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リンクアップJr. 関西発企業市民活動レポート 4
近畿タクシー株式会社「福祉・観光・まちづくりをテーマに、まちと本業を元気に」
阪神・淡路大震災から10年。震災を経験し、地域が主体となって、これからの街づくりを進めている神戸・長田の地で、50年間営んできた「地域密着交通」というタクシー事業の強み・ネットワークを活かし、お花見や海水浴など地元の資源を組み合わせた観光タクシーや、介護タクシー、塾通いの子どもの送迎タクシー、エコタクシーなど、ユニークな事業を次々と展開している近畿タクシー株式会社。
これらの事業を手掛け、自らもまちづくりプロデューサーとして、長田区ユニバーサルデザイン研究会会長や神戸長田コンベンション協議会会長なども務める、近畿タクシー株式会社 代表取締役社長 森崎 清登氏に、タクシー事業(本業)とまちづくり(企業の社会貢献)を結びつけ、「次世代のタクシー会社=地域サービス会社」を目指しているという事業活動について、お話をお伺いしました。
(取材日:2004年9月3日)
●「いつでも・どこでも・どなたでも」が福祉タクシーの原点 タクシー会社のサービスの原点は、「いつでも・どこでも・どなたでも」。現在のタクシー事業者は、長年行われてきた、街なかで手を上げる、駅前の乗り場でタクシーをご利用いただくというスタイルに慣れてしまって、「本当にいつでも・どこでも・どなたでも、というサービスが担えているのだろうか?」、「今、お客様がなにを求めておられるのか気付かずにいるのではないか?」という思いがあります。
タクシー会社の事業の役割は、目的地まで距離が離れている、荷物が多い、待ち合わせ時間が決まっているなど、利用されるすべての方の移動制約を解決することです。
とすれば、当然、車イスの方や高齢者の方、若いお母さんや小さな子どもさんも移動制約があり、その方々にも出来る限り、「いつでも・どこでも・どなたでも」=「ユニバーサルデザインなサービス」を提供することが、当社のサービスであると考えています。
そういった視点から、「星空の車いすタクシー」(当日の夜間でも配車できる介護タクシー)や、「安心かえる号」(塾通いの子供を送迎する子育て支援タクシー)などの取り組みを事業活動の中で開始しました。
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社長の森崎氏(「安心かえる号」
のシンボル「キンタくん」とともに) |
安心かえる号外観 |
車内には色々な案内やちょっとした
心遣いがたくさん |
●まちづくりに関わるきっかけは震災から
私は生まれも育ちも長田で、今も長田に住んでいます。震災当時、新長田の街に入った時、1日にして、自分の子どものころの思い出がなくなってしまったような空虚な気持ちになりました。そして、なにもないこの焼け野原、更地を見た時、「ここでこれからまちを作っていくんだ」という思いを強く持ち、まちづくりに関わることを決めました。
私の持論では、まちづくりには、「人・建物・乗り物」の3つの要素が重要であると思っています。私はタクシーという、まちに導線を描く乗り物を背負って、まちづくりに入っていきました。うちの乗務員も地元のものが多く、企業としてまちづくりに関わっていく際にも、乗務員にも協力してもらえるという確信がありました。
よく、経営者セミナーなどで、従業員が能力を発揮できる環境を作るにはどうしたらいいか?という声を聞きます。まちづくりに関わって、気づいたことは、まちづくりというテーブル、共感できるテーマに関わった時、人は思いもかけない能力を発揮するということです。
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| 森崎氏に長田のまちを案内いただく。 |
まちづくりの一環として長田のまちの名物「ぼっかけ」(牛すじ肉とこんにゃくを甘辛く煮た食材)を使った商品を生み出していった時、一緒に「ぼっかけカレー」を考えた地元のMMC食品(株)の従業員も長田の出身者が多く、「よくぞやってくれた」という声があがり、従業員のモチベーションが上がったと聞いています。そこには「私達はあの日を力に変える」という共通のストーリーがありました。
そこで当社が出来ることは、このまちを社会学習のまち、観光のまちにすることでした。このまちには光があります。その光・復興の姿を修学旅行生に見せ、伝えることを、まちの名物「ぼっかけ」やJTBとの協働など、まちの資源や自らのネットワークなどを使って進めていき、これまでにのべ120校の修学旅行生が長田のまちを訪れました。
● 震災からやさしさをキーワードに
当社では、環境への取り組みとして、「みどりと青空委員会」というプロジェクトを立ち上げています。これも地域から生まれた取り組みだと言えます。
震災前は、企業として「やさしい」・「やさしさ」といったテーマ・言葉を使うことは、胡散臭さもあり、あまりしていませんでした。震災時、まちにたくさんのボランティアの方が入ってきたあの時から、「やさしさ」という言葉がまちのキーワードになりました。当社も「やさしさ」というテーマを持ちたいと考えた時、神戸でCOP3のプレイベントがあり、そこで低公害車(天然ガス車)と出会い、環境にやさしい天然ガスタクシーを全国で初めて導入しました。
また、今年の夏から始めた「青空のタクシー」では、乗務員の制服をノーネクタイ・半そでのエコスタイルにし、手作りのホースでエアコンの冷気吹出し口を後方に設置、お客様に快適な車内空間を作り出すとともに、前方からの過度な冷気による乗務員のクーラー病の防止と、無駄なアイドリングの抑制を図っています。この「青空のタクシー」は「お客様や環境にやさしく、乗務員にもやさしい」が売りで、ノーネクタイでドライバーがリラックスすることにより、よりよいサービスにもつながる企画です。
● マーケットを地域に限定したことで、メディア効果も
まちづくりに関わり、タクシーは地域のなかの乗り物であり、暮らしの安心を提供できるサービスであることを強く認識したとき、当社のマーケットを半径2キロ以内に限定しました。そしてこのまちに全ての経営資源を投入しました。私がまちづくりに関わること=当社の企業活動であり、営業活動です。
また、地域にマーケットを限定して、福祉や環境、観光をテーマに、さまざまな企画を行うことで、社会的に注目され、マスメディアにも多く取り上げられるようになりました。
マスメディアに取り上げられることで、地域のお客様から声を掛けていただくことが多くなり、乗務員のモチベーションの向上にもつながっています。そして乗務員と一緒に「地域の福祉や環境・観光のために」というテーマ性を持って、「星空の車いすタクシー」や「安心かえる号」などの具体的な事業に落とし込んで、実践しています。
● まちづくりと企業の社会貢献の関わり
企業の社会貢献では、地域や社会に対して、どうコミュニケーションを取っていくか、うまく伝えていくかが大事だと考えています。また、目線が地域にあり、暮らしにあることが大切です。儲けには、「金儲け」と「人儲け」があると思います。人儲けは、金儲けよりも広がりがあり、価値があります。当社は人儲けはあふれるほど黒字です。そして人儲けは大黒字だと言い切れることが、当社の地域貢献だと思っています。
「まちづくり」という共通のテーブルを通じて、みんなが幸せになるというフレームは、長田のまちが10年先駆けて、震災を経て得たノウハウです。今、10年経って、各地でこの「まちづくり」というフレームが出来つつあります。このフレームの作り方がこれからの日本社会の大きな枠組みになっていくと思います。企業の社会貢献は、そのフレームの単位がたくさんあるということを前提に、企業として地域とどう関わっていくかを見定めて、進めていくべきでしょう、僕はそう思っています。
◇最後に―お話しをお伺いして
今回、森崎氏のお話しを聞かせていただき、地域の資源・ネットワークを最大限に活用し、本業とまちづくりをうまくリンクさせている近畿タクシー(株)の事業活動を通して、「このまちでともに生きていく」という個々の思いが、一企業の社会貢献・地域貢献という枠を越えて、企業と地域のさまざまな関わり方を生み出していることを実感しました。
また、すべての人が暮らしやすい社会づくりと企業の社会貢献の関わりにおいても、市民・NPO・行政・企業など、多様な個人・団体がそれぞれ持っている資源・ノウハウ・ネットワークをそれぞれの身の丈にあわせて広く持ち寄ることができる仕組み作りを行なうことで、一個人や一企業の突出した思いや活動から生まれるものよりも、社会全体をより良い方向に変えていく持続可能な大きな力になっていくことを感じました。
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