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関西発企業市民活動レポート bP

リンクアップJr. 関西発企業市民活動レポート bP

リンクアップJRは、京阪神を中心とした企業の若手企業市民担当者の自主勉強会です。このレポートでは、地元に根ざした活動をしている企業、NPOとの協働プロジェクトを実施している企業などを訪問、ヒアリングにご協力いただき、関西の企業からの発信をしていきます。
 第1回目にご協力いただいたのは、株式会社けいはんなさん。けいはんな地区にある自社ビルで、毎週水曜のお昼に開催されるコンサートが200回以上続く、地域に根ざしたプログラムを取材させていただきました。
(取材日 2003年5月14日)

(株)けいはんな『けいはんなプラザ・プチコンサート』を尋ねて

昼食をとった後は、1時に仕事が始まるまで、スポーツ新聞を片手に巨人の投手起用について、同僚と口角泡を飛ばす――。
 それもいいけど、たまには上品に音楽会なんかに足を運んでみたいもんだね。  どうせ、聴いてても居眠りで椅子からずれ落ちるのがオチなんだけども、そもそも平日のお昼   間にやってる、そんな都合のいい音楽会なんてあるのかしら。
――あります。

● 学研都市の「小さな演奏会」

京奈和自動車道を間近に望む京都と大阪、奈良が境を接する、関西文化学術研究都市には、国立国会図書館などの国の機関のほか、在阪メーカーの様々な研究所等が集積しています。そのエリアの一角にある「けいはんなプラザ」では、毎週水曜日の12時15分から45分までの約30分間、「けいはんなプラザ・プチコンサート」と銘打った入場料無料のロビーコンサートが開催されています。
 主催は「けいはんなプラザ・プチコンサート実行委員会」という組織ですが、出演者の募集・選考から、広報活動、当日の会場設営に至るまでの全ての実務は、事務局を預かっている(株)けいはんなの社員の皆さんが手掛けています。この手作りのコンサートは平成10年11月にスタートして以来、平成14年12月には、なんと200回を迎え、来場者数は、延べ2万人を遥かに超えました。
 決して広いとは言えないプラザのアトリウムロビーには、時間ともなれば学研都市に勤務する研究職の人、近隣の市民、会議室やホテルを利用する人たちなどが自然と集まり、その限られたスペースゆえに若い演奏者を間近に囲んで、静かに演奏に聴き入る様子は、大きなコンサートホールではなかなか味わうことの出来ない、暖かい雰囲気に包まれています。

      
水曜日の12時になると、どこからともなく人が集まってくる。この日も雨天にかかわらず、すぐ満席に。 気持ちの良い、吹きぬけ空間。上から見下ろす観客も。 事務局の藤井さんの司会で、コンサートがはじまる。後ろの手作り風看板も暖かい雰囲気づくりに一役買っています。
   
● 「身近な文化の実現」と「若い芸術家への支援」を目指して
1987年(昭和62年)「新しい文化を創造する」ことなどを目指した国家プロジェクトとして 建設が始まった関西文化学術研究都市にあって、様々な文化学術研究交流施設を整備する第三セクター「株式会社 けいはんな」が設立されたのは、 1988年(平成元年)8月。そして1993年(平成5年)4月にその中心拠点として「けいはんなプラザ」がオープンしました。
左:けいはんなプラザ外観
周囲には緑が多く、抜群の環境。
右:アトリウムロビー
企業・団体向けのレンタルラボやベンチャー企業の育成を目指すベンチャーセンター、最大1000名が収容可能なメインホールでは公演会や音楽会ができ、展示会などに利用できるイベントホール、各種会議室などを始め、ホテルやレストラン、さらにはヘリポートまで構えるこの施設で、「若い芸術家を励まし、支援する新しい事業を」との社長の発案で、誰もが楽しめて、けいはんな学研都市にふさわしいものをと社員のみなさんが企画されたのが、このプチコンサートです。
「日本人にとって特別な高級品であるクラシック音楽をもっと身近で日常的なものに」、そうした思いに、当時、音楽に関わりのあった同社の社員やその家族が応え、「けいはんな学研都市の文化と賑わいの創出」と「若手音楽家の育成」を旗じるしに、コンサート開催への模索が始まりました。しかし、当初は克服するべき課題が山積みでした。
 どうやって演奏者や観客を集めるのか? 資金はどこから捻出すれば―。
今回は、そんな立ち上げ当初から現在に至るまでの、様々なお話をプチコンサート事務局のスタッフである、同社・交流事業部の藤井友紀恵さん、コーディネーターの浅野優子さんに伺いました。
● 積極的なPRで音楽家と地域の人々の交流の場に
プチコンサートの演奏者は、音楽大学の在学生、大学院生、または若手OBで大学教授の推薦もしくは、テープによる審査に合格された人を対象としています。当初は社員の関係者が演奏するほか、事務局が近畿一円の音楽大学を訪問し、コンサートの開催趣旨を説明した上で、募集案内のチラシを配布していました。そうした事務局の熱意と地道な広報活動の結果、最近では、主に同志社女子大学や京都市立芸術大学など近畿圏の大学生・大学院生・若手OBなど、若い音楽家の絶好の演奏機会として応募が殺到するようになり、3ヶ月先までの予定が入るまでになりました。
取材の日は、卒業生たちのグループによる木管四重奏。曲目は演奏者が自由に選べるそう。会場の雰囲気と合ってすばらしい演奏でした。
また、 「若手演奏家による、無料ロビーコンサート」の評判は、回を重ねるごとに口コミで広がるのと同時に、事務局でも、地元ミニコミ誌での広告や情報誌への掲載のほか、新聞に取り上げてもらうなど積極的なPRに努め、ターゲットを地元精華町、木津町だけでなく、隣接する奈良市や京田辺市まで広げていきました。そのほかにも年に2回程度「スペシャルコンサート」と題する新進気鋭の音楽家を招いたコンサートや、地元自治体からの依頼を受けて出張コンサートを企画・実施するなど、創意工夫の活動が奏功し、観客は次第に増えていきました。
コーディネーターの浅野さん
何といってもこのコンサートの根強いファンが増える要因となったのは、毎週同じ曜日、同じランチタイムという時間に、同じ身近な場所(※)でということが、市民にとっては大変わかり易く、親しみやすかったからでしょう。今や毎回約100名を超える観客が集まり、その約6割の人がリピーター。「あの演奏者はだんだん上手になってきているね」などの声も聴かれ、成長する演奏者、それを見守り続ける観客が、まさに一体となってコンサートを育んでいるような気がします。
● 演奏会では手作りならではの工夫も・・・
 プチコンサートでは、出演者に自己紹介や演奏曲目の解説を依頼しており、出演者の声が直接聞けることも、観客のみなさんに好評です。季節に応じて楽器・曲目を選んだり、琴やアコーディオン、マリンバ等、新しい分野も積極的に取り入れる等の工夫も行っています。
 会場面では1階〜5階まで吹き抜けのアトリウムロビーで開催しているため、コンサートホールにはない開放感がありますが、トランペットやホルンなどの金管楽器でのアンサンブル(合奏)の場合、音響効果が思わしくなく、別ホールで開催したり、反響板を立てて音質の向上を図ったり、というような工夫もされています。
● これからも「小さな演奏会」に「大きな夢と希望」を抱いて
 「“これで新しい生きがいを見つけたよ”と、おっしゃってくださるお客さまもいらっしゃるのです。」と自然と顔もほころぶ藤井さん。ただ、そんな彼女も含めて、関係者のスタッフの頭を悩ましているのが、資金の問題です。現在、演奏会の基本収入は、コンサートの開催趣旨に賛同する24企業・団体からの協賛とコンサートの際に設けられる「プチ・ハートBOX」への観客の皆さんからの募金ですが、それだけでは、苦しいのが胸のうち。
 今後は、さらに協賛企業を増やしたり、個人会員制度も導入する方向で検討中と語る一方、「昨今の厳しい経済状況のなかでは、後回しにされていくのは、こうした文化活動。でもこうしたギスギスした世の中だからこそ、文化が人々を潤し、人生をも変えることが出来るという考えをこの街から発信していきたい。どんな方でも気軽に、身近に感じていただくコンサートを目指すと同時に、出演者が将来大演奏家に育ってくれることを考えればこんな楽しみなことはありません」と抱負を語っていただきました。
最後に
「あっという間に時間が過ぎるんです。一週間は早いですよ。」と笑いながらおっしゃる藤井さんと浅野さんでしたが、このコンサートが長く続く背景には、@ 個人でコンサートを開催する場合、会場の確保をはじめとする大変な段取りを、当コンサートでは事務局が担当。出演者は演奏に専念できる、A 普通のコンサート(2時間程度)は体力的にも精神的にも負担が大きいが、30分なら参加しやすい、など若い演奏者にとって参加しやすい配慮、B 自社の施設で社員が運営を担当する、という会社が一体となって活動を応援する体制づくりなど、さりげない気遣いが沢山ありました。
今後の課題でもある運営資金についても、参加者(観客)から運営資金を集める仕掛けとして募金箱(「プチ・ハートBOX」)を設置したり、「できるだけ多くの地域の企業・団体に参加していただくため、営業活動も頑張っています。」という藤井さんをはじめとする事務局の努力が、プチコンサートの趣旨・賛同の輪を広げる地道な活動を支えているのだと思いました。
(※)ゴールデンウィーク、お盆、年末年始は、実施していません。
 

◆お問合せ先(事務局
フィランソロピー・リンクアップ・フォーラム事務局
 (大阪ボランティア協会 企業市民活動推進センター内)
TEL 06-6465-8392 E-mail ccc@osakavol.org