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【その他の協会発行書籍】
書 名: 二足のわらじを軽やかに
副 題: 〜ボランタリーな生き方のススメ〜
著 者: 太田 昌也(大阪ボランティア協会常務理事)
発 行: 社会福祉法人 大阪ボランティア協会
定 価: 945円(税込み)
初 版: 2003年11月1日
頁 数:

B6判 124ページ


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解説
企業人にしてボランティア活動家、 「二足のわらじ」で30有余年を過ごしてきた筆者が、その経験を通じて培った独自の視点から、日常、世相、そしてNPO・ボランティアなど市民活動の世界を軽妙につづります。
もっと豊かに生きたい、第二の生きがいをとお考えの方に、一歩を踏む出す勇気を与えてくれる一冊です。そしてすでにボランティアやNPOでご活躍の方には、その活動をより実り豊かにするためのヒントが盛り込まれた「先達の手引書」となることでしょう。

まえがき

 プレッシャーがないとついついサボってしまうのではないかと、「夢ネット」(「夢をかたちにする社協人の集い」という集会を主催している若手の社会福祉協議会職員たちのメーリングリスト)と、大阪ボランティア協会の常任委員会のメーリングリストへの配信を宣言して書き始めたエッセイでしたが、やっと発刊にこぎつけることができました。

 「楽しみにしてるで」とか、「読んで考えさせられたよ」という励ましの言葉をいただき、それに後押しをされて、ここまで辿り着くことができたのだと思います。

 書き始めるに当たって、一番悩んだのは何を題材にして書くのかいうことでした。さほどの文才があるわけでもありませんし、もちろん専門家でもありません。結局、考えた末にたどり着いた結論は、できるだけ身の回りに起きた日常の出来事を題材にすること、それをボランティア活動や市民活動で、普段感じていることと関連づけて書くこと、自分らしい言葉で表現することの三点でした。

 読み返してみると、ごく当たり前のことを当たり前に書き綴っているに過ぎません。人様にお金を払って読んでいただくには耐えない代物なのかもしれません。でも、私にとってこのエッセイを書くという作業は、三十数年間の活動の総括であり、一つの区切りをつける作業でした。

 世の中は底なし不況の真っ只中で、リストラの嵐に吹き飛ばされそうになっている人も多かろうと思います。「会社にしがみついているだけが人生じゃない」とか、「会社は社員を護ってはくれない」という言葉をよく聞くようになりましたが、私は随分以前からそうではないかと思っておりました。

 考えてみれば、「社会人」と言っても、サラリーマンは実に狭い社会に生きています。わが家と会社を往復するばかりで、付き合うのも同僚と業界の人間だけという人が多いように感じます。

 私は、もっと違う社会でも生きてみようと考え、それを実践してきました。その一つとして、ボランティア活動の場に身を置き、二足のわらじを履き続けてきた訳です。

 「しんどくなかった」と言えば嘘になりますが、しんどさを埋めて余りある「楽しさ」や「喜び」がありました。多分、それが長年活動を続けられた最大のエネルギーだったように思います。

 中でも、最大の喜びは「多様な人々との出会い」であり、その人たちから「学ぶことの多さ」です。特に大阪ボランティア協会、日本青年奉仕協会という日本を代表するボランティア・センターに巡りあい、その場で出会った多くの人々との交流は、私自身の生き方にも大きな示唆を与えてくださいました。この人々との出会いがなければこの本はなかったであろうと思います。多くの先輩と友人に感謝あるのみです。

 もっと豊かな人生を歩みたいと考えておられるあなた、第二の人生の生きがいとしてボランティア活動を始めようかと思っているあなた、そんなあなたにこのエッセイを読んでいただければと思います。

 私のようなごく平凡なオジサンでも、ボランティア活動という素敵なステージを得ることで、こんなに美味しい人生を味わっていることを知っていただきたいのです。また、活動を続けていると、行き詰ったり、めげそうになったりすることはよくあります。そんなとき、「もう少し頑張ってみよう!」という新たなエネルギーを生み出す一助になればとも思います。

 軽やかに豊かで活き活きとしたボランティア・ライフをあなたも是非どうぞ

 最後になりましたが、「プロの眼で添削して欲しい」という虫の良いお願いを引き受けてくださった吐山継彦さん、校正のお手伝いをいただいた上、推薦文まで書いてくださった菊池修さん、「あんたも書かなあかんで」と応援してくださった故巡静一さん、「エッセイ集は売れにくいんですよ」と言いながらも発刊に漕ぎ着けてくださった出版部の飯田真友美さん、皆さんに深く感謝いたします。

二〇〇三年十一月
太田 昌也


目次
  • まえがき
  • タイムレコーダー
  • ハローワーク
  • 地球の逆襲
  • 学びの演出
  • 寄付の文化
  • 彩りを味わう
  • 下請の構造
  • 毎年が一年生
  • リーダーの交代
  • 国 旗
  • 民主主義の学校
  • わが、心のうちにある差別意識
  • 木組みは人組み
  • 楽しさの演出
  • お客様
  • ラブ・レター
  • いま一度民間性を
  • プロの誇り
  • ボランティア vs NPO
  • 社会に問うひと、自分に問うひと
  • 書くこと、話すこと
  • 人生八十年時代のライフデザイン
  • 円熟の舞台
  • 推薦のことば 酒と涙と侠と女(太田昌也賛江)

抄録

毎年が一年生

 秋になるのを待ちかねて種まきをした小松菜、菜の花、べんり菜などがようやく芽を出し、双葉になったとたんに虫害で全滅してしまいました。大変なショックです。

 肩を落として「やっぱり素人の悲しさですわ。農業は難しいなあ」とぼやいていると、師匠(隣で畑作をしている農家のおじさん)が、「それはしょうがないで。去年と同じようにしていても、うまいこといかんことは私らでもしょっちゅうや」と慰められました。

 そして、「おてんとう様を相手に仕事をしていたら、毎年が一年生や。何年やっても同じことは一遍もあらへんで」と諭されたのです。ちょっと分かりかけてきた菜園作り五年生の、油断と慢心への大きな教訓の言葉になりました。

 この言葉に励まされてもう一度畑を整備し、蒔きなおした種からようやく新しく芽が出始めました。何度見ても新たな命が誕生してくる姿には感動があり、自然の持っている大きな力を強く感じます。「今度こそ」の意気込みで、細心の注意を払って世話をしていますが、うまく育つかどうかは神のみぞ知るという心境です。

 それにしても、「毎年が一年生」は味わい深い言葉ですね。私は長年営業の仕事をやっておりましたが、人間相手のこの仕事も、同じように「毎回が一年生」の気持ちが大切なのです。

 最初のころは、得意先を訪問するたびに大きな緊張とプレッシャーを感じ、とても相手を観察する余裕などありません。思うことの半分も伝えられず、冷たいあしらいに悔しい思いで帰ることもたびたびでした。しかし、「認められたい」とか、「信用されたい」という気持ちは強いですから、事前の準備だけはしっかりとやっておりました。

 しかし、だんだんと慣れてくるにしたがって余裕がでてきます。相手の表情を読み、それに対応した受け答えもできるようになります。また、商品の知識や情報も豊かになってきます。当然、営業成績も上がって、「僕って生まれつきの営業マンかしら」などと天狗になってくるころ、大きな落とし穴が待ち受けているのです。

 商談の相手を類型化し、対応が一定のパターンになる。自分の知識や情報を過信して、十分な準備ができないままに、「何とかなるさ」と商談に出掛ける。こんなときが要注意なのです。

 「十人十色」ということわざの通り、人間の個性は実にさまざまです。こういうタイプの人にはこんな対応で、こちらのタイプにはこんなやり方でなどというように、イージーでパターン化された商談を繰り返していると、手痛いしっぺ返しが待ち受けています。

 また、技術革新は日進月歩です。常に最新の知識と情報を身に付け、要求があれば直ちに提供できる準備をしておかないと、持っている情報は錆びついて、いつか顧客から見放されてしまうのです。

 つまり、常に変化する相手の多様なニーズを的確にキャッチし、相手の個性や状態に合わせた相応をすることや、必要に応じた商品や情報の提供をすることが求められているということなのです。そして、こうした的確な対応を積み重ねることによって、顧客の信頼を勝ち取ることが営業マン最大の仕事なのです。 「多様な相手のニーズを的確にキャッチして、それに合わせた対応が求められる」、これってボランティア活動でも大切な要素の一つですね。

 ボランティア活動も営業活動と同じで、大半は人間相手の仕事です。成果を上げるためには、信頼関係を築くことが重要だということはいうまでもありません。そのためには、対人関係の能力を高め、多様な相手に合わせた柔軟な対応ができること、相手のニーズにしっかりと応えられるだけの知識、技術、情報を持っていること、相手の立場を尊重することなどが求められます。

 特に、重い社会的な課題を抱え、SOSを発信している人たちと、手弁当のボランティアとをつなぐコーディネーターには、こうした能力と姿勢が強く望まれていると思います。  多くのボランティアセンターでは、ボランティアコーディネーターの専門性が十分に認められているとは言い難い現状ですが、専門職としての立場がしっかりと確立し、十分な能力を持った人たちによって対応されることと、「毎年が一年生」の心構えで取り組まれることを祈りたいと思います。

(二〇〇一年十月)