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関西発企業市民活動レポート 3

リンクアップJr. 関西発企業市民活動レポート 3

KPOキリンプラザ大阪を訪ねて


 道頓堀にかかる戎橋。その北詰に位置する『KPOキリンプラザ大阪』(略称KPO)
は、かつてビアホールと映画館を併設した有名な「キリン会館」を前身としていますが、1987年に建築家・高松伸氏の設計によって立て替えられ、「日本建築学会賞」を受賞した7階建ての複合文化ビルです。アートギャラリー、レストランやカフェ、そしてオリジナルビールを製造するビール工場までをも併せ持っています。現代アートの展覧会から、ビールを飲む楽しさやビール文化の奥深さを体感するセミナーなど、多彩な活動で親しまれているこのビル。原色のベクトルが幾方向にも伸びている街・大阪ミナミにあって黒壁と4本の白い電飾塔のシンプルなモノトーンは逆に目を引きます。
 「多くの人に足を運んで欲しいのに、建物自体に少々、威圧感がありますね。」
と、苦笑するKPOキリンプラザ大阪の広報担当の佐光慶亮(さこう・よしあき)さん
(キリンビール株式会社広報部文化活動担当)は、入社後、長野県や大阪市内でビールの営業業務を経て現在、KPOキリンプラザ大阪を拠点として同社の芸術文化とビール文化の情報発信活動を担っています。

私たちが今回お伺いしたKPOキリンプラザ
大阪2階の『KPOスタジオ』は、通常ビールセミナーやトークショーといったイベントを開催しているスペース。ここで佐光さんから同社の社会活動の概要やメセナ活動の戦略性などについてお話を聞きました。(取材日:2004年6月10日)

多くの人が集うKPOの全景 →

写真提供:キリンビール株式会社 広報部








●メセナは社会貢献から広報へ

同社では、企業市民としてより良い社会の実現を目指し、「環境保全」「国際交流」
「社会福祉」を3本柱に社会環境部が中心となって、様々な社会的な活動を行っています。
 @「環境保全」分野では、製造・販売・研究等の各部門と連携をとりながら、あらゆ
る事業活動に“環境の視点”を取り込み、ビール瓶の軽量化やリサイクル(ほぼ100%の回収率)から社員による空き缶回収に至るまで、多様な取り組みを行っています。
 また、A発展途上国の食糧問題解決に関する研究支援プログラムに代表される「国際交流」B社員のボランティア活動支援や“キリン福祉財団”を通じた障害者・高齢者福祉向上のための助成などの「社会福祉」活動。そのほか、アルコール飲料を扱う企業として未成年者の飲酒防止や適正飲酒の啓発活動を行っています。

 一方、同社の広報活動は、「報道対応活動」「IR活動」「文化活動」の3部門に分かれ、さらに「文化活動」は、@芸術文化支援、Aスポーツイベント(サッカー日本代表オフィシャルスポンサーやJOCオフィシャルパートナー)、Bテーマパーク(TDLやUSJへのスポンサー参加)、C工場ツアー、D企業文化資料(ビール製造に関する技術や文化についての整理やセミナーなどの実施)の5つに分かれて活動しています。
 1978年の国際試合支援からはじまっているサッカー日本代表スポンサーのようなスポーツ支援や「キリンアートアワード」に代表されるような芸術文化支援は、企業ならではの支援活動として、当初は広報部のなかで社会貢献業務の一部としてスタートしましたが、その後は広報部の文化活動として位置付け、環境保全や福祉の分野など、企業が社会に対して行うべき社会的活動は、1993年に発足した社会環境部・社会貢献室に移り、前述した様々な活動を行っています。

      
  
KPOスタジオにて。
佐光氏(右奥)よりお話を伺う

●支援と広告の関係
さて、佐光さんが担当されている芸術文化支援活動ですが、『KPOキリンプラザ大阪』、『キリンアートプロジェクト(前身はキリンアートアワード)』、『現代舞踊支援』の各プログラムを3つの柱として展開されています。特にこの「KPOキリンプラザ大阪」では関西における同社の芸術文化支援活動の拠点として、また、現代アートの情報発信基地として、多彩でオリジナリティ溢れる展覧会・各種セミナーなどの開催、情報誌の発行などの活動をしています。
 2004年秋から新たにスタートする『キリンアートプロジェクト』は、新鋭アーティストの発掘と育成が目的であった、従来の“キリンアートアワード”に加え、発掘したアーティストをテーマ性のある展覧会に参加させる仕組が導入されます。『キリンアートアワード』は、1990年のスタートから“ヤノベケンジ” “束芋”などの新鋭アーティストを世に送り出してきました。
 また、現代舞踊では、新国立劇場「コンテンポラリーダンスシリーズ」、世田谷パブリックシアター「21世紀舞踊」を支援しているほか、「朝日舞台芸術賞」で顕彰された現代舞踊一作品に対して支援を行う『キリンダンスサポート』などの取り組みを行っており、同社の支援活動を紹介することには枚挙に暇がありません。
 支援活動を展開される中、特筆したいことのひとつは、こうした活動を紹介するパンフレットやニューズレターに、広報部の活動であるにもかかわらず、「キリンビール」の社名を含め、会社の広告が非常に少ないことがあります。
 「PR色を強めることは避けるようにしています」とのことで、たとえば、関西エリア約200ヶ所のカフェやショップに2万5千部が配布されているフリーペーパー『KPO ART NETWORK 』は、芸術・アートについて一般の人に少しでも興味を持ってもらうことを目的に年4回発行されており、関西の現代芸術界の情報や告知を盛り込んだ、全16ページの小冊子ですが、これも最後のページの発行人のところに社名とロゴマークが入っているのみ。実はヒヤリング時の最新号にはKPO3Fのレストランの広告が入っていたのですが、これは原稿量の関係から、やむにやまれず入れることになったもので、通常はこのような広告は一切載せていないそうです。
 広報部の文化活動としての社内の位置づけについては「キリンビールだからこそできることってあるんじゃないのか」と議論が重ねられ、現在に至っていますが、芸術支援が目的であり、自社広告は控える姿勢を保ちつつも、「でも『キリン社はこんな活動もしています。』といったように、全社員が使えるものにしていかないといけないと思います」とのこと。ここに同社の芸術・文化支援活動への姿勢が明確に現われていると感じました。

 私たちが訪問した当日、ちょうど館内ではデザイナーの田名網敬一氏と宇川直宏氏が手掛けるサイケデリックなデザイン作品群の展示会『DISCO UNIVERSITY(ディスコ ユニバーシティ)展』が開催されていました。
 吹き抜けの4-5階は、奇抜なポスター・立体の作品の展示に、6階はまるで宇宙を思わせる空間。吸い込まれるような不思議な感覚は、言葉ではうまく表現することは出来ません。
 この『DISCO UNIVERSITY展 』(※)を始めKPOキリンプラザ大阪では、年間を通じて数多くの現代アート展覧会等を開催するのと同時に多くのアーティストを輩出してきましたが、この陰には、KPOキリンプラザ大阪特有の「KPOコミッティー制度」があります。現在は五十嵐太郎氏や後藤繁雄氏、椹木野衣氏、ヤノベケンジ氏の4名がアドバイザーとして、KPOキリンプラザ大阪で実施する展覧会の企画・構成に参画する制度ですが、この4名と会社側が共に検討することで、“会社の経営理念に基づいた”また、“担当者の個人的趣味に傾斜しない”展覧会の継続が可能になっているとのことです。
会場には田名網氏の作品が一面に 5階部分から会場を見渡す
 ところでなぜ、「現代芸術」なのでしょうか。私たちの質問にいただいた、佐光さんのお答えを最後にご紹介したいと思います。
 「例えば、評価の一定した大家と言われる著名な芸術家の作品は、誰が見ても気持ちが良いものです。一方で、現代アートは決してそうではなく、見る人によって様々な受け止め方をされる多彩な個性・表現があるのですが、それは、アーティストが社会において自分が感じることを作品を通して表現しようと闘っているものだからだと思います。そうすることで社会の課題にチャレンジしている。そうしたチャレンジを続ける人たちを応援することが、現代社会を応援することに繋がると考えています」

 KPOキリンプラザ大阪は、その斬新なデザインで1987年「日本建築学会賞」、またその活動が1998年「メセナ大賞’98メセナ普及賞」(企業メセナ協議会)、同社の現代舞踊支援への取り組みが2002年「メセナ大賞’02企画賞」(同上)を受賞しています。
 企業はなぜ、社会貢献活動をするのか。その理由や方向性について議論を重ね、その上で緻密な理論と戦略、そして実際に実行に移す大胆さが、本当に必要とされる活動が出来ることを実感しました。

※この『田名網敬一×宇川直宏「DISCO UNIVERSITY(ディスコ ユニバーシティ)」展』は、2004年8月1日(日)までで終了。その他、展覧会の予定やセミナー等のスケジュールは、同社のHP(http://www.kirin.co.jp/active/art/kpo/index.html)で確認できます。
 

◆お問合せ先(事務局
フィランソロピー・リンクアップ・フォーラム事務局
 (大阪ボランティア協会 企業市民活動推進センター内)
TEL 06-6465-8392 E-mail ccc@osakavol.org