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障害者自立支援法学習会
ホントに自立支援? 一緒に考えてみませんか 障害者自立支援法
第1回「身体障害者の立場から」(2007年2月10日開催)
講師:岩永清滋さん

○支援費制度から自立支援法へ

障害者自立支援法を考える 厚生労働省と全国社会福祉協議会が作成したパンフレットに、自立支援法が説明されています。
障害者自立支援法の円滑な施行に向けて
 ※学習会当日は、平成18年10月現在のパンフレットを使用しました

 このパンフレットの2ページに、2003年度に導入された「支援費制度」の問題点が載っています。すなわち、

  1. 身体障害・知的障害・精神障害といった障害種別ごとに縦割りでサービスが提供されており、施設・事業体系がわかりにくく使いにくいこと
  2. サービスの提供体制が不十分な地方自治体も多く、必要とする人々すべてにサービスが行き届いていない(地方自治体間の格差が大きい)こと
  3. 支援費制度における国と地方自治体の費用負担のルールでは、増え続けるサービス利用のための財源を確保することが困難であること
 じゃあ、支援費制度はそんなに悪かったのか? それを考えるには、支援費制度を知らないといけませんね。
というわけで、支援費制度がスタートした当初のパンフレットを、みてみましょう。

○3年で終わった、21世紀の福祉サービス「支援費制度」

 支援費制度のパンフレットには、「21世紀にふさわしい福祉サービス利用制度−支援費制度がはじまります」というコピーがあります。「21世紀の福祉サービス」だったはずの支援費制度が、たった3年でなくなってしまうわけです。

 支援費制度では、身体・知的障害者がサービスを利用したいと思ったら、市町村に利用申請をします。市町村が、利用してもいいですよということになったら、利用者が指定事業者と契約して、事業者がサービスを提供します。事業者は、サービス提供の費用を市町村に請求して、市町村が事業者に支払います。
 このとき、本当は市町村が障害者本人に支援費を渡して障害者から事業者に払うべきなのですが、それも面倒でしょうというので、市町村から事業者に渡すことになっています。「代理受領」なんて言葉を使っています。ちなみに、私はこの仕組みが大嫌いで、事業者には自分で払いたいと思っていました。

 支援費制度ができる前は、「措置制度」です。
 措置制度では、行政が必要なサービスを提供しないといけない。法文にも、行政は障害のある人に「措置しなければならない」と書いてあります。つまり行政責任として、困っている国民がいたら、施策を講じてサービスを提供しないといけません、というものです。

 措置制度は、措置してくれないよりはいいが、障害者には使いづらいものでした。どこの施設に行くのかも、どんなホームヘルプサービスを受けるのかも、すべて行政が決めるからです。
 「自分で決めたい」という自己選択のルールは、障害者団体の要望でもありました。障害者が自分でサービスを選べるようになったのは、支援費制度の成果だと思っています。

○支援費制度では、財源がもたない!?

障害者自立支援法を考える この支援費制度のもとで、身体障害者のサービス利用が一気に伸びました。予想外の伸びに、国は驚いたようです。

 政府は、制度導入の前には、利用がどのくらいあるからいくらかかる、というような予測を必ず立てます。これがないと予算ができませんから。
たとえば、介護保険導入のときも、対象者がどのくらいいるかを把握して、そのうちのどのくらいの人が実際に利用申請をするかという予測を、政府はしました。その中身は、たとえば初年度が対象者のうち半分が申請、翌年は6割が申請、というものでした。
これはだいたい当たりました。
なぜ申請しない人が半分もいるのかというと、おそらく高齢者のなかには、他人に自分の世話を頼むことや、家の中に他人が入ることがいやな人もいるだろうし、家族の意見が重視されることもあるからだろうと思います。

 同様に、支援費制度の導入前も予測しましたが、障害者は想定されていた以上に、外に出て行きたがる人が多かったのです。ヘルパーが来てくれるんだったら、どんどん外に出ようというわけで、利用が伸びた。
 また、利用するだけではなくて、障害者運動のなかで、自分達でヘルパーを派遣する事業所をつくっていった。これも、利用が伸びた理由のひとつでしょう。

 そうして初年度が終わるときに2年度目の試算をすると、602億円の当初予算を170億円も上回る見通しになりました。このことは「支援費の大赤字」として随分報道もされました。

 「170億円の赤字」というと、莫大な金額に思えます。確かに日常感覚からいうと、「億」の単位は莫大なのですが、じゃあ関係予算のなかでみるとどうか。

 たとえば、2005年度の関係予算をみてみましょう。
 2005年度の支援費予算総額3832億円のうち、大赤字が問題になっている居宅生活支援費はどのくらいの割合を占めているかというと、24%で、残りの76%は施設への入所・通所を合わせた施設訓練等支援費です。まだまだ施設への財源の配分が多いのが実態です。居宅サービスが増えたと言っても、まだ少ない部分なのです。
 また介護保険は、2007年度予算で2兆718億円の規模です。比べものにならないでしょう。
 170億円が少ないお金とは決して言いませんが、全体予算の中で言うと、そう大きい割合ではないわけです。

 が、とにかく支援費制度の、特に居宅生活支援費が170億円もの大赤字だ、大変だということで、わずか1年半で見直し論議に入り、3年だけやって自立支援法になりました。
 財政状況の大変さについては、自立支援法のパンフレットでも、問題点の3番目に「財源を確保することが困難」と言い切られています。170億円とかの赤字では続けられないと、「利用者負担」が導入されたわけです。

 そしてその利用者負担に対して、障害者団体などあちこちで抗議運動、批判が起こりました。
 その結果かどうかわかりませんが、2006年12月に、「障害者自立支援法円滑施行特別対策」として、3年間の時限措置ですが、1200億円の緊急的な補正予算が組まれました。
 背景に法人税収の増加があるとはいえ、1200億円ですよ。政府が青ざめたはずの170億円の赤字は、いったい何だったんでしょうか。1200億円の補正予算が組めるのだったら、170億円の赤字を理由に支援費制度をやめることはおかしいでしょう。利用者負担制度を導入するための口実と考えるのは、私だけでしょうか。

○支援費制度では、地域間格差が大きい!?

 サービス利用の地域間格差が大きい、ということも、必ず出てくる話です。
 よく使われるグラフで、都道府県で比較した支援費制度利用者数のグラフがあります。介護保険では都道府県間の格差が最大1.7倍だが、支援費は最大7.8倍である、というグラフです。

 全国でみると、一番支援費制度の利用が多いのは、滋賀県です。滋賀県は、障害者施策が人口比率からいっても進んでいるところだからでしょう。
 次に多いのが、大阪府です。財政状況もよくない、国から地方交付税をもらっている大阪府で、使いすぎじゃないか、ということかもしれない。

 でも現実には、大都市以外の地域で、一気にホームヘルプサービスなどが浸透するでしょうか。

 大阪なら自転車でヘルパーが何件も回れても、山間部などは車で移動が普通です。人口密集度が違うから、午前に1件、午後に1件とかが精一杯ということもある。事業所やヘルパーの数も、まだまだ少ないでしょう。
 サービスを受ける側の障害者も、大都市と比べると、他人から介護を受けることへの理解が進みにくいかもしれない。
 だから、大都市以外の地域というのはサービスが浸透しつつある段階で、障害者運動ではそれを広げるという取り組みをやっています。

 地域間格差の解消は、大都市で使いすぎている分を地域に回す、ということではありません。全体を底上げしていくことではないか、と私は思います。

○支援費制度では、身体障害・知的障害・精神障害の縦割りが解消されない!?

 自立支援法では、3障害が1本になったことが評価されます。
 一緒のほうがいいのはその通りで、実は支援費制度ができるときも、我々は一本化を主張していましたが、実現しませんでした。
 だから、3障害を一本化するなら、支援費制度に合体すればいいわけです。
 制度自体を変える必要はないんじゃないでしょうか。

 この3つの障害のうち、特に他の障害と分かれていたのは精神障害です。
 精神障害は、今まで福祉サービスではなく、医療サービスの範疇でした。だから、身体・知的障害者は市町村の福祉事務所で相談しますが、精神障害の人は都道府県管轄の保健所に行っていました。
 また、精神障害者が通院すると、精神疾患に関する医療費は95%が公費で賄われるので、自己負担は5%だけだが、風邪をひいてお医者さんにかかると健康保険扱いで3割負担です。
 身体障害・知的障害の福祉医療制度は、所得制限があるがすべての病気がカバーされ、基本的に無料なので、この点でも違います。
 そのあたりは、自立支援法で一本化されたのはよかったといえるでしょう。

 精神病院に入院している人のうち、退院可能だが行き場がなくて入院している「社会的入院」の人は、7万人と推計されています。
 この人たちが地域に戻れるようにならないと、というのは自立支援法でも言っているが、できていません。
 そのうちに、精神病院の敷地にグループホームをつくったら、精神障害者の地域移行とみなすということを、厚生労働省が言い始めて、それでは地域に戻るとは言えないということで、これにも抗議運動が起きています。

○障害者の「就労」が強調される自立支援法

障害者自立支援法を考える 自立支援法では、やたら就労が強調されています。
 「障害者作業所」は、5年かけて自立支援法の施設に移行せよと言われていて、自立支援法の就労支援施設には、大きく分けて雇用型と非雇用型があります。雇用型は、障害者を雇用する施設をつくったら、障害者に対して都道府県ごとに定められた最低賃金を確保するよう努力せよというものです。
 この最低賃金は、月額で約7万円です。非雇用型は、その半分の約3万5000円を目指しなさい、というものです。

 今、作業所が障害者に払っている賃金は、全国平均で月に1万円くらいでしょう。私たちが運営している作業所は1万2000円で、多分頑張っているほうです。
 そんな現状の中で、今まで言われたこともない最低賃金を出されて、毎月3万5000円、雇用型で7万円をと突然言われても、無理があるでしょう。

 このことは、おそらく「利用者も応分の負担を」という方針とセットです。
 つまり、作業所に行くために利用料を払わないといけなくなるから、平均2万円くらいの利用料が、障害者にかかってくる。でも工賃が3万円もらえたら、そこから利用料が払える、ということではないか。
 でも今1万円出すのがやっとの作業所が、みんなに3万円払えるでしょうか?

○障害者もそれなりの負担をしてみんなで支えないと制度が持たないよ??

 自立支援法については、行政も地域もがんばるから、障害者もそれなりの負担をしてみんなで支えよう、みんなが支えないと安定的持続的な運用ができない、と必ず言われます。

 それで障害者のほうも、そうか、行政もお金がないんだと思って、今まで行政が100担っていたのを、我々ががんばって10払えば行政が90になって維持できるのかなとか考えるのですが、現実には障害者自身が負担する部分は1割もありません。

 なぜかというと、軽減策がいっぱいあるからです。
 1200億円の補正予算もあるし、3年間は本人負担の上限を4分の1にするとかもあって、財政的には障害者の負担は1%にもならないんじゃないでしょうか。

 それと、そもそも対象者である障害者ってどのくらいいるでしょうか。
 多分、障害者の数は250万人とかのレベルです。そのうちホームヘルプサービスとか施設サービスとかの自立支援法のサービスを受けている人は、10万人とか20万人とかで、障害者のなかでも少数派のはずです。

 サービスを受けているのは誰かというと、主には重度の人です。生まれてからずっと重度障害、という人もたくさんいて、就労のチャンスももともとほとんどなく、所得を得るすべがなかった人が多い。
 だから、支援費制度を使っている人のデータで主な収入源を見ると、18%が生活保護、77%が年金だけ。95%が低所得者層という結果も出ています。
 障害年金の額は年間80万円で、自立支援法では、この層が毎月最高24500円の負担をするという話です。すごいでしょ。単に生活するためだけなのに、年間80万円の年金のうち30万円を払え、と言われているのです。

 とはいえ、生活保護世帯は負担はないし、他にもいろいろと所得が少ない人のための負担軽減策もあるし、支払う障害者にとっては大金でも、制度運用全体から見ると大半が低所得者層にある障害者の自己負担なんて微々たるものです。
 じゃあ、なんでそこまでして利用者負担を進めるのか?

○障害者の社会保障を、介護保険と一本化する?

 ここで一生懸命、自立支援法を学んでいるみなさんには悪いのですが、またすぐなくなるかもしれないです。なぜなら、障害者の社会保障を介護保険と一本化しようという狙いがあるように思われるからです。
 介護保険が原則1割負担だから、調和を図るためには、とにかく仕組みとしては利用者負担を取り入れるということではないか。
 じゃあなんで介護保険と一本化するかというと、介護保険の負担義務者は今40歳以上だが、これを20歳にしたらもっと財源が安定する。でも負担年齢を下げるには理屈が必要で、そのときに「障害者も統合する」という理由があれば、より進めやすいのではないか――などとかんぐっているわけです。

 もしそうだとすると、私の個人的意見としては、統合には反対です。
 その理由は、高齢者と障害者では、要望や生活スタイルがだいぶ違うからです。

 介護保険では、認定の基礎に、「こういうことができたら何点」というのをたくさん作りました。そのベースは、特別擁護老人ホームのものを使っています。在宅でのケースが基本ではないのです。だから、身辺自立、つまり自分でトイレにいけるかとか、自分で食事できるか、といったパターンの質問だらけです。

 障害者は、トイレとか食事もあるが、若い障害者だと映画や旅行に行きたいとか、就労したいとか、社会に出たいとかもあります。
 だから高齢者施策との統合は難しいと、統合反対派は言ってきたのですが、そうするとその部分がきっちり分けられました。

 自立支援法のなかで、ホームヘルパーの派遣なんかは介護給付になります。でもガイドヘルパーの派遣、つまり外に出るときの支援は、移動支援として別のサービスになっています。
 それで、介護給付は介護保険と統合して、移動支援は地域生活支援として、こっちは障害者施策として残るんじゃないかといううわさもある。
 支援費だと、外出するときのサービスは、介護者が家で身支度を手伝って、一緒に出かけて、帰ってきてということになりますが、自立支援法ではサービスが違うから玄関で障害者を受け渡しするという、笑い話のようなことが本気で語られているとも聞きます。

○障害者の“自立”とは? 私たちの社会保障制度を、どう考えるか?

障害者自立支援法を考える 自立支援法でいう自立は、身辺自立と就労自立。服を着て、ご飯を食べて、働けるというものです。
 一方、障害者団体が言う自立は、自分がしたいことを自己決定で進めていくことです。

 服を着替えるのを障害者が自分でやることに決め付けてじっと見守り、昨日は3時間かかったけど今日は2時間半でできた、すばらしい、という介護者がたまにいるが、介護者が着替えを手伝って5分で済ませて、残りの時間の使い方を自分が決めるほうが、よっぽど自立と言えることもあります。

 私の考える自立はそういうものですが、障害者の自立のために社会はどうあるべきと皆さんは考えますか?

 「何もしない」という意見はそうないと思いますが、たとえば、入所施設に入ってもらうことにすれば、月30万円から40万円くらいか、もうちょっとかもしれないが、そのくらいかかります。(もちろん建物の建設費を入れると、もっとかかります。会場からの補足がありました。)

 一方、在宅で何百時間かのホームヘルプサービスを受けたら、さらにもっとかかるケースがあります。一番多いと、300時間か400時間くらいでしょう。1時間2000円としたら、400時間のサービスで80万円、年間で960万円かかります。

 それは、いけないことでしょうか?
 私の意見は、そのくらいかかっても、障害者が地域で生きるための分くらいは税金で払おう、という意見です。

 過去はボランティアが支援していたこともありましたが、ボランティアだとどうしても日々生活していくことが保障されない。だから私は、普通に生活する分くらいは行政でみてほしい、と思います。普通の生活とは、ご飯を食べ、風呂に入り、着替えをし、トイレに行くということです。つまり最低限の生活部分です。ここの部分はいくらなんでも税金でしてほしいというのが私の意見です。そこから先、障害者がどう暮らしていくかはそれこそ自己決定ですし、本人の努力もあるでしょうし、ボランティアと一緒に何かをすることもあるでしょう。自立支援法でいう福祉サービスは、本当に人間として生きていく最低限の部分の話をしているのだということを、ぜひ理解してほしいと思います。

 みなさんは、どうお考えでしょうか?

 『ホントに自立支援?一緒に考えてみませんか障害者自立支援法
 第2回「知的障害者の立場から」のご案内(2007年3月10日)』