【写真:大阪ボランティア協会が運営する市民活動スクエア「CANVAS(キャンバス)谷町」】
当協会は、多様な人々の参加による社会問題の解決をめざして、ボランティアと職員がともに汗をかきながら、市民活動の推進を通じて様々な事業を展開している民間の市民活動センターです。自らが主体的に社会問題の“仮説”を見出し、その解決をめざして意欲を持って事業に取り組んでいます。大阪ボランティア協会がどのような仕事をしているのかご紹介します。
「相談できる人がいない」、「誰にも頼れない」――。社会生活を営む中で、何らかの困難を抱えていたり、人間関係が希薄で助けを十分に求められなかったりする状況は、誰にでも起こり得ます。社会に利用できるサービスや頼れる人・組織が存在しない、だから社会問題化している、とも言えます。
そんな社会問題の解決をめざす市民活動のプロデューサーには、「ゼロから有を生む企画力に長けている」や「現状を突破するアイデアや行動力を備えている」ことが求められます。
たとえば、災害時。非常時は「公助」を担う行政も被災する可能性があることが、東日本大震災でも明らかになりました。そのため、自らを助ける「自助」だけでなく、近隣や関係者で助け合う「共助」の役割にも注目が集まっています。メディア等でも広く紹介されるようになった災害支援ボランティアは、この「共助」にあたるとされています。
しかし、「共助」は自然発生的に生まれるわけではなく、平時から「顔の見える関係」があってこそ力を発揮します。そのためには、業界や立場などを越えて、様々な人がともに汗をかき、互いの特長を生かしながら、協力し合える機会がもっと増えることが必要です。大阪にそのような場をつくる――。まさに、「ゼロから有を生み出す」チャレンジです。
【写真:おおさか災害ネットワークの会議の様子】
「私たちは東日本大震災を経験して、一つの組織やコミュニティだけでは、できることが限られると痛感しました。災害対策は、すべての人や組織に関係する共通の関心事。より多くのさまざまな立場の団体とつながり、それぞれの特長を生かしながら協力し合える関係づくりのために、社会福祉協議会、生活協同組合、防災士会など関係団体とともに『おおさか災害支援ネットワーク』を立ち上げました」と、担当の永井美佳(事務局次長)は語ります。
「誰かの強いリーダーシップではなく、参加団体がそれぞれ得意なところを引き受けながら、ネットワークとして育っていきます。合意形成は簡単ではありませんが、それぞれが大切にしていることが分かるようになり、各プロフェッショナル性に対して、尊敬しあいながら付き合えるようになると、深い協働が生まれます」
「思いを共にしてくださる人や団体を増やしていけるようなかかわりが、担当者には求められていると感じます。
【写真:椋木美緒(ボランティアコーディネーター)と永井美佳(事務局長)】
ボランティア活動に関心がある人に、はじめの一歩を踏み出だすための取り組みです。大阪ボランティア協会では、さまざまな社会課題の解決に挑むNPOと協力して、たとえば、週末の3時間程度、気軽にボランティア活動を体験して活動の魅力を感じてもらう「ボランティアスタイル」という事業をすすめています。
事業パートナー団体のひとつ、「認定NPO法人ビッグイシュー基金」では、ホームレス状態にある人が、自立へのステップを歩めるよう総合的なサポートしてい ます。人とのつながりや生きがいを取り戻すため、当事者によるスポーツ・文化 活動を応援しており、フットサル(サッカーに似たスポーツ)の練習などを実施 しています。このフットサルを一緒に楽しむボランティアを大阪ボランティア協 会で募集し、はじめてボランティア活動をする人をサポートしているのです。
しかし、当初人気のあったフットサル活動も、徐々にホームレス当事者の参加が 減っていきました。原因は、「フットサルというスポーツは、若い人がやるも の」というイメージが、比較的年代の高いホームレス当事者のみなさんとのギャップを生んでいると考えられます。はじめてのボランティアの参加をサポー トしている大阪ボランティア協会のボランティアリーダーは、ビッグイシュー基 金のスタッフと一緒になって、どうすれば魅力的な活動にできるか知恵を出し合いました。
【写真:「フットサルでボランティア」の様子】
そこで、それまでホームレス当事者の人にお風呂券を渡していたのですが、「みんなでおにぎりを作って、提供してはどうだろう?」というアイデアが生まれました。また、ビッグイシュー基金の職員も、これまで以上に参加者に対してきめ 細やかなかかわりを実践されるようになり、私たちとの打合せにも何度も足を運んでくれました。噂は口コミで広がり、ホームレス当事者の参加が徐々に増えるようになりました。
「いろんな人が協力して、みんなでなんとかしようとする。そこに市民参加の可能性を感じる」と前任者の椋木美緒は言います。現担当の高宮城亜矢香は「ボラ ンティアが最大限の力を発揮して活躍してもらえるような環境づくりをするのが大阪ボランティア協会の職員の役割。ボランティアスタッフと信頼関係を築きながら事業のパートナーとして協力し合うのは、NPOの職員ならではの働き方だと思います」と話します。
【写真:高宮城亜矢香(ボランティアコーディネーター)】
「NPO法人ニッポンバラタナゴ高安研究会」――「え? ガラパゴス?」と、思わず聞き返してしまいそうになるほど、動植物に詳しくない人にとってはユニークに感じる団体名かもしれません。バラタナゴとはコイ科に分類される淡水魚で、希少生物種として絶滅危惧TA類相当に選定されています。とある環境団体からご紹介いただき、希少生物種と自然環境を守る「SAVE JAPANプロジェクト」を一緒に取り組むことになりました。
はじめは、生態系の調査をする活動内容だったのですが、初めて参加する人にとっては少しハードルが高そうです。担当の梅田純平(運営支援担当)は、研究会のメンバーと、初心者にも分かりやすい企画を一緒に考えました。
【写真:梅田純平(事務局主任)】
バラタナゴはドブ貝に卵を産むという習性があることが分かり、「それなら胴長をはいて、池に入ってみよう!」ということになりました。「高安」という大阪八尾市の近隣のみなさんにとっては身近なため池に、とても貴重な希少生物が存在しているということ自体、驚きと感動があります。
【写真:バラタナゴの卵をめざしてドブ貝を探す】
梅田は、「高い専門性を有するNPOと組みながら、一緒に協働して企画を作っていく面白さは、互いに学びもあり新しい発見がたくさんあります」と話します。
今回の場合、私たち人間の暮らし方がバラタナゴという魚の成育環境に大きな影響を与えているということを、専門のスタッフが楽しく分かりやすく伝える内容になりました。「少しでも関心を持って活動に関わってくれる人を増やして、将来、団体のコアスタッフとして活躍してもらえるようなかかわりができれば」と、ボランティアだけでなく団体運営の今後も見据えながら企画づくりにかかわります。
* * *
社会課題は、時として深刻です。命にかかわるようなシビアな局面もあり得ます。そんな厳しい現状だからこそ、笑顔で課題に向き合える明るさとタフさを大切にしています。ぜひ、私たちと一緒に、社会問題の解決にチャレンジしませんか?
(文・事務局主幹 岡村こず恵)
2015年11月
【写真:ボランティアスタッフとともに】