Vマーク青 月刊ボランティア〜Internet Edition〜
このホームページは大阪ボランティア協会のボランティア・スタッフ“むくどり”が、運営しています。

No.329 / 97年10月号

[前のページに戻る]


あんぐる

「大阪ボランティア情報ネットワーク」事業にみる、行政とNPOの協働

大阪ボランティア協会発

 大阪ボランティア協会では、1994年から、ボランティア募集情報をデータベースにして他団体や企業、学校などに検索システムと募集情報データを配布する「ボランティア情報システム」事業を実施している。前例もなく、先駆的な事業のひとつだったが、やがて問題が生じた。

 ひとつは、協会が独自に集めるボランティア活動情報には限りがあることだ。従来からの接点の多い福祉分野が中心で、国際・環境など福祉以外の分野の情報がどうしても手薄になる。地域で活動する小グループの情報も手に入りにくい。ニーズの異なる、個々の利用者にとっては不便である。

 もうひとつの問題は、財政問題だ。何百件ものデータの維持・管理は、ボランティアベースだけでできることではなく、日常的に管理にあたる有給スタッフがやはり必要だ。その人件費や事務費等のコストは、企業・団体からの協賛金とデータ利用料でまかなっているが、実はデータ利用料の徴収と情報活用の推進は両立しにくい。つまり、インターネットの普及などの中、活動情報が多くの人の目にふれるためにはデータの利用をできるだけフリーにするべきだが、そうするとデータの維持に要する財源が確保できない。だが財源を確保するために利用料を徴収してデータを囲い込むと、情報の活用が限られる。

*          *

 これらの問題を解決するために、協会は大阪府・大阪市のボランティア担当者と府社協・市社協と協会の五者が定期的に情報交換や検討を行う定例会の場で、「ボランティア情報システム」事業に対して他団体との協働と公的支援を求めた。これが、「大阪ボランティア情報ネットワーク」事業の発端である。

 その結果、事業実施を検討するための大阪府委託調査機関として、96年度に府社協、市社協、国際団体、環境団体と協会をメンバーとした「大阪ボランティア情報研究会」が発足。協会が事務局を担い、96年秋には、募集情報の収集、整理、データ管理、募集団体や情報サービス拠点への対応を担う「ボランティア活動情報センター」設立と、決定機関である「運営協議会」設立を提案した。この提案を受けて、大阪府の補助事業として決定したのが「大阪ボランティア情報ネットワーク」で、府社協が事業主体となり、協会は情報センターを府社協から委託されるという形で、行政を含めた協働事業の実現に向かうことになった。

*          *

 従来、協会が行政から受託している委託事業としては大阪市のコーディネート事業委託がある。行政との協働では、監督の問題がつきまといがちだが、一定の実績をあげている限り、事業推進にあたって特に指導や管理がなされることはほとんどない。とはいえ「大阪ボランティア情報ネットワーク」では、新規事業の立ち上がりということもあって、かなり細かい点まで行政との調整が発生した。

 まず、行政内部では、事業実施にあたって、企業や助成財団から支援を受けるときとは比較にならない複雑なチェック機能が働く。NPOにありがちな、「いいことだからやろう」という直観的な判断は通用せず、その事業に税金を使う正当性と事業の担い手すなわち税金の支払先の選択の妥当性を客観的な証拠で示さなければならない。

 また、リスクを犯せない。例えば、ボランティア募集情報をネットワークに提供する団体やグループは、予め必要書類を揃えて一定の活動推進機関の推薦を受け、運営協議会で確認されて登録されていなければならない。反社会的な団体や営利目的の団体を排除するため、事前に周到な予防策を用意するのである。

 明確な「線引き」もまた、行政には必要なことである。大阪府民のために必要なボランティア情報として、どの範囲まで認めるか、予め客観的な線を引かなくてはならない。

*          *

 これらの調整と実施後の手続きに要するエネルギーと時間とコストは、NPOの通常の事業実施時には考えられない膨大なものである。NPOが行政と協同する時、このギャップにしばしば直面すると思われる。NPOにとっては行政は硬直的で手続きばかりに時間がかかるし、行政にとってはNPOはいいかげんで信頼しがたい存在であるかもしれない。

 しかし、実はこの差こそが行政とNPOのそれぞれの存在意義であり長所である。入念に平等で公正なサービスを提供する行政と、後から少々問題が生じようとも最小のコストで目に付いた部分からすばやく対応するNPO。ともに公的なサービスを志向しながらも、手法と成果は大きく異なる。行政に対して、現実のあり方を全て肯定することは問題だとしても、本質的には行政は平等と公正の確保に力を注ぐべきことは認めなければならない。

 他方で、最近はやりの「行政のボランティア活動支援」に「行政にできない公的サービス」への期待が高まっている。だからといって、行政は短絡的に財政支出があるから行政の手法を踏襲することを求めるのではなく、NPOの手法で「不公平でリスキーだが対応が早くきめこまかい」公的サービスが実現されることを支援するべきであろう。

 公的なサービスのうち、どの部分は時間とコストをかけて平等で公正なサービスとし、どの部分はきめこまかく対応が早いが不平等になりかねないサービスとするのかは、大局的には市民の判断によるところだが、具体的な事業推進にあたっては行政とNPOがそれぞれの特質を理解した上で、効果的な役割分担を適切にすることが大切である。

 「ボランティア活動情報の収集・提供」という間接事業が、どの程度あるいはどの部分で両者の良さを生かすべきかは判断の難しいところであり課題も多いが、協会では行政の公平さを確保しつつも、「NPOの自由さ」を生かせる前向きなパートナーシップをめざしている。

事務局 飯田 真友美


前のページに戻る

社会福祉法人 大阪ボランティア協会