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特定非営利活動促進法が成立して早くも6年が経ちました。同法により設立された特定非営利活動法人はすでに1万8千以上の数になりました。また法人格を持たずに行政や営利企業とは別の目的と内容を持った市民団体も数多く活動しています。
これらNPOの活動分野はわが国においてどんどん広がっており、今やなくてはならない一大勢力になっていると言っても過言ではないでしょう。行政サービスの民間への移行という規制緩和の流れとも相まって、この傾向はこれからますます加速していくものと思われます。
しかしながら、その流れがあまりに速すぎたこともあり、わが国に非営利活動がしっかりと根付いたと言えるかどうかは、多いに疑問があります。特にマネジメントという側面から眺めてみると、その土台があまりに貧弱なNPOが多いと感じさせられます。「ヒト」「モノ」「カネ」のすべてが常に不足して、少数のメンバーがただミッションを目指すという思いだけでがむしゃらにがんばっている姿をよく見ます。
私たちの見る限り、平俗的な言い方をすれば、彼らは本当に「いい人」たちです。しかし、「いい人」が「いいこと」をしているというだけで本当に良いのでしょうか。今後NPOがわが国においてしっかりと地に足を着けた地位を築き上げるためには、がむしゃらさだけではなく、合理的な考えと、しっかりした計画に基づいたマネジメントを身に付ける必要があるのではないでしょうか。
マネジメントの中でも特に会計の分野を苦手とするNPOの活動家が多いようです。会計は過去営利企業の世界で発達してきたツールであり、一方NPOの母体となっている市民活動は過去お金の世界と一番無縁のところに位置していたとも言えるので、確かにこのミスマッチは仕方がない一面を持っています。しかしながら、いくら非営利活動といってもその活動を継続してミッションを達成するためには、やはりお金が必要であることは否定できないでしょう。お金の動きがある以上は会計の知識がどうしても必要になるのです。
NPO向けの研修会の講師などをしていると、本当にNPOの実務担当者が困っていることを痛感します。彼らのためにNPOの会計と税務を解説する書物を提供することが急務だと感じていました。しかし私が接する担当者の中には、できる限り簡単な方法で答えだけを知りたいとする思いが強い人が多いことも事実でした。自ら行うNPOの活動の目標や方法については非常なこだわりとプライドがあり、独自性を存分に出している人たちが、こと会計と税務の話になると、途端に安易な雛形をほしがる態度を取ることについては、かねてから疑問に思っていました。もちろん時間がなく他の業務も兼務していることの多いNPOの会計担当者がそのような気持ちになるのは無理からぬ点もあるでしょう。
しかし、その都度誰かに聞いたり、雛形を無批判に真似するだけの方法を続けているだけでは、真の意味でNPOの会計と税務を習得できないでしょう。会計と税務の基本知識をしっかりと理解し、NPOの会計の目標を的確に定め、自分の頭で考える習慣を持つことが大切なのです。この最後の自分の頭で考えるという点は本当に重要です。自分で考える力を身に付けると、新しい局面で様々な応用が可能になりますし、何よりも日々の実務を、自信を持って行えるようになります。「分からない」とか「不安だ」とかの今までの日常が一変する実感を味わえるでしょう。
本書は、主にNPOの実務担当者のために、できるかぎり平易な文章で、分かりやすくNPOの会計と税務の基礎を学んでもらうことを意図したものです。しかし先ほど述べた考えから、単にこちらの知識を押し付けるのではなく、NPOの実務担当者が今後しっかりとした応用力を身に付けてもらうための土台作りや考え方のヒントを提供することに力点を置きました。従って、中には難しいと思われる部分もあるかもしれません。またいろんな方法を示してその中からNPO自身で選択してほしいとの思いで記述されている部分も多いので、迷われるところも多々あるかもしれません。
しかし、最後まで頑張ってほしいと思います。また1回で理解できなかった場合は何回も読み返してください。あるいは実務で問題にぶつかったとき、該当箇所を再度参考にして下さい。少しでも皆さんの役に立ちたいとの思いで、精一杯の情報を提供したつもりです。
本書は上述の通り、NPOの現場で日々格闘している会計担当者を第一の読者と考えて書かれていますが、NPOに関わる行政の方や、今後NPOを支援しようとする会計・税務の専門家の方や、融資という形でNPOに関わられる金融機関の方などにも参考になるものと自負しております。
本書は私と水谷綾の二人の共著です。私は会計と税務の職業的専門家ですが、彼女は多くのNPO支援の経験を持つNPO支援のプロです。数多くのNPOの現場の声を知り尽くした彼女がいなければ本書を世に送り出すことはできなかったでしょう。会計税務のプロとNPO支援のプロが協力して行った仕事とお考えください。彼女が第1〜3章、私が第4〜6章を主に書きましたが、お互い何度も原稿を交換し合い、議論を戦わせました。お互いの意見を取り入れて何度も原稿を書き直しました。その意味において、本書のすべての部分について二人で連帯して責任を負うものです。
本書がこのように出版できたことについては、何よりも編集の多くの部分について尽力いただいた岩田朋之さんのおかげだと思っております。ありがとうございました。また大阪ボランティア協会出版部の多くの方に助けていただきました。重ねてお礼申し上げます。
本書が、NPO実務担当者や関係者のお役に立てることを心より願っております。
2004年11月
公認会計士・税理士 岩永清滋
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