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市民活動情報誌『月刊ボランティア』1996年12月号(通巻321号) 目次に戻る
「民」の規制から「官」の規制へ
〜「説明する責任」追及は市民の役割〜
大阪ボランティア協会事務局長 早瀬昇

 岡光前厚生事務次官を頂点とする汚職疑惑は、ここ数年発覚が続く官僚不祥事の中でもとりわけ大きな悪影響を、私たちに及ぼしそうだ。

 福祉事業関係者全体に対してあらぬ不信感が高まってしまった上に、急務の課題である公的介護保障制度創設の議論が遅れることも必至の情勢となってしまった。さらに共同募金会への指定寄付金制度を悪用した資金還流が行なわれていたことから、大蔵省などからは指定寄付金制度の廃止論議さえ出ているという。

 指定寄付金制度は共同募金改革の目玉「ドナーズ・チョイス」と似た制度である。福祉関係のNPO活動を支える民間資金拡大の柱が、危機に瀕しているのだ。

 かつて市民活動の法人格取得規制を緩和しようという「NPO法案」立案中にオウム事件が発生。逆に規制を強めようとする動きが起きたが、今回の事件でも同様の逆作用が懸念される。少数の悪事で多数の自由が規制されるという歴史が、また繰り返されそうなのだ。しかもそこで規制されるのは「民」の活動だ。「民」に対する性悪説的な発想が、これを支える。

 しかし今回の事件を「善良な官僚が悪人の誘惑に乗った」という構図で捉えては、ことの本質を見誤る。問題は、官僚に大きな法解釈権、裁量権が認められ、しかもその判断を市民がチェックできないというシステムにあるからだ。

 11月22日に開かれた「日本NPOセンター」の設立記念フォーラムで、同センター事務局長・山岡義典氏は、事態をこう喝破した。

 「『官』と『民』の関係は“パートナーシップ”であるべきだ。しかし、今回の事件は『官』と『民』が“パートナーシップ”ではなく“癒着”の関係にあった中で起こった。“パートナーシップ”と“癒着”は、どう違うか。“パートナーシップ”が広く一般に公開されるのに対し、“癒着”は密室の中で秘密裏に築かれる。“癒着”は公開のもとでは発生しない」。

 そうだ。市民の目から隠れた密室で、市民の汗の結晶である公的な資金が私的利益のために使われたのだ。だから必要なのは、官僚に委ねている「民」の規制を強化することではなく「官」の判断を市民に公開し、市民のチェックで官僚の判断を規制できるシステムを整備することだ。

 この「公開」 の重要性を早くから訴えている論者の一人にカレル・ヴァン・ウォルフレン氏がいる。氏は、薬害エイズ問題で大きな役割を果たした川田龍平氏が励まされたという『人間を幸福にしない日本というシステム』 (毎日新聞社刊) の著者として知られるが、彼の主張のキーワードが「アカウンタビリティ」。これは「(関係者の納得が得られるまで)説明する責任」とでも訳せる言葉だが、これこそは今問題としている「公開」を官僚などに迫る作業の核心だ。およそ公共的な決定をなす者は、その経緯を説明しなければならない。そして私たちには、それを要求する権利と役割がある。こうした要求活動もボランティアやNPOの重要な役割なのだ。

 もちろん、この「説明責任」は公共活動の“もう一つの担い手”であるNPOにも求められる。報告書や会議の場などで自らの活動の透明性を高める姿勢は、我々こそがまず範を示さねばならないことだろう。

 

(漫)

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Volo(ウォロ)は大阪ボランティア協会が発行する 市民活動総合情報誌であり、オピニオン誌です。
『月刊ボランティア』創刊1966年。『Volo(ウォロ)』と誌名を変更して2003年新創刊。一貫して「市民が主体的に関わることの大切さ」を伝えてきました。分野・セクターを越えた社会的課題に市民がいかに関わるかを独自のアプローチでタイムリーに発信しています。