人の数ほど悩みがあると言う。何かに悩んで悶々とするということは、
誰でも経験することだろう。そんな時、あなたはどうしているのだろうか?じっと耐える。一人で解決しようとする……。もう一つ、悩みを他人と分かち合うという方法がある。
セルフヘルプグループは、同じ悩みを抱えた人々がお互いに支え合うという目的で作られたグループである。悩みの種はどこにでもある。心の問題や人間関係、病気、障害など悩みの数ほどセルフヘルプグループが生まれる契機がある。
大阪セルフヘルプ支援センター(以下、センター)は、そのようなグループを支援するために、一九九三年に設立された。センターは、セルフヘルプグループの意義や可能性を様々な人達と考え、またグループ同士が知恵や体験を分かち合う場として、毎年セミナーを開催している。
今年のセミナーのテーマは「セルフヘルプNOW グループが生まれる時」。去る十一月九日(土)、大阪市立社会福祉研修センターで開催された。参加者は約六十名。一般市民や当事者、専門家、研究者などセルフヘルプグループに関心を持つ幅広い人々の参加があった。
トークセッションでは、産声を上げたばかりのグループから活動歴の長いグループまで。十のグループのメンバーが、結成の過程や自分にとっての意義などについて報告した。その報告を手掛かりに、セルヘルプグループの作り方、支え方を探ることにしよう。
深い悲しみ、絶望がグループ作りのエネルギー
センターは毎週土曜日十四時から十八時まで、大阪ボランティア協会の一角に事務所を置き、電話相談を行っている。相談は多い時でも一日二、三件程度。しかしながら、アルコール依存症患者や登校拒否の子どもを持つ親などから実に様々な相談が寄せられる。
その中から浮かび上がってきた問題の一つが、グループ作りへの「支援」のあり方だ。大阪だけでも五百近いグループが活動していると言われる。しかし相談を受けても適切なグループを紹介できない場合がある。
グループ作りを希望する人には、「登録」を行い、グループ作りの支援をしている。といっても、マニュアルのようなものはない。実際のグループ運営は実に様々だ。名簿も作らない。世話役も置かない。ただ、決まった日時に決まった場所に、集まりたい者だけが集まるというグループから、例会は開かずに通信と会報だけのグループまである。
目指す方向についても様々だ。メンバー同士の個人的な交流を第一に考える「趣味の会型」グループから、社会に向けて問題を告発し、具体的な解決に取り組む「アクション型」のグループまである。そのことは、同じグループ中のメンバーについても言えることだ。
そこで、原点に返ってセルフヘルプグループ体験をもう一度紹介してみよう。そして、いろいろな体験から、自分達に役立つと思うものを引き出せばよい″、そんな意図から今回のセミナーのテーマが選ばれた。
既にあるグループに参加するのはたやすい。自分で新しくグループを作ることはとてもエネルギーのいる作業だ。会の目的を明確にし、運営方法を決め、仲間を集める。そんな大変な作業に人を駆り立てるエネルギーは「深い悲しみ」、「絶望」から生まれる。
セミナーに参加した当事者の多くが止むに止まれぬ気持ちから、グループ作りに踏み出した。震災で子どもを亡くした。子どもが不登校になった。原因も治療法もわからない難病にかかった等々。辛い問題に直面し、同じ悩みを持つ人との出会いを強く求める気持ちが出発点だ。
センターのスタッフでもあり、自らも「口唇口蓋裂児を守る親の会」に参加している中田智恵海さんは、「まずやってみる。同じ思いを抱いた人が二人いれば、それでグループは作れる」と気軽に一歩踏み出すことを強調した。
「どうしてもグループが欲しいという思いが強ければできる。つぶれたらつぶれた時のこと。ニーズがなかったということにすぎない」。結果より、グループを求める自分の気持ちを大切に、ということだ。
ある参加者は「十人ぐらいの人に、こんな会を作ってみたいと話してみた。中には、そんなもの作ってなんになると言う人もいた。でも、多くの人が、そうか頑張れと励ましてくれ、いろんな情報を提供してくれた。まず声を挙げることが大事だ」と語った。
アクション型か、趣味型か 論争引き起こした運営のあり方
グループを作りたいと思えば、まず、大阪セルフヘルプ支援センター(※注)などに電話して登録する。新聞などに「○○の会を作りたい。参加者求む」という紹介記事を載せてもらう。一人でも参加者希望者があらわれれば、まずは目標達成。活動内容もできることからやってみる。あるグループは、新聞に会の紹介記事を載せてもらい、反響の手紙をそのままコピーして会報に仕立てている。例会を持ち、一緒に遊びに行くことだけでもメンバーにとって大きな励みとなることもある。
活動日的として「アクション型」を志向すべきか、または「趣味の会型」か、については、セミナーでも、ちょっとした論争を引き起こした。しかし、本来、自発的な営みとして生まれるセルフヘルプグループを、「……すべき」という言葉で語るのは似合わない。
むしろ、活動日的は、悩みのタイプや参加するメンバーの思いによって変化すると考えた方が良さそうだ。グループはメンバーの思いを反映して、様々な形を取り得る。その意味で、「セルフヘルプグループの醍醐味は世話役になること」と中田さんは勧めた。
患者会の中には、医者などの専門家が会長になり、当事者がそれに寄りかかっ
て運営しているものもある。保健所が熱心にセルフヘルプグループの「養成」に取り組んでいるところもある。セミナーで報告された当事者の思いを形にしていくグループ作りは、そんな専門家主導のグループ作りの対極にある。
もちろん、グループを作る時、また、活動していく中で、様々な問題に直面する。メンバーの集め方、会報の発行の仕方、例会の持ち方、資金集めの方法、最新の治療情報等々。セミナーでの報告でも、専門家のアドバイスや一般市民の支援を求める意見も出た。
新聞にグループの紹介記事が掲載されたら、急に問い合わせの電話が増えた。思いのほかメンバーが集まり、会報発行・発送などの事務処理が追いつかない。多くのグループにそんな経験がある。本人自身様々な問題を抱え、少ない労力と時間をやりくりしてグループの運営をしている。「サポーターが欲しい」というのも切実な願いだ。
しかし、「まずは、無理をしないこと」。資金づくりにエネルギーがさかれ、本来の活動がおろそかになることもある。「やれるときに、やれることだけやればよい」という先輩グループのアドバイスは、ほっとさせる。
当事者でなくても支援はできる
自分も悩みがあることを認めて・・・
中田さんはまた、支援を求めるところから、あなたまかせの会に陥る危険性を指摘する。
センターでもグループ運営に関する相談を受けている。しかし、そのことが当のグループを依存的にしてしまわないように心を砕いている。あくまでも側面支援だ。「こちらが会場を設定して、メンバーに連絡して、ということはしない」とのこと。
センターのスタッフは約十名。皆ボランティアであり、大半が自らセルフヘルプグループの体験を持つ。「人を支えることで、自分も支えられる」という自分自身の体験から、他のセルフヘルプグループの支援に携わっている。
活動をしていて何か相談したいことがあるなら、とセンターの例会への参加を勧められた。毎月第二土曜日にセンターの会員を中心に例会を持っている。参加者はいつも十人から十三人ぐらい。
「いろいろな人が参加している。なんどか参加すれば、このことならこの人に相談したらいいということがだんだんわかってくる」。支援も受け身ではなく、選び取るというということがポイントのようだ。
では、どんな支援の仕方があるのだろう。情報提供やカンパ、活動の手伝いだけではない。「グループをやっていて、人から励まされたりするととても嬉しい。自分のやっていることの価値が認められたような気がする。それが自分の力の源泉になっている」。とある当事者は語っていた。活動に共感するということだけでも十分支援になる。
いわゆる「当事者」でない人たちが、あるグループの支援にまわる時、けっして一段上から支援しようとしているのではない。「悩める相手を支援したい」という気持ちの真には、「自分も悩んでいる」というメッセージが隠されているようだ。
誰でも何らかの悩みを持っている。自分が悩みを持っていることを認める。悩んでいる内容に違いがあっても、「悩んでいる」ということで対等になれる。セルフヘルプグループを作る、支える、ということの鍵はそのあたりにありそうだ。
それでは、あなたも何か始めてみませんか?
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