|
「2007年問題」という言葉があります。「団塊の世代」が一斉に退職し始め、退職金の支払い負担や労働者不足の深刻化、技術継承などで企業経営に大きな問題が生じるのではないかと懸念されていることから言われだした言葉です。この問題を最初に言いだした日産自動車のカルロス・ゴーン氏は、実は退職者がピークになることから「2010年問題」と言ったそうですが、2007年問題であれ2010年問題であれ、団塊の世代の一斉退職が企業経営上の大きな課題とされていることは確かです。
しかし、この2007年以降の状況に大きな期待を寄せている人たちもいます。他ならぬ私たち、市民活動の関係者です。これまで、仕事一辺倒の生活をされてこられた皆さんが、会社から地域社会に帰ってこられる! 皆さんの中から、「第2の人生」の舞台として市民活動を選ばれ、私たちに新しいエネルギーを吹き込んでくださる方が、たくさん登場されるのではないだろうか? そんな期待があるわけです。
もっとも、「そんなに調子の良いことを言われても…」と戸惑う方も多いことでしょう。
確かに最近は、ボランティア、NPO、NGO、市民活動、コミュニティビジネス…といった言葉が新聞紙上をにぎわしています。特に阪神・淡路大震災でボランティアが活躍して以降、市民活動への関心は非常に高まってきました。
とはいえ、NPOとは「非営利組織」を意味するNonprofit Organization から来た言葉。そこで、営利企業とは水と油の世界ではないか…と警戒する方も多いと思われます。「愛だの正義だのと奇麗事が幅を効かすボランティアと、熾烈な競争のもと利益追求のため駆けずり回っている企業では世界が違う」といった冷めた見方もあるかもしれません。
しかし…。実はボランティア活動やNPOの取り組みの中には企業活動との接点がたくさんあります。そこには、明日の私たちの組織と社会のあり方を見つけるヒントがたくさんありますし、時には新しいビジネスチャンスをつかむことさえあると思います。また、皆さんが企業で培った経験や能力を生かすことで市民活動のレベルアップを進めることができたり、新たな友や役割を得られるチャンスとなることも多いのです。
そこで本書では、そんな皆さんに市民活動の素敵な世界を紹介するとともに、市民活動の世界から企業を見ることで、明日の企業像を探るヒントもお示ししようと考えています。リタイアされた方、リタイア後を考え始められた方はもとより、現役の企業人の皆さんにも、きっと役立つメッセージが盛り込まれているはずだと思います。
どうか、従来のイメージにこだわらず、魅惑の活動! ボランティア、市民活動の世界を気楽にのぞいて下さい。
なお、本書は当協会が2002年から実施している「マスターズ市民プロジェクト」の一環として発行するものです。このプロジェクトは、シニア層にボランティア活動やNPO活動などで活躍する新しい生き方を提案するもので、「マスターズ市民大学」の開催、「情報誌」の発刊などの事業に取り組んでいます。このプロジェクト実施にあたっては、(福)大阪府共同募金会より多額のご支援をいただいております。ここに記して感謝の言葉に代えたいと思います。
2005年3月
早瀬 昇
|