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市民活動情報誌『月刊ボランティア』1997年1・2月合併号(通巻322号) 目次に戻る
ボランティア・NPOが開く市民社会
     日本NPOセンター設立記念フォーラム    
    「これからの社会とNPOの役割」から
月刊ボランティア編集部

 昨年、「NPO」(民間非営利団体)という言葉が急速に普及した。この言葉は活動領域の違いを超え、無償のボランティアと有償市民活動、市民団体の専従職員をも同じ土俵に乗せる受け皿となる言葉だ。
 そのNPO全体の活動基盤整備をめぎす民間機関「日本NPOセンター」が、昨年11月22日に発足した。センターは日本のNPO活動の発展に大きな役割を果たすものと期待され、当協会も専任職員の派遣などで活動を応援している。
 本号では設立記念フォーラムでの同センター事務局長、山岡義典氏の基調報告を紹介する。これは単にセンターの方向性を示すだけでなく、市民活動に関わる私たちの指針となるものでもあろう。


 皆さん、こんにちは。山岡です。今日は日本NPOセンター発足というこの時期に、覚悟を新たにして、私たちが何をやらねばならないかということをお話させていただきたいと思います。

 実は今週発覚した不祥事を見ていて、我々はもっと怒らねばならないのではないかと強く感じています。言うまでもなく厚生省の岡光次官らをめぐる汚職疑惑です。私はここに現代という時代の構造的な問題を見て取りました。

NPOの世界にも迫る官民癒着

 つまり「官民癒着」の構造が密かにNPOの世界に忍び寄りつつある。NPOの世界を汚染しつつある。今回問題となっている彩福祉グループに属する祉会福祉法人が本来の意味でのNPOといえるかどうかは分かりませんが、元来、祉会福祉法人はNPOです。私たちのセンター設立に大きな役割を果たした大阪ボランティア協会も社会福祉法人。まさに日本のNPOの三十年に渡る先駆者です。本来、社会福祉法人はNPOでなくてはならない。

 しかし、このNPOの世界が、ああいう形で癒着の構造の中に組み込まれてきているんです。

 社会の高齢化が進み、たくさんのお金が高齢者福祉につぎ込まれて来れば来るほど、たくさんのNPOがこの分野で活躍しないといけなくなります。しかしその時、今のままなら、長年にわたって築かれてきた日本の官民癒着の構造が、そのままNPOの世界にやってくることになる。

 我々はそれに対して「そうではない、NPOの世界はこうなんだ!」という姿を、この日本の社会で実現しないといけない。そういう思いをヒシヒシと感じます。

 この癒着構造は報道で次々に明らかになってきました。

 私たちは、行政の第一セクターと、民間営利の企業セクターである第二セクター。そして民間非営利・NPOによる第三セクターの三つのセクターで社会をとらえるわけですが、この三つのセクターで今まさに「癒着のトライアングル」が出来ようとしている。ほっといたら出来ちゃう。そういう時代を迎えているわけです。この「癒着のトライアングル」を「協働のトライアングル」に出来るかどうか?

 私は企業は非常に大切だと思っています。もちろん行政も大切。自治体も大切。すべて大切です。

 しかし、これらのセクターとNPOが協働することがもっと重要です。重要なんですが、えてしてそれがいつの間にか癒着になる。そこで癒着ではない関係を、今後どうやって作って行くか? これがこれからの課題です。

 私たちは「パートナーシップ」という言葉を使います。しかし「パートナーシップ」は黙っていると、いつの間にか癒着になります。

 癒着とパートナーシップはどこが違うか?一つは「公開されている」ということです。癒着というのは公開されていないんです。公開されたら癒着とは言いません。公開されていることが一つの鍵です。

 これからの企業とNPOと行政の関係は、公開された関係でないといけません。

 癒着とパートナーシップのもう一つの大事な違いは、癒着というのは両方の利益のためにだけ結びつくんですね。岡光某と小山某とは、二人の利益のためだけに結びついた。だから癒着なんです。「パートナーシップ」はそうじゃない。AとBという人が一緒になって、Cの利益にもなるようなことをやろう、そのためにはAもBも犠牲になろう。何かを出し合ってCのためにもなることをしようというのが「パートナーシップ」なんです。AとBだけが儲かろうというのは「パートナーシップ」とは言わない。そこが基本的に違います。

 我々が今やろうとしているのは、第一セクター、第二セクター、第三セクターの「本当のパートナーシップ」を作ることです。

 それは「対等のパートナーシップ」という言い方があるように、対等でなければいけません。代表理事の一人である播磨靖夫さんは「緊張あるパートナーシップ」と言われています。これもいいですね。

 この実現のためには、まずNPO自身が強くならなければいけない。たくましくならないといけない。たくましいNPOをどうやって作るか。そこで基盤強化ということです。そのためにこのセンターは存在するんだと思います。

 つまりNPOセンターの目標は「汚職のない世界を作りましょう」というようなみみっちいものではありません。もっと大きい課題です。NPOセンターが目指すもの。それは一口で言えば「新しい市民社会」ということです。

 私は日本には「市民社会」は出来ていないと思っています。出来てないから今回のようなことが起こるわけです。

活発な市民活動が作る市民社会

 しかし「市民社会って一体どんな社会なの?」と聞かれますと、なかなか具体的なイメージは出てきません。そこである時、「市民団体がたくさんある社会です」と言いましたら、割に納得していただけました。「儲けにならないことをやっている色々な活動や団体が、たくさんある社会です」と言うと、「ああ、わかった」と言われたわけです。

 具体的なんですね。個人の自立が云々というと、よくわからない。しかし、市民団体がある社会とは、「やろう」という思いをもつ自立した個人が色々いて初めてそうなるんですね。「市民活動がたくさんある。たくさんの思いと価値観がぶつかり合い、そして時には協働して一緒にやろうという社会。その中にあって、そういうものに支えられて企業があり、行政がある社会」ということです。

 では、なぜパートナーシップが必要なのかを考えたい。

 NPOだけがしっかりとすればいいのか? 市民団体がしっかり育てば市民社会は出来るのか?

 私はそうは考えません。市民社会作りはNPOだけでは出来ません。NPOとの協働によって行政が変わり、企業が変わる。NPO自身も変わる。三者がそれぞれに変わることによって、新しい関係が生まれ、そして初めて市民社会が出来るのです。

たくましいNPOを育てる環境

 この市民社会構築のプロセスは、NPOが育ち、たくましいNPOに生まれ変わっていく。そして行政が変わり企業も変わるということです。

 ここでNPOが育つ可能性と限界があります。NPOが育つ可能性は、たくさんある。多くの人の志、それとボランティア。そして寄付です。

 寄付については、ボランティア活動が語られるほどには語られないのが、非常に大きな問題だと思います。

 実は、つい先日、寄付の文化を勉強しようと「寄付の文化研究会」を作りましたが、我々NPOサイドは寄付について本気になって考えないといけない。個人の寄付の文化はあるのか、ないのか分からない。そもそもいったいどれだけの個人が寄付しているのかも分かりません。統計もないのですから。

 でも我々は「どうも寄付の文化はないだろう」と話しています。仲間うちで話してい ると「会費貧乏」という世界がある。仲間内では何十口と色々な所の会員になって会費 を払っている。しかし、払っていない人は払っていない。寄付が一部の方に閉じている んですね。

 日本中で一億人が一万円ずつ寄付したら、それだけで一兆円になってしまいます。実際は一兆円なんていらない。その百分の一でNPOはジャンジャン育つんです。問題はこの寄付の文化をどう育てていくかです。

 この寄付の文化によって専従スタッフが支えられる。その専従スタッフが多くのポランティアと協働する。それによってNPOは育つんです。

 その寄付と専従スタッフの話が日本のNPO論議では薄い。この間、ボランティア論議はすごくなされた。しかし、本当にボランティアがボランティアとして有効な活動をするには、ボランティア論議だけでなく、寄付と専従スタッフについて、もっと考えなければならない。

 それと、団体としての自己管理能力、自己成長能力をどう作っていくかです。

行政との新たな関係を目指して

 その一方で、行政が変わり、企業が変わることです。

 行政は、古典的には次のような形で変わるわけです。

 行政は法律によって動く。法律は議会が作る。だから議会が変わり、法律が変われば行政は変わるはずです。だからいい議員を選べば、いい法律を作ってくれるだろう。いい法律を作ってくれたら、それによっていい行政が行われるだろう。それが民主主義実現の道だと、我々はずっと考え取り組んできた。

 日本には民主と名のつく政党が三つもある。民主とは市民が主となることです。その民主という名のついた政党が三つもあるんだから、民主の大安売りなんですが、しかし現実には議会が自ら法律を作る能力はない。なんとかしなくてはいけないんです。

 実は今日、この会場の近くで「市民立法機構設立準備シンポジウム」が開かれています。「市民立法機構」。まさにこれからは市民自身が立法の力を持ち、議員に働きかけ、議員立法で新しい法律を作っていく。官僚立法機構は霞が関にたくさんありますが、市民立法機構を作ろう。これは非常に重要な働きです。

 そういうことも含め、議会の立法過程を通じて、行政は変わるという理論がある。これは確かに信じないといけない。我々はそういう信念を持たないといけません。

 それから行政が変わるのは、特に自治体の場合は首長ですね。首長選挙で首長が変われば自治体は変わる。

 それだけじゃない。職員が変わることによっても変わるはずです。行政を実際に担っている担い手の意識が変わることによって変わる。

 要は選挙を通じて議員が変わり、首長が変わり、職員一人ひとりが変わることによって、行政は変わるだろうと思ってきた。そして変わった所もあったかもしれない。

 しかし、それだけでは行政は変わりえない。何によって変わるか? 私はNPOとのパートナーシップによって変わる。新しい血が入り新しい対応が生まれる。その中から行政は変わると思います。

 実際、現在多くの自治体が市民活動との関わりを模索しています。今後、行政とNPOとの新しい関わりが出てくるでしょう。

 行政職員が市民団体に出向することがあるかもしれない。今までの天下りではない関係が生まわるかもしれない。あるいは市民団体の人たちが自治体に嘱託であれ臨時であれ本職であれ、色々な形で入り込むかもしれない。多くの流れがあっていい。

 あるいは行政職員が夜は市民団体で必死で活動をしているという例は少なくないんですが、そういう役所と市民団体との直接の触れ合いを通じて変わっていくと思います。

 このような点でパートナーシップは重要です。パートナーシップがないまま行政独自では変わり得ない。首長が変わっても議会が変わっても職員が変わっても、それだけでは変わりきれない。外部のNPOの力によって、NPOとのパートナーシップによって、行政が変わり得ると払は確信しています。

 企業もそうです。企業も変革の可能性を秘めています。企業は何によって変わるか? 伝統的な理論によれば、消費者が変われば企業も変わるはずなんです。消費者の意識が変われば企業は変わる。確かに消費者の意識は変わってきたと思います。

市民社会に見合う企業を育てる

 それから、論理的にいえば経営者は万能ですから、経営者の意識が変われば変わるはずです。また従業員の意識や労働組合が変われば企業は変わる。これらがオーソドックスな企業変革の契機です。これらは今後も、そうだと思います。消費者や労働者が企業を変える力にならないといけない。

 しかし、やはり企業もそれとはまったく別なNPOとの関わりを通じても、変わらざるをえない。そうでしか変わりえない要素も多分にある。

 そこには、直接社会貢献という窓口を通って変わることもありますし、それ以外にも様々な関わり方があります。企業活動を監視するという関わりもあるかもしれません。そういうことも含め、企業とNPOが新しい関係を作ることによって企業だけでは変われない変化がくるのです。

 このようにNPOだけが強くなるのではなくて、NPOとパートナーシップを組むことによって企業も社会も行政も変わり、それぞれが変わって新しい関係が作られ、市民社会が生まれる。

 この大きな夢をご理解いただき、一緒にNPOセンターを育てていただければと思います。


「日本NPOセンター」の概要

 「日本NPOセンター」の発足にあたっては、全国のNPO関係者ら235人が発起人に参加。11月22日の設立総会で、播磨靖夫((財)たんぽぽの家・理事長)、星野昌子(日本国際ボランティアセンター・特別顧問)、山本正((財)日本国際交流センター・理事長)の3氏の代表理事、山岡義典、早瀬 昇(大阪ボランティア協会・理事)の2氏の常務理事の他、各分野のNPO関係者や研究者、それに経団連、東京商工会議所、日本青年会議所などの経済界の関係者ら36名が役員に選ばれた。

 センターの運営費は会費、助成金、事業収入などを核とし、民間主導の運営を志向しているが、すでに30社を超える企業(年会費1口10万円)、約30のNPO(同1万円)、100名を超える個人会員(同1万円)が入会している。なお議決権を持たない準会員(同5千円)のシステムもある。

 事業の柱は、(1)情報のキーステーション、(2)コンサルテーション・コーディネーション、(3)人と組織のネットワーキングの拠点、(4)交流・研修のフォーラム、(5)調査研究のシンクタンク、の5つ。当面、2月から「NPO塾」(仮称)を開講するとともに、情報誌「日本NPO通信」を発刊。また6月には横浜で「第1回・NPO全国フォーラム」の開催を計画し、準備を進めている。またNPOの運営や企業などとのパートナーシップ形成についての相談などにも応じている。

<連絡先>
113 東京都文京区本郷 6-17-9、本郷綱ピル8階
  (社)社会開発研究所 気付
  TEL O3-3815-0656 FAX 03-3815-7543

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Volo(ウォロ)は大阪ボランティア協会が発行する 市民活動総合情報誌であり、オピニオン誌です。
『月刊ボランティア』創刊1966年。『Volo(ウォロ)』と誌名を変更して2003年新創刊。一貫して「市民が主体的に関わることの大切さ」を伝えてきました。分野・セクターを越えた社会的課題に市民がいかに関わるかを独自のアプローチでタイムリーに発信しています。