNPOは一割に満たない状態。 また、在宅福祉に取り組むNPOの中で積極的に重い介護にも取り組もうという団体が急速に増えてきている【図5】。介護保険を意識した動きとも見える。

内容的介護サービス実施状況の推移

 保険料を公的(強制的)に集めることで介護財源を確保(保障)しながら、その給付にあたってはNPOにも門戸を開き、「市場原理」「競争原理」による効率的で多彩なサービス形態を誘導しようという「公的介護保険」。それは、官と民との新たな連係システムの一つのモデルともなりそうな仕組みだ。制度から若年の障害者が除かれているなど問題点は少なくないが、ともかく新しい制度を創設し、まさに草の根レベルで改善を進めていくことが必要だろう。

 また介護保険という公的資金を受ける立場にたつことになれば、これまで以上に活動の質の向上や運営の透明性が求められるようになる。草の根NPOにとって、新たなチャレンジが始まることは間違いない。 編集部「介護保険」取材班


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