Vマーク青 月刊ボランティア〜Internet Edition〜
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No.325 / 97年5月号

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《特集》 政治と向き合う市民活動

「市民活動を支える制度をつくる会C's」の取り組み
 昨年の総選挙は歴史的低投票率。政治不信も極まれり、という状況が続いている。しかし、私たちの暮らしに「政治」が果たす役割は、決して低下しているわけではない。社会問題と関わる上で「政治」を敬遠していては、その限界は明らかだ。
 では私たちは、どう「政治」と向き合っていけば良いのだろう。
 「NPO法案」の審議が本格化しようとしている今、果敢に「政治」に向き合ってきた市民団体「シーズ」の取り組みを通じて、そのあり方を探ってみた。

 パーティーでの心構えに「3Sを話題にしない」というのがあるそうだ。3Sとは、政治、宗教、商売(ないしは性)。要は対立をあおりやすいテーマは避けるべしだ。

 このような配慮は市民活動でも大切・・・、とされてきた。市民活動の入門書などで「活動に宗教や政治を持ち込まない」といったフレーズを、ときたま見かけることもある。

 しかし、この話、よく考えると変な話だ。ボランティア活動は社会的な課題に関わる活動。しかし社会問題の解決において政治性をおびないことなどあるだろうか?程度の差こそあれ、日々の営みで「政治」と関わりないものなどないはずだ。

 それどころか、我々は主権者なのだから、その意味ではもっと「政治」と向き合っていくことが必要だろう。

 そこで、政治家との直接交渉に果敢に取り組む活動を取材してみた。

秘訣(1) 具体的提案を先に示す

 「先手必勝! 先に提案したもんが勝ちやねん」

 「市民活動の制度をつくる会(シーズ)」の事務局長、松原 明さん(37歳)は、政治と向き合う活動の極意を早口の大阪便でこう語る。松原さんは注目のNPO法案で国会議員や衆議院法制局との交渉の最前線に立つ人物だ。

 それにしても「先手必勝」とは、どういうことか?この言葉を理解するには、この数年間の松原さんの取り組みをたどる必要がある。

 松原さんが企業の経営コンサルタントを辞め、市民活動促進の法制度整備に関わり出したのは93年。自由人権協会、生活クラブ生協などの研究会に参加し、法人格取得での厳しい規制や税制度の問題などの課題整理を進めた。

 こうした中、94年3月には、総合研究開発機構や自由人権協会などから法制度整備に関する研究報告書が次々にまとめられ、これらの成果をふまえ、4月に「市民活動を支える制度を考える」と題した集会を開催した。この集会は固いテーマにもかかわらず二百人を越える参加者を得、関心の広がりと改革への意欲の高まりが確認された。そして集会参加者らを中心に制度改革への戦略を練り合い、94年11月、NPO法を作るための市民団体「シーズ」設立となった。

 実はこの時点では「21世紀には市民活動が自由に法人格を取得でき、課税上の優遇措置が幅広く適用される社会にしたい」という計画で、国会議員へも少しずつ働きかけていく心積もりだった。

 しかし95年1月、阪神・淡路大震災が発生。ここでのボランティアの活躍に世間の注目が集まり、政府や各政党で急に市民活動支援の法制度を整備しようという気運が高まった。議会や行政が、ようやくここで「シーズ」に追い付いてきたのである。

 NPO法案の特色は、ここにある。つまり「シーズ」をはじめとする市民活動サイドの取り組みが、行政や議会の動きに先行したのだ。

 この市民活動サイドの先行、つまり先手をとったことは重要だった。NPO法案の策定で「シーズ」などが立法にあたって理論的な先導役を果たすことになったからだ。実際、95年5月に各党議員を招いて開いたシンポジウムなどでは、「シーズ」の研究実績が土台となった発言が大半だった。このテーマでは「シーズ」が国会議員の何歩も先を行っており、「シーズ」に学んで発言する議員が少なくなかったからだ。

秘訣(2) 隙間のニーズを見つける

 「結局、どうニッチ(すき間)を見つけるかなんです」

 昔とったきねづか。経営コンサルタントのキャリアが顔を出し、松原さんは企業経営用語を多用する。しかしその内容は興味深い。いわく
 「法律は道具でしかない。ノコギリやクルマと同じようなもので、国会というのは工場のようなもので、政党とはメーカーです。NPOが政党という大メーカーに先行して現行制度のすき間にあるニーズを見つけ、売れる商品=実行可能な具体的な対案を提案していけば、マーケットを支配(主導権を握る)ことができる。政府が先行して提案したものに反対するだけでは、所詮は相手のペースでことが進んでしまう」。

 経済の世界で生きてきた人間ならではのリアリズム。しかし宿命論者ではない。要は“理想を忘れず夢想せず”。

 「現実を“与件”、つまり与えられた環境として一旦は受け入れ、それを前提とした上で改善の戦略を練る。政党や政治家にしても、肌にあわないと感情的に批判していているだけでは何も変わらない。相手の特質を見極め、それをふまえて効果的な運動論を練ることが大切なんだ」。

 これは企業や行政との付き合い方も含め、交渉全般に通じる普遍的な原則だろう。

 利益追求を至上命題とする企業を変える最も効果的な方法は、企業倫理の確立を唱えることではなく、企業が変わることで利益が上がる構造を作ることだ。つまり私たち消費者が、たとえば環境に優しい生産活動に配慮する企業の商品を意識的に購入していくことだ。いわば、相手を理解することで、相手の論理を逆手にとる戦略立案も可能になる、というわけだ。

秘訣(3) 政党の特性を理解する

 相手が政党の場合、具体的には次の四点を理解すべきだと松原さんは指摘する。

 まず政党は何らかのイデオロギーを持つ団体だということ。それゆえ、市民が何かの政策ニーズを政党に持っていくと、各政党のイデオロギーや政策志向によって、その政策ニーズは違ったものに加工されやすい。

 次に政党は、どのような団体に勢力を延ばすことが自分の政党の利益になるかを常に考える存在だ、ということ。

 三つ目は、政党は利益団体や圧力団体を好む。原則論より利益団体の存在が政策を左右しやすい、ということだ。

 そして最後に、政党は政局を中心に動く、ということ。政局を無視して運動を進めても実効は得られない。

 「政治」と向き合う時、以上の政党の特性をふまえた冷静な情況判断が必要になる。

*          *

 先の駐留軍用地特別措置法の採決にあたり、ある政治家が「大政翼賛会」を持ち出して反響を呼んだ。一国に一つの政党しか認めない、つまり意見の違いを認めない社会の悲劇的結末を象徴するものとして、大政翼賛会が持ち出されたのだ。

 この教訓から導き出されるのは、政治とは意見の相違を前提とするということだ。この意見の相違を調整する政治活動には、当然、妥協が伴う。つまり政治とは、本意でない結論に同意していくプロセスともいえる。

 このドロドロとした利害調整の現場に関わることはしんどいことだ。しかしそこで逃げ出さないタフさが、市民活動にも求められると思う。いずれにせよ私たちは「政治」と無縁の存在ではいられないのだから。

 「シーズ」(TEL:03・5210・3526)や、5月9日に設立される「市民立法機構」(TEL:03・3234・3844)などの政策提言活動は、市民が主権者となる社会を築く不可欠の活動なのだ。

(文責・早瀬 昇編集委員)


国会に注目を!

あなたの活動に関わる法案がこんなに

 「政治」と向き合う第一歩は、まず知ること。元来、あらゆる法律はボランティア活動と無縁ではないが、特に今国会で審議中の以下の法案は、私たちの取り組みに大きく影響するものだ。


NPO法案

 市民活動団体が法人格を取得する際の規制緩和を図ろうとする法案。本来的には、すべての市民活動にとって深い関わりがあるが、特にサービス提供型の団体で行政や企業とも連携し、安定的な事業展開を図ろうという団体の場合、法人格の有無は大きなポイント。この法案成立により、活動が進めやすくなる可能性がある。

 連立与党、新進党、共産党が、それぞれに議員立法で法案を提出。ただし大日本帝国憲法下の百年前に制定された民法の公益法人規定がネックとなり、 法人格をとれる団体を、連立与党案では活動内容から、新進党案では活動基盤となるエリアの面から制限している、など問題も多い。


介護保険法案

 新たな社会保障制度を創設するという点で、一般国民の関心はNPO法案を大きく上回る重要法案。介護保険法案に市民修正を求める「介護の社会化を進める1万人委員会」(TEL:03・3235・1667)など各界で活発な論議を呼んでいる。

 ところで、実はこの法案は高齢者の在宅サービスに取り組む市民団体の運営に大きな影響を与える法案でもある。というのも「指定居宅サービス事業者」の指定を受ければ、NPO(特に介護系の有償サービス団体)の提供するサービスに介護保険が給付されることになるからだ。

 つまり運用次第では、介護系NPOの活動費を公的に確保する仕組みが生まれる可能性がある(ただし介護報酬の水準は低く抑えられる危険性がある)。

 なお「指定居宅サービス事業者」の指定を受ける要件の一つが法人格を持つこと。この点でこの法律はNPO法案と関係している。


児童福祉法改正案

 保育所の自由契約化などの他、多くのボランティアが活動する児童福祉施設の事業内容を大きく変える点でも注目される。特に教護院は「児童自立支援施設」に、母子寮は「母子生活支援施設」に、名称も変わり、これに伴い対象者の幅が広げられる。大幅な制度改革にもかかわらず、昨年三月に公式に議論が始まって、わずか一年で法案化されたことなど、検討不足との意見もある。


臓器移植法案

 誰もが迎える「死」の姿を変えかねない法案だが、臓器移植はボランティア活動の一形態であり、その意味でも注目される。

 ボランティア活動の原則に則り臓器提供者の意志を書面で確認するという点は共通だが、「脳死=死」とする法案と、「脳死を死と規定しないが脳死体から臓器を提供できる」とする法案が対立している。

*          *

 この他にも、私たちの活動と関わりの深い法案は少なくない。また法案化はされていないが、教員採用試験の受験資格に介護体験を義務づける制度の導入構想も。国会に注目しよう。


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社会福祉法人 大阪ボランティア協会